研究課題/領域番号 |
21K05465
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38050:食品科学関連
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研究機関 | 京都府立大学 (2023) 千里金蘭大学 (2021-2022) |
研究代表者 |
長井 薫 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (20340953)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 認知症予防 / レシチン / 酪酸 / ケトン体 / ミトコンドリア / 機能性食品 / 酸化ストレス / 脂質 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、リン脂質類や短鎖脂肪酸、ケトン体などの食品成分及び代謝成分を用いて、ミトコンドリア増強機能とストレスからの神経細胞保護作用を明らかにすることで、これら成分の認知症予防作用の構造機能相関について明らかにしようとするものである。 本研究では、ミトコンドリア増強機能と細胞保護作用の脂質に構造機能相関に加え、それぞれの分子機構解析を阻害剤などにより試みる。さらに、ミトコンドリア増強機能と細胞保護作用の相関を明らかにすることを試み、これら脂質成分の認知症予防機能の分子機構について明らかにすることを試みる。
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研究実績の概要 |
今年度は、食品由来リン脂質としてNOストレスに対し保護効果の見られたジリノレオイルホスファチジルコリン(DLPC)の構造機能相関、ならびに保護作用の分子機構の検討を行った。また、代謝産物由来脂質類については、酪酸に加え、酪酸と同様の基本炭素骨格を有するケトン体2種、β-ヒドロキシ酪酸とアセト酢酸について、NOストレスからの保護効果とその作用の分子機構の解析に関する解析を行った。 DLPCについては、リン酸エステル部分をエタノールアミンにしたDLPEや脂肪酸部分が異なるいくつかのリン脂質について保護効果を確認した。その結果、エタノールアミン型には効果はなく、脂肪酸部分についてはパルミトイルリノレオイルホスファチジルコリン(PLPC)とパルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)に保護効果が見られた。分子機構については、保護効果がPKC阻害剤で抑制されたことからPKCの活性化を介していることがわかった。短鎖脂肪酸である酪酸については、細胞保護効果について、Hdacサブタイプに特異性があるのか否かについて検討を行ったところ、クラス1に含まれるHdac1, 2,3 特異的阻害剤であるMS275が同様の保護効果を示すことがわかったが、Hdac1, 2, 3それぞれの阻害剤やその組み合わせにより同様の保護効果は観察されなかった。ヒストンのアセチル化以外の経路を介している可能性が示唆されたため、他の経路について検討を行ったところ、STAT3の活性化を介していることを示唆する結果が得られた。ケトン体については、NOによる酸化ストレスからの保護効果があることを見出しているが、酪酸とは異なり、作用機構としてcAMPの関与を示唆する結果が得られた。今後はその作用機構のより詳細について検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
DLPCについては、酸化ストレスからの細胞保護効果については、PKCの活性化を介していることを示唆する結果が得られているが、構造機能相関の解析から保護作用とミトコンドリア増強作用は活性を示すリン脂質の種類が異なり、別機構を介していると現時点では考えられる結果となっている。しかし、神経変性に重要な機構の解明に一歩近づいたという点で、進捗があったといえる。 酪酸は、クラスⅠ、Ⅱaに対し幅広く阻害効果を示すことから、このうちどのHdacの阻害が神経細胞保護に作用するのかということについて検討を行ったところ、Hdac1, 2, 3の特異的阻害剤であるMS275に神経保護効果が認められたが、Hdac1, 2, 3それぞれの特異的阻害剤では保護効果は見られなかった。しかし、STAT3の活性化阻害により保護効果はほぼ完全に抑制されたことから、STAT3シグナルを介していることを見出した。このことから、ヒストンのアセチル化以外の新たな分子機構の発見という意味で進捗があったといえる。 酪酸と同様の基本骨格を有するケトン体2種、3-ヒドロキシ酪酸とアセト酢酸については、どちらも酪酸と同様の酸化ストレスからの保護効果があることを見出してはいるが、Hdac阻害ではなくcAMPの関与するシグナルを介していることを示唆する結果が得られ始めている。これは、ケトン体による新しい機能と分子機構の発見につながるものと考えられる。 全体としては、ミトコンドリア増強作用の細胞保護機構への関与と、分子機構のより詳細な解明について、計画当初の予想機構ではなく新機構であったこともあり、多少進行が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
DLPCについては、神経細胞保護効果と、ミトコンドリア増強作用について、さらにそれぞれの構造機能相関と分子機構の解明を深めてゆく方針である。細胞保護効果については、PKCのサブタイプ特異性と下流シグナルに注目し、より詳細な分子機構の解析を行う。ミトコンドリア増強作用については、構造機能相関およびPGC1αの発現と活性化に注目し、さらなる分子機構の解析を行う。 酪酸については、MS275による保護効果から見出したSTAT3シグナルの関与について、その下流シグナルも含めてより詳細に検討を行う。 ケトン体については、その酸化ストレスからの神経系細胞保護効果におけるcAMPシグナルの関与とより詳細な分子機構の可能性について検討を行う。
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