研究課題/領域番号 |
21K05502
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38060:応用分子細胞生物学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
細見 昭 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (60525864)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | シグナルペプチド / 小胞体 / 分泌 / N型糖鎖 / SOD1 / Tau |
研究開始時の研究の概要 |
真核生物において、輸送機構が未解明な分泌タンパク質が存在する。これらのタンパク質は、小胞体内への輸送を規定する配列(小胞体シグナルペプチド)を持たない(リーダーレス)にもかかわらず、小胞体内へ輸送され、ゴルジ体を経て分泌されることが分かっている。ヒトにおいてもリーダーレスタンパク質が存在する。しかしながら、リーダーレスタンパク質がどのように細胞質から小胞体内へ輸送されるのか詳細は明らかになっていない。本研究では、出芽酵母のリーダーレス輸送促進株を利用して、リーダーレスタンパク質の小胞体輸送機構の詳細を解明する。本研究により、真核生物の新たなタンパク質輸送機構が明らかにできると考えている。
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研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、真核モデル生物である出芽酵母におけるシグナルペプチドに依存しない小胞体内へのタンパク質輸送機構の解明である。これまでの知見から、シグナルペプチド非依存的輸送において、輸送されるタンパク質中に存在するシステイン残基が一定の役割を果たしていることが明らかになった。具体的には、シグナルペプチド削除型CPY*(CPY*dN28)のシステインを11個全てセリンに置換したところ変異体の輸送能が下がることが明らかになった。特定のシステインが輸送に寄与するか否かを明らかにすべく、この変異体のセリンを一つずつシステインに戻した11個の変異体を作製し解析を行ったところ、特定のシステインが輸送に寄与しているわけではないことが明らかになった。また、出芽酵母にヒトSOD1を発現させて解析を行った。前年度の実験の結果、STE24遺伝子とHRD1遺伝子の二重破壊株でヒトSOD1が小胞体内に輸送されるという結果が得られていた。そこで、小胞体内へ輸送されたヒトSOD1が最終的に細胞外へ分泌されるのか解析したところ、分泌されることが明らかになった。加えて、分泌されたヒトSOD1が変性したSOD1を認識する抗体で検出することができた。これらの結果から、本来細胞質に存在するヒトSOD1の一部が分泌される過程で変性する可能性が示唆された。さらに、アルツハイマー関連タンパク質であるTauの輸送解析も行った。実験の結果、STE24遺伝子 HRD1遺伝子二重破壊株特異的に断片化したTauが検出された。本二重破壊株に特異的であるため断片化Tauが小胞体内へ輸送されている可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
出芽酵母を用いた解析において、小胞体内へ輸送されたヒトSOD1が分泌に至ることを明らかにすることができた。また、分泌されたヒトSOD1が変性していることを示唆する結果も得られた。筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者ではSOD1遺伝子に変異がないにもかかわらず脳脊髄液中に変性したSOD1が検出されること及び、この変性したSOD1が神経毒性を持つことが報告されている。したがって、SOD1の分泌抑制がALSの病態改善や予防につながると期待される。これまでの研究結果は、どのようにSOD1が分泌されるのか、分泌を止めるためにどうすればよいかを解明することにつながると期待され、一定の進捗があったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
出芽酵母において、ヒトSOD1が小胞体内へ輸送され分泌に至ることが明らかになった。他方、ALS患者でSOD1が分泌されることが知られていることから、SOD1の分泌抑制がALSの病態改善や予防につながると期待される。そこで、SOD1の分泌を抑制できる化合物の探索を行う。具体的な解析対象は、細胞質から小胞体へのタンパク質輸送を担うトランスポーターであるトランスロコンの阻害剤とSOD1の酸化を防ぐ抗酸化物質である。シグナルペプチドに依存しない輸送はシグナルペプチドに依る輸送に比べて脆弱である。したがって、低濃度のトランスロコン阻害剤でシグナルペプチドに依存しない輸送のみを抑制することが期待できる。これまでの解析で変異型SOD1は野生型SOD1と比べて小胞体内へ輸送されやすいことがわかった。この結果は、SOD1の立体構造の不安定化と小胞体内への輸送が関連することを示している。また、SOD1自身が酸化され立体構造が崩れるという知見がある。これらを合わせて考えると、抗酸化物質によってSOD1の酸化を防ぐことがSOD1の小胞体内への輸送を抑制し、小胞体を介した分泌の抑制につながると期待される。SOD1の解析に加えてTauの解析を行う。Tauの小胞体内腔への輸送を示す確たる証拠がまだ得られていないので、必要な実験を行いTauの輸送経路を明らかにしたいと考えている。
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