研究課題/領域番号 |
21K05513
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39010:遺伝育種科学関連
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
久保山 勉 茨城大学, 農学部, 教授 (10260506)
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研究分担者 |
一谷 勝之 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 教授 (10305162)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 雑種強勢 / ヘテロシス / イネ / Oryza sativa / 初期生育 / QTL / GWAS / Oryza / 生体重 / rRNA |
研究開始時の研究の概要 |
本研究はイネの生育初期と定植後1ヶ月のイネのバイオマスに関する雑種強勢が一致するかどうかを調査し,ハイブリッドライスにおける組合わせ能力検定の効率化を目指す.また,世界の栽培イネコアコレクションを用いたゲノムワイド関連解析や雑種強勢程度が異なる系統間のQTL解析などにより雑種強勢程度に影響する染色体領域の探索を行い,雑種強勢が生じる遺伝機構について検討を加える.さらに,18S rRNA遺伝子領域において,雑種と両親でメチル化パターンの違いを調査し,メチル化パターンと雑種強勢の関係についても調査を行う.
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研究実績の概要 |
雑種強勢とは品種間交雑や系統間交雑の雑種第一代(F1;)が両親平均よりも旺盛な生育などの優れた性質を示すことである.様々な形質において雑種強勢が観察され,多くの動植物で育種に利用されている.本研究では,雑種強勢が生じる機構の解明を目標に,世界のイネコアコレクション(WRC)と台中65号(T65)との雑種を使って雑種強勢の程度を調査した. その結果,WRC系統の多くはT65との間で雑種強勢を示した.1/2MS無機塩類の培地で半無菌栽培を行い播種後10日目で調査したところ,雑種は両親平均に対して全生体重で54%~278%,シュート生体重で48%~255%,根生体重で67%~308%であった.ヘテロシス程度が特に高い系統が2つ特定され,これらはいずれもindicaであった. ゲノムワイド関連解析では全ての形質において閾値(-log10 (P) > 7.8)を超える有意なQTLは検出されなかった.最も高い値を示したのはシュート生体重の12番染色体のピークであり,-log10 (P)= 5.89であった. さらに,顕著な雑種強勢がみられたT65×WRC系統の雑種にT65を戻し交雑してBC1F1集団を作出し,播種後10日の生体重についてQTL解析を行った. BC1F1集団の生体重は両親間に分布したが,中にはF1と同定度の高い値を示す個体も見られた.区間マッピングでは全染色体でLOD値が低く,QTLを検出できなかった.一方,QTL間の交互作用を考慮したMultiple-QTL解析により互いに相互作用する6つのQTLが検出された.また,これらのQTLの3つについてはいずれもWRC系統の対立遺伝子を持つと成長が抑制される負の相互作用がみられた.このため,顕著な雑種強勢を示したWRC系統であっても,負の相互作用を解消することによってさらに雑種強勢の程度を高められる可能が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すべての世界のイネコアコレクション(WRC系統)と台中65号(T65)との雑種の初期生育において雑種強勢程度を評価し,優れたヘテロシスを示す組み合わせを見出すことができた.また,この評価で得られた形質値を用いてGWASを行い,雑種強勢程度に関するQTL候補を検出することができた.さらに,顕著な雑種強勢を示した系統とT65の間で,T65を反復親として用いたBC1F1においてQTLの検出と相互作用の存在を見出すことができたため.
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今後の研究の推進方策 |
雑種強勢程度の高かったWRC系統(以下WRC系統)と台中65号(T65)の交雑組合わせでT65を反復親として作出したBC1F1を水田で栽培してDNAを抽出し,DNAマーカーで遺伝子型を決定し,後代で主要なQTLの遺伝子型が分離するBC1F1を選抜し,自殖種子を収穫する.BC1F2を栽培し,主要なQTLの遺伝子型の組合わせにおける初期生育の生体重を測定する.QTL間の相互作用と遺伝的な効果を検討し,初期生育の生育が良好であった個体で見つかったQTLの組合わせが,BC1F2世代においても見られるかどうかを検証する. また,WRC系統とT65のBC1F1でQTL解析して得られたようなQTL間の相互作用が他の組合わせでもみられるかどうかを検証するため,T65とKasalathの雑種にT65を戻し交雑したBC1F1でもQTL解析を行う. GWASで検出された雑種強勢程度に関連するChr.12のSNPの下流にある遺伝子の発現を雑種強勢が強く出た系統,中程度の系統,弱い系統で調査し,Chr.12のSNPが雑種強勢程度に関連する原因を明らかにするための調査を行う. 日本晴とKasalathの雑種では播種後5日目の植物において18SrDNAの5'側配列の一部でメチル化レベルが両親系統と比較して高くなっている.このメチル化レベルが日本晴とKasalath固有のものなのか,それとも多くの組み合わせで見られる現象なのか,雑種強勢と関連する現象なのかを明らかにするため,幾つかのWRC系統とT65の間でバイサルファイト処理後にメチル化特異的プライマーを用いてメチル化レベルの評価を行う.
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