研究課題/領域番号 |
21K05459
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38050:食品科学関連
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
服部 一夫 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (10385495)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 腸管幹細胞 / 分岐鎖アミノ酸 / バリン / ロイシン / イソロイシン / 小胞体ストレス / Wnt/β-カテニンシグナル / アポトーシス / 腸管 / オルガノイド / 幹細胞 / アミノ酸欠乏 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、これまで困難であったin vitroでの腸管幹細胞実験を可能とした腸管オルガノイド培養系を用いて、分岐鎖アミノ酸 (BCAA) であるバリン (Val)、ロイシン (Leu)、イソロイシン (Ile) に着目し、各BCAAが幹細胞に及ぼす影響とそのメカニズムを明らかにすることが目的である。本研究を通じて、腸管幹細胞に対する機能という今までにない新たなBCAAの機能性を明らかにし、食品成分による腸管幹細胞の機能制御という新たな展開や、動物に替わるin vitro機能性評価系としての発展につなげたい。
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研究実績の概要 |
昨年度は、腸管オルガノイドを用いて、分岐鎖アミノ酸(バリン (Val)、ロイシン (Leu)、イソロイシン (Ile); BCAA)の欠乏が腸管上皮細胞に及ぼす影響を調べた。その結果、24 時間のVal欠乏がアポトーシスを介して幹細胞数を有意に減少させたのに対し、LeuおよびIle欠乏では幹細胞に影響は認められなかった。また、Ile欠乏においては、内分泌細胞数の有意な増加が認められた。そこで本年度は、BCAA欠乏により生じたこれらの変化のメカニズムをRNA-sequencing analysisにより解析した。各BCAA群における発現変動遺伝子 (DEGs) を反映させたヒートマップは、Val欠乏群のみ特徴的な変動パターンを示した。また、各BCAAに特異的にアップレギュレートされたDEGs数は、Val欠乏群569, Leu欠乏群101, Ile欠乏群51であり、ダウンレギュレートされたDEGs数は、Val欠乏群165, Leu欠乏群33, Ile欠乏群12であった。このことから、Val欠乏群が最も遺伝子発現の変動が顕著であったことを示した。さらに、各BCAA群におけるDEGsのエンリッチメント解析を行った結果、共通してアップレギュレートされたのは、酸化ストレス、小胞体ストレス応答、アポトーシスプロセスであり、ダウンレギュレートされたのは細胞周期、アポトーシスプロセスであった。また、各BCAA間で比較すると、Val欠乏特異的に小胞体ストレス応答に関連するATFとCHOPが有意に増加し、Wnt/β-カテニンシグナル応答に関連する因子が有意に減少していた。また、Val欠乏群において、アポトーシスに関連した因子の変動が多かった。以上より、Val欠乏による幹細胞への影響は、小胞体ストレスに起因するWnt/β-カテニンシグナルの不活性化とアポトーシスの誘導により生じていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、各BCAA欠乏培地で培養した腸管オルガノイドで認められた変化 (主にバリン欠乏による幹細胞へのダメージ) のメカニズムを探ることを目的とした。RNA-sequencing analysisの結果より、Val欠乏による幹細胞への影響は、小胞体ストレスに起因するWnt/β-カテニンシグナルの不活性化とアポトーシスの誘導により生じていることが示唆された。しかし、キーとなる因子の発現変動レベルやリン酸化レベルなどの測定は部分的であり、明確なメカニズムが十分に示せていないことから、「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
R4年度の結果において、メカニズムの解析が十分ではなかったことから、R5年度においても引き続き進めるとともに、R5年度に予定している研究計画を実行する。具体的には、各BCAAを欠乏した餌を与えたマウスの腸管において、幹細胞や分化細胞の変化を調べる。その結果とR3, 4年度で見出した腸管オルガノイドでの結果と比較検討し、in vitro系とin vivo系での変化が同様であることを示し、腸管オルガノイドが実験動物に替わる評価系となるか否かを検討する予定である。
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