研究課題/領域番号 |
21K05501
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38060:応用分子細胞生物学関連
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研究機関 | 東京理科大学 (2022) 新潟大学 (2021) |
研究代表者 |
花俣 繁 東京理科大学, 理工学部応用生物科学科, 研究員 (00712639)
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研究分担者 |
朽津 和幸 東京理科大学, 理工学部応用生物科学科, 教授 (50211884)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 発芽 / オートファジー / アミラーゼ / タンパク質分解 / プロテアーゼ / プログラム細胞死 / イネ / α-アミラーゼ / 胚乳 / 高温障害 / バイオイメージング / 玄米白濁化 |
研究開始時の研究の概要 |
イネの種子登熟過程において、胚乳細胞内にデンプンが合成・蓄積し、正常な種子が形成される。この過程が高温に曝されると、澱粉分解酵素であるα-アミラーゼの発現が誘導され、玄米外観品質が低下し、農業上も重要な問題となる。オートファジーを欠損したイネ変異株がα-アミラーゼ蓄積を伴う白濁米を形成したことから、種子登熟過程のα-アミラーゼ発現制御にオートファジーが関与するとの仮説を着想した。高温登熟種子とオートファジー欠損変異株種子におけるα-アミラーゼの発現・局在部位のイメージング解析、澱粉代謝関連酵素の転写ネットワーク解析により、オートファジーを介したイネのα-アミラーゼの新奇発現制御機構を解明する。
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研究実績の概要 |
イネ種子登熟期の高温はα-アミラーゼの発現を誘導し,玄米品質を低下させ,その制御機構の解明は,高温障害の緩和および耐性品種の開発に直結する。本研究は,オートファジー機能欠損変異体の玄米白濁化に着目し,α-アミラーゼの発現制御機構の解明を目指す。本年度は、以下の3点を中心に解析を進めた。 (1)登熟期の高温による玄米白濁化とα-アミラーゼの発現に対するオートファジー機能欠損の影響を調査し,オートファジー機能欠損による玄米白濁化には開花後の温度が強く影響することを明らかにした。オートファジー機能欠損変異株Osatg7ではα-アミラーゼの発現誘導が,より低温にシフトし,オートファジーが直接的または間接的に玄米白濁化の抑制に寄与することが確認された。 (2)イネ種子の登熟過程で活性化されるプロテアーゼは胚乳細胞のプログラム細胞死PCD実行に関与する。胚乳PCDに対するオートファジーの欠損および高温登熟が与える影響を調べるツールとして,蛍光タンパク質ベースのプロテアーゼセンサープローブを構築し,タバコ葉に一過的に発現させ,エリシター誘導性PCD過程におけるプロテアーゼ活性変化を検証した。 (3)高温登熟及びオートファジー機能欠損がイネ種子発芽とα-アミラーゼの発現に与える影響を解析した。登熟期の高温は種子の発芽勢に影響し,発芽の斉一性を低下させる。登熟期の高温による種子発芽の斉一性の低下とオートファジーとの関連調査のため,圃場で得られた野生型株とOsatg7変異体の種子発芽におけるα-アミラーゼ発現・活性およびタンパク質量について解析した。その結果,Osatg7では種子発芽が遅延し,発芽に伴うα-アミラーゼ活性の上昇が抑制されることを見出した。ヘテロ親由来の種子では発芽遅延は見られず,親の遺伝子型が種子発芽に影響する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
イメージング解析を用いたイネ登熟種子におけるα-アミラーゼの発現部位の解明に関しては,発芽イネ種子においてAmy1A, Amy1C分子種のプロモーター活性が検出され,α-アミラーゼの発現をモニタリングする実験系が構築出来た。一方で,これらの系を用いた高温登熟条件下での胚乳におけるプロモーター活性の検出は,まだ達成されていない。原因として,人工光の閉鎖温室においてOsatg7が完全不稔を示したことから,これらのベクターを導入した遺伝子組換え体から種子サンプルが得られず,解析が困難を極めていることにある。 細胞内局在部位の解明に関しても,GFP融合遺伝子ベクター構築及び形質転換を進めているものの,上記の理由から形質転換体を用いた解析は遅れている。自然光のバイオトロンではOsatg7が稔実することから,自然光の遺伝子組換え温室の利用と,遺伝子組換えを用いずにスターチフィルム法や免疫蛍光染色を用いた検出方法も視野に入れて解析を進めている。 高温登熟による胚乳タンパク質の分解については,試料調整の困難性から,ペプチドミクスによる網羅的な解析から胚乳登熟期において活性化されるプロテアーゼの認識配列を用いた遺伝子コード型のプローブセンサーにより検出する方法に切り替えた。本年度はGFPおよびRFPを利用したプロテアーゼセンサーを構築し,タバコ葉に導入することで,エリシター誘導性プログラム細胞死に伴うプロテアーゼの活性化の検出を試み,細胞死の誘導に伴う蛍光強度変化を検出した。次年度は構築したプロテアーゼセンサーを基質として用い,胚乳抽出物を酵素液として用いることで,オートファジーを介した胚乳タンパク質分解の検証をする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,(1)未解析のトランスクリプトーム解析を進めるとともに,公開データベースの情報とオートファジー欠損変異体の登熟種子で共発現した転写因子群に着目し,α-アミラーゼプロモーターへの結合の有無をレポーターアッセイなどにより検出する。グロースチャンバーの日長を自然光に合わせることで,(2)Osatg7登熟種子のα-アミラーゼの発現・局在部位について構築したα-アミラーゼプロモーターGFP融合遺伝子の形質転換体について解析を進めるとともに,形質転換体を用いることなく,従来のスターチフィルム法およびα-アミラーゼ抗体を用いた免疫蛍光染色による解析を進め,野生型株の高温登熟種子におけるα-アミラーゼ発現部位とOsatg7登熟種子のアミラーゼの発現部位をイメージング解析により精査する。(3)胚乳タンパク質分解の検出については,本年度に構築したプロテアーゼセンサーの基本構造に各種プロテアーゼの認識配列を導入したものを基質として利用し,胚乳抽出物を酵素液として用いることで,登熟過程のタンパク質代謝に対するオートファジーを介した胚乳タンパク質分解と,それに対する高温の影響を検証し,これまでの研究を総括する。
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