研究課題/領域番号 |
21K05461
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38050:食品科学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
伊藤・山谷 紘子 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (80648684)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 硫黄代謝 / 伝統野菜 / アブラナ科植物 / 機能性成分 / 酵素 |
研究開始時の研究の概要 |
ヒトの健康増進に寄与する機能性成分の多くが「硫黄」を含む有機化合物である。このことから、我々は植物の硫黄吸収量を高め、機能性硫黄化合物の含有量を増大させることができれば、摂食目的にかなう機能性野菜を育成できると考えた。本研究では、独自の硫黄吸収機構や硫黄代謝系を持ち、機能性成分を含有すると考えられるアブラナ科伝統野菜を対象とし、硫黄吸収と体内硫黄代謝系がどのように制御されているかの解明を目指す。すなわち、硫黄の吸収能力の高い伝統野菜を選抜し、有機硫黄代謝に関与する鍵酵素の活性と、酵素遺伝子の発現の変化を調べることで、植物の硫黄吸収と代謝制御に関する基礎的な知見を得ることを目的とする。
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研究実績の概要 |
近年、健康寿命の延伸、生活習慣病の防止の観点から、食に対して「栄養」「美味しさ」だけでなく「健康への機能性」についても重要視されつつある。摂食目的にかなう機能性含硫化合物の高含有野菜の育成のためには、植物における硫黄吸収と体内代謝系がどのように制御されているかを解明する必要がある。本研究では、有機硫黄代謝に関与する鍵酵素の活性と、同一個体内において硫黄代謝に関与する酵素遺伝子の同時発現様態の検討から、植物の硫黄代謝制御に関する基礎的な知見を得ることを目的とする。 供試材料としては、独自の硫黄吸収機構や硫黄代謝系を持っていると考えられるアブラナ科伝統野菜を選んだ。これは、アブラナ科には、スルフォラファンなどの機能性を持つ有機態硫黄化合物の含有率が高い植物が多く、さらにその中でも伝統野菜は、独特の優良形質が伝統という長い栽培履歴の中で選抜されている経緯から、機能性物質が多量に含まれている品種である確率が高いと考えたからである。 R4年度は、これまで調べた日本全国に存在する40品種のアブラナ科伝統野菜の、根域硫黄濃度への応答を再解析した。その中で、根域イオウ濃度への応答が異なる16品種に注目し、植物の栽培とサンプリングを行った。さらに硫黄のリン酸化を担い、二次代謝への分岐を司るAPS kinase(APK)の活性測定方法を確立した。また、R3年度に引き続き、硫黄代謝において硫黄還元-アミノ酸合成経路(一次代謝)の出発点を担うAPS reductase(APR)と、土壌から吸収した無機硫黄を、有機態硫黄化合物合成へ導く鍵酵素のATP sulfurylase(ATPS)の活性に焦点をあて、硫黄高含有植物品種間の硫黄代謝制御機構を比較検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R3年度に引き続き①イオウ吸収能が高い品種と、②イオウ吸収能が低い品種に属する16品種を選び、植物の栽培とサンプリングを行った。R4年度は主に一次代謝を司るAPRの活性解析を進めた。その結果、イオウ吸収能が高い品種と低い品種間を比較すると、品種間におけるAPR活性は、地上部と根部のいずれにおいても特異的な差異はほとんど見られなかった。また、植物体中のイオウ濃度(含有量)の上昇割合の差に対してもAPR活性には一定の傾向が見られなかった。これらの実験結果から、供試アブラナ科野菜では、経根的なイオウ供給量があるかぎり、その多寡に関係なくAPR活性は維持されているものと考えた。また、二次代謝の鍵酵素であるAPKの測定方法について幾つかの方法を検討し、簡便に判定できる方法を確立した。現在、ATPS、APRを測定した同個体でのAPK活性について順次測定を行い、供給硫黄濃度と有機態硫黄化合物の合成量の関係性、またこれらがATPS、APK、APR活性に与える影響を解析している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画は、現在までにサンプリングしたイオウ吸収能が異なるグループに属する16品種の伝統野菜について、無機態硫黄および有機態硫黄量、さらにシステインやグルタチオンなどのチオール化合物の合成量を測定する。さらにグルコシノレート類を定性/定量分析し、硫黄高含有植物の硫黄代謝制御機構を比較検討する。加えて、有機態硫黄を多量に蓄積していることが明らかになった伝統野菜について、イオウ過剰条件で栽培した際に、ATPS、APRおよびAPKの活性がどのように変化するのかを比較する。また、供給硫黄量の増加に比例してAPKの活性が顕著に増大し、二次代謝が進んでいることが予測される品種においては、メタボローム解析により硫黄代謝物の相対定量解析も行う予定である。これらの解析をもとに、論文の年内投稿を目指す。
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