研究課題/領域番号 |
21K05480
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38050:食品科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
田村 基 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, 主任研究員 (70353943)
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研究分担者 |
中川 博之 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 高度分析研究センター, 上級研究員 (30308192)
平山 和宏 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (60208858)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | ケルセチン / 腸内細菌 / ノトバイオートマウス / 腸内環境 / ケルセチン代謝菌 / 短鎖脂肪酸 |
研究開始時の研究の概要 |
酢酸産生菌や酢酸産生を促進する食品のケルセチン吸収促進作用を解析するために、無菌マウスに腸内細菌を投与して、ケルセチン分解性マウスやケルセチン分解性・酢酸産生性マウス等を作製する。これらのマウスにケルセチンを添加した滅菌飼料やケルセチンとフラクトオリゴ糖を添加した滅菌飼料を一定期間与え、腸内環境の違いがケルセチンの代謝・吸収に及ぼす影響を解析する。また、ケルセチンのグルクロン酸抱合体を脱抱合する腸内細菌のケルセチン吸収促進効果についても解析する。本研究の成果は、ケルセチンの生体利用性を向上するための腸内環境についての基盤的知見の一つとして活用できる。
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研究実績の概要 |
無菌マウス(メス)12匹を6匹ずつ二群に分けて、対照群(Eul群)にはケルセチン代謝菌19-20とEubacterium limosumを投与、大腸菌添加群(Qbr群)には、大腸菌Escherichia coli JCM20135とケルセチン代謝菌19-20、Bifidobacterium breveを経口投与して、ケルセチン代謝菌保有マウスを作製した。上記菌を投与してから滅菌CMF食を2週間給餌した後、二群には0.05%ケルセチンを含む滅菌飼料を3週間給餌した。飼育試験後解剖を行った。血漿のケルセチン濃度は、LC-MS/MSを用いて分析した。また、血漿脂質、血糖値、肝臓脂質等の分析、肝臓、小腸、大腸の遺伝子発現解析も行った。肝臓のトリグリセリド含有量はQbr群で低い傾向が認められた。また、血漿のコレステロール含有量はQbr群で有意に低値を示した。Eul群とQbr群とでは血漿のケルセチン濃度の平均値は、Qbr群の方が高かったものの、血漿のイソラムネチン濃度の平均値はQbr群の方が低かった。Qbr群には大腸菌が含まれていて、大腸菌のグルクロニダーゼは胆汁に排泄されたケルセチングルクロン酸抱合体を脱抱合してケルセチンの消化管下部での再吸収を促進する可能性が考えられたが、大腸菌のグルクロニダーぜ活性がケルセチンの吸収を有意に高めるほどではないことが推察された。Qbr群の大腸菌菌数は、Qbr群のケルセチン代謝菌19-20よりは多かったが、血漿のケルセチン濃度は二群で有意差はなかった。今回のノトバイオートマウス体内では大腸菌のグルクロニダーゼ活性が高い活性を持たなかった可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
グルクロニダーゼ活性を有する大腸菌を無菌マウスに定着させて作製したノトバイオートマウスを活用して、グルクロニダーゼ活性を有する腸内細菌の存在の有無がケルセチンの代謝吸収に及ぼす影響を検討した結果、血漿のケルセチン濃度の平均値は、大腸菌を定着させたQbr群の方が高かったものの、血漿のイソラムネチン濃度の平均値はQbr群の方が低かった。消化管内で腸内細菌のグルクロニダーゼがケルセチン-グルクロン酸抱合体を脱抱合して、ケルセチンの吸収を高めるには、強力なグルクロニダーぜ活性を有する腸内細菌を高い占有率で腸内に定着させる必要があるのかもしれない。本年度の研究予定では、Eul群のノトバイオートマウスとQbr群のノトバイオートマウスの種々の消化管遺伝子の遺伝子発現発現解析を行う予定であったが、本年度は、これらの解析の一部を行うことができなかった。次年度では、解析できていない消化管の遺伝子発現発現解析を引き続き行う。
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今後の研究の推進方策 |
ルチンはケルセチンの配糖体であり、そばなどの食品に多く含まれている。このケルセチン配糖体の吸収には腸内細菌の働きが必要であることが示唆されている。ケルセチン配糖体の一つルチンと種々の腸内細菌とをin vitroで嫌気培養を行ったところ、Enterococcusに属する腸内細菌Enterococcu sp.18は、ルチンから糖鎖を切り離してケルセチンを産生することを見出した。Enterococcu sp.18はルチンを消化管内で加水分解し、ケルセチンを産生することでケルセチンの吸収を高める可能性が考えられる。しかし、ケルセチン代謝菌19-20がEnterococcu sp.18と共存する場合は、Enterococcu sp.18の作用によってルチンから産生されたケルセチンがケルセチン代謝菌19-20のケルセチン分解作用によって分解されてケルセチンの生体利用性が低下すると考えられる。そこで次年度は、ルチン代謝菌Enterococcu sp.18のケルセチン生体利用性向上効果に及ぼすケルセチン代謝菌19-20の影響を検討する。ケルセチン代謝菌がルチンの生体利用を抑制するかどうかを確認するために、ルチンからケルセチンを産生するEnterococcu sp.18だけを保持するノトバイオートマウスとルチンからケルセチンを産生するEnterococcu sp.18とケルセチン代謝菌19-20の両方を有するノトバイオートマウスとを作製する。これら2種類のマウスにケルセチン配糖体ルチンを含有した食餌を投与して、ニ群の血漿ケルセチン濃度等を比較検討することでケルセチン代謝菌の存在がケルセチン配糖体の代謝・吸収に及ぼす影響について検討する予定である。
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