研究課題/領域番号 |
21K05526
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39010:遺伝育種科学関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高梨 秀樹 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (60707149)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
|
キーワード | ソルガム / 小穂 / 双子化 / QTL解析 / 二粒化 / 種子生産 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者はソルガム遺伝資源から小穂当たり二粒の子実を稔実させる珍しい双子 (Twin) 系統X [通常の系統は小穂あたり一粒しか稔実しない] を見出し, この性質は子実増産に最適なのではないかと考えた. 面白いことに本Twin形質は一遺伝子支配, かつ優性であることがわかった. これまでの解析により優性Twin化原因遺伝子 (DTI: Dominant Twin Inducer と仮称) は第六染色体末端に座上していることまでわかっており, 本研究ではこのDTI遺伝子の同定とそのTwin化メカニズムの解明, および応用展開に向けた知見を得ることを目的として研究を進めていく.
|
研究実績の概要 |
ソルガムは世界五大穀物の一つであるイネ科作物で、ストレス耐性が高く、また多様な用途があることから、今後のSDGs達成に大きく貢献しうる有望な作物として注目されている。近年ソルガム子実の需要は上昇を続けているものの、その子実生産増加に資する研究は非常に限られていた。申請者はソルガム遺伝資源から小穂(穂を構成する花の単位)当たり二粒の子実を稔実させる珍しい双子(Twin)系統X [通常系統は一粒(Single)しか稔実しない] を見出し、この特徴は子実増産に最適なのではないかと考えた。この双子化形質に関する遺伝学的解析を行うため一般的なSingle系統とTwin系統Xの交配によりF2集団を作出したところ、その過程で本形質は一遺伝子支配であり、かつ予想とは異なりこのTwin形質は優性であることが明らかになった。本研究ではこの双子化責任遺伝子として優性Twin化遺伝子(DTI: DOMINANT TWIN INDUCER)の存在を想定し、これを同定することおよび応用利用に関する知見を得ることを目標としている。 今年度は、昨年度に行ったQTL解析の結果検出された効果の大きなQTL、qDTIについて責任遺伝子の探索を進めた。F2集団の中からqDTI領域周辺で組換えが生じていると考えられる個体群を選抜し、既に解読済みの両親系統の全ゲノムデータから設計したindelマーカーを用いたPCRジェノタイピングによってDTIのファインマッピングを進めた結果、候補領域を約300 Kbの範囲まで狭めることに成功した。さらに、該当領域の両親系統の全ゲノムデータを精査することで責任遺伝子候補を探索した結果、一つの候補を見出した。現在この候補についてTwin型のゲノム配列をSingleタイプのソルガム系統に対して形質転換し、形質転換体において双子化が生じるか否かを検証している段階である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
QTL解析を行った段階では、検出されたqDTIの信頼区間は約2 Mbと、責任遺伝子を探索するにはいささか範囲が広いという問題があった。そこで、F2集団の中からqDTI領域周辺で組換えが生じていると考えられる16個体を選抜し、既に解読済みの両親系統の全ゲノムデータから設計したindelマーカー(計27マーカー)を用いたPCRジェノタイピングによってDTIのファインマッピングを進めた。その結果、責任遺伝子DTIの座上位置を約300 Kbの範囲に狭めることができた。該当領域の両親系統の全ゲノムデータを精査することで責任遺伝子候補を探索していたところ、Twin系統特異的に領域内の約36 Kbの範囲で逆位が生じていることを見出した。シフト部分で遺伝子のコード領域が破壊されるような逆位ではなかったものの, 逆位サイトの両側極近傍にそれぞれ植物の器官発生に重要な働きを持つことが予想される遺伝子A, Bが存在し、逆位によってその二つの遺伝子のプロモーター領域が大きく変化している可能性が示唆された。 そこで、申請者は逆位によってこれらの重要遺伝子の発現が変化することが双子化の原因なのではないかと考え, Twin系統から抽出したDNAをテンプレートとして、変化したプロモーター配列を含むA、B遺伝子を含むゲノム領域をクローニングし(Twin_A-B)、これをSingle系統に対して形質転換し、その効果を検証する計画を立てた。ソルガムの形質転換は依然として困難ではあるものの、各種工夫により現時点で独立の形質転換体を8系統得ることができた。現在形質転換体を育成中であり、出穂し次第小穂の解剖を行い導入配列の効果を検証していく。
|
今後の研究の推進方策 |
Twin_A-Bコンストラクトの導入でSingle系統が双子化するかどうかはまだ未確定ではあるが、仮に双子化に成功した場合、この二遺伝子A、Bのうちのどちらが双子化に必要なのか、あるいは両方とも必要なのかという疑問が生じる。ソルガムの形質転換には長い時間がかかるため、あらかじめこれを検証するための実験を計画しておくべきであると考え、Twin_A-Bコンストラクトに対してPCRによる変異導入を行い、A遺伝子に早期終止コドンを挿入したTwin_mA-Bコンストラクト、B遺伝子に早期終止コドンを挿入したTwin_A-mBコンストラクトを作製し、これについても形質転換体を作出準備中である。Twin_A-Bコンストラクトの導入でSingle系統が双子化した場合、①幼穂の段階からステージごとにTwin型A、B遺伝子の発現を組織レベル/細胞レベルで調査し、並行してRNA-seq解析を行うことで双子化メカニズムの解明を目指し、また②イネに対するTwin_A-Bコンストラクト形質転換体も作出し、双子化メカニズムが種間で保存されているかについての検討も行う。 申請書にも記載した「Twin化に付随する弊害およびDTIが子実形質以外に及ぼす影響についてその有無を圃場レベルで検証」を実施するためのNILsに関しても、これまで通りファインマッピングに用いたジェノタイピングプライマーを流用し、qDTIについてのNILsの作出・選抜を進め(現在F5世代)、来年度以降に圃場を用いて大規模に検証を行っていく予定である。
|