研究課題/領域番号 |
21K05507
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38060:応用分子細胞生物学関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
関藤 孝之 愛媛大学, 農学研究科, 教授 (20419857)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 液胞 / トランスポーター / オートファジー / TORC1 / Saccharomyces cerevisiae |
研究開始時の研究の概要 |
液胞膜を介したアミノ酸輸送機構の改変により液胞内にアミノ酸を高度に蓄積させることは、作物の栄養強化や発酵製品への付加価値賦与などにつながる。酵母液胞膜に局在するAvt4は真核生物全般に保存され、中性・塩基性アミノ酸を液胞外へと排出するトランスポーターである。その一方で、Avt4は液胞内アミノ酸を感知しTORC1を活性化することが示唆されており、栄養シグナリングの起点としての液胞内アミノ酸の役割が注目されている。本研究ではAvt4をモデル系としたその調節機構解明および網羅的遺伝子発現解析によって、液胞/リソソームアミノ酸輸送システムの調節と生理を統括的に理解する。
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研究実績の概要 |
液胞アミノ酸トランスポーターであるAvt4の N末端親水性領域200アミノ酸残基を欠損すると単離液胞膜小胞からのアラニン排出活性が失われるのに対し、280アミノ酸残基を欠損すると全長型よりむしろ亢進する。近位依存性ビオチン化により、このN末端親水性領域と相互作用するタンパク質同定を試みた結果、複数のTORC1関連タンパク質がAvt4の相互作用タンパク質候補として同定された。さらにこれら相互作用候補因子を欠損するとAvt4の脱リン酸化が認められたことから、TORC1によるAvt4の活性調節を示唆する結果として学会にて報告した。また栄養条件変化に伴い、ビオチン化される相互作用因子候補プロファイルの変化についても検討し、TORC1関連タンパク質との相互作用が栄養条件に応じて変化するとの結果も得た。 液胞内へのアミノ酸取り込みは余剰なアミノ酸が存在する栄養豊富条件で行われると考えられる。しかし、アミノ酸を液胞内に取り込むAvt1の発現がAvt4同様、飢餓条件でGATA因子依存的に誘導されることを見い出した。さらに定常期での発現にもGATA転写因子が関与し、AVT1破壊株の非発酵性炭素源培地での生育が低下することも示されたことから、Avt1が老化に伴うミトコンドリア機能維持に関与することを学会にて報告した。最近AVT1破壊により、栄養豊富条件においても鉄飢餓応答がわずかに活性化することを見出しており、これとミトコンドリア機能や寿命との関係性について解析を進めている。 また、液胞内への塩基性アミノ酸取り込みに関与するVsb1の分裂酵母ホモログの解析より、液胞内への塩基性アミノ酸蓄積が真核微生物全般で生じており、重要な生理的意義をもつ可能性について学会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近位依存性ビオチン化タグの使用により同定したAvt4相互作用タンパク質候補とAvt4の相互作用検出を試みている。共免疫沈降実験では検出できていないが、コドン使用頻度を酵母での発現に最適化したyeVenusを用いたBiFCアッセイにおいてAvt4とTORC1因子の共発現によって液胞膜で検出される蛍光が劇的に増強された。相互作用を反映しない非特異的な蛍光ではないことを今後確認する予定である。また、リポソームへの再構成に向けたコムギ無細胞タンパク質合成に着手している。再構成したAvt4とTORC1関連因子の組換えタンパク質の相互作用を検出する予定である。 窒素飢餓条件でオートファジー欠損株の生存率が急速に低下するメカニズムを明らかにする目的でGFP-Atg8以外のオートファジー評価系を用いて、液胞アミノ酸リサイクルのオートファジー活性持続への関与を示すデータが得られている。また、アミノ酸リサイクルとミトコンドリア機能の関係についても興味深い結果が得られた。オートファジーによるアミノ酸リサイクルがオートファジーの持続、およびROS消去のために働き、生存率維持に寄与することが示唆されている。 液胞アミノ酸トランスポーター欠損とアミノ酸合成酵素欠損により、窒素飢餓条件での生存率および胞子形成効率の低下を検出した。しかしオートファジー欠損株と比べてこれらの低下が部分的であったことから、他の液胞アミノ酸トランスポーターとの多重破壊に着手している。また、新規液胞アミノ酸トランスポーター同定に向け推定トランスポーターとGFPの融合タンパク質を発現させ、網羅的な局在解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
一般的な共免疫沈降実験ではTORC1関連因子とAvt4の相互作用を検出できていない。架橋剤を用いて相互作用を安定化させるなどの工夫を行う。その一方で、栄養条件を変えてのビオチン化タンパク質検出により、TORC1関連因子との相互作用が増加すると思われる条件が分かってきた。こうした条件で培養した細胞を用いたり、変異型TORC1関連因子を発現する細胞を用いた共免疫沈降実験を行う。またBiFCアッセイにおいても適切なコントロール実験を行い、相互作用を反映したVenus蛍光を検出していることを示す。さらにAvt4のリポソームへの再構成を進めており、TORC1関連因子の組換えタンパク質とのin vitroでの相互作用検出を目指したい。Avt4 N末端親水性領域中の保存配列を欠損した変異型Avt4の発現系も構築しており、相互作用への関与を検討するとともに、相互作用によるAvt4/TORC1活性への影響を調べるツールとして使用する。 Avt4以外にもN末端もしくはC末端に長い親水性領域を有する液胞アミノ酸トランスポーターがいくつかある。これらへのビオチン化酵素タグの付加も進めており、一部はすでに質量分析によって相互作用タンパク質候補を同定している。これらについても物理的相互作用を検出するとともに、液胞内アミノ酸含量測定および単離液胞膜小胞を用いたアミノ酸輸送活性測定により、トランスポーターの活性調節への関与を検討する。また、マイクロアレイ解析を行い、トランスポーター欠損株および相互作用因子欠損株の発現プロファイルを精査することにより、トランスポーターが栄養情報を感知するレセプターとしても機能するのかについて検討する。
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