研究課題/領域番号 |
21K05529
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39010:遺伝育種科学関連
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
清水 顕史 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (40409082)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 遺伝育種学 / 栄養ストレス耐性 |
研究開始時の研究の概要 |
熱帯ジャポニカ品種KHAO NOKの示す低栄養ストレス耐性遺伝領域に着目し、遺伝子の単離を目指す。QTLseqで見出した候補領域の絞り込みを進め、トランスクリプトーム情報を加えて候補遺伝子の単離と検証を行う。またKHAO NOKの栄養ストレス下の葉の展開の特徴に着目し、デジタルビジョンの深層学習を利用した新たな形質分類法の確立も目指す。HAO NOK由来の分離集団は自殖を進めF8集団で網羅的遺伝子多型情報を集め、深層学習での形質分類に利用する。
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研究実績の概要 |
2022年度はイネ品種KHAO NOKと日本晴を、蒸留水および1/320倍、1/160倍、1/80倍、1/40倍、1/4倍の吉田の水耕液で5週間栽培し、バイオマス量の変化や元素含量を調べた。1/160倍以下の無~極低栄養条件で、KHAO NOKは日本晴よりバイオマスが有意に高いこと、1/160倍~1/40倍の低栄養条件で濃度の微増に応じた成育量増加がKHAO NOKは優れていることがわかった。このことは、KHAO NOKの栄養ストレス耐性が極低栄養と低栄養で最低2種類以上存在しうることを示唆している。これまで日本晴×KHAO NOKのF3およびF5世代で観察された耐性遺伝領域の変動も、複数の栄養ストレス耐性遺伝子座の存在を示唆しており、完成した日本晴×KHAO NOKのRILsを用いたQTL解析では、無栄養および低栄養の2種類の条件で評価すればよいことが確かめられた。低栄養以下の条件でKHAO NOKは日本晴よりもバイオマス量が多くなるが、窒素含量は品種間差がないため吸収した窒素量(バイオマス量×窒素含量)はKHAO NOKが多くなった。 また、栄養ストレス応答遺伝子の探索に向けて、ナノポアシーケンサーを用いたイネの栄養ストレス応答トランスクリプトームの解析も試行した。リード長の最頻度が1000bpを超えるロングリードを解読できること、1フローセルあたり48hr のランで5.82~17.99G ベースのデータが取得できることが確認でき、これらをde novoアセンブルによりMinION MK1Cでトランスクリプトーム解析が実施できることが分かった。 深層学習を利用した形質分類の準備では、置換領域のみが分離し穂形質が分離する交雑集団を用い、穂画像の畳み込みニューラルネットワークによる分類を試行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本晴×KHAO NOKの自殖を進めRILsが完成できたため、GRAS-Di法による188系統の遺伝子型調査は2022年度内に前倒しで実行することができた。これにより、高密度連鎖地図の整備されたRILsを用いて栄養ストレス耐性のQTL解析および連続無施肥水田で栽培した際の収量関連形質のQTL解析を2023年度に実施することができるようになっており、既にそのための水耕栽培および水田への移植が順調に進められている。 ナノポアMinION MK1Cでトランスクリプトーム解析が可能であることが確かめられており、実施するQTL解析の状況に応じて有望な系統が選抜できた場合にこれを実施することができるようになっており、順調といえる。 深層学習を利用した形質分類の準備は、現在はまだ試行中の状態である。計画では、この技術を用いて今年度内に日本晴×KHAO NOKのRILsで分離する表現型についての形質分類を行うことになっている。画像の畳み込みニューラルネットワークによる新規形質探索を遂行するのだが、探索可能な形質の可能性を増やすことで成功例を挙げることができる。そのため、近赤外分光センサーを用いた形質評価を準備しており、直接計測できない形質の表現型分類法の確立を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は完成したRILs集団を用いて、無栄養および低栄養水耕栽培を行い、2022年度に明らかになったKHAO NOKの持つ無栄養耐性および低栄養耐性の2種類以上のQTLsの検出を行う。またRILs集団は連続無施肥水田でも栽培を進めており、収量関連形質のQTL解析を行う。KHAO NOKの持つ栄養ストレス耐性について相互作用QTLsの検出も含めて複合的な耐性機構の解析を遂行できる。 低栄養以下の条件でKHAO NOKは日本晴よりもバイオマス量が多くなり、窒素含量は品種間差が検出されていないため、吸収した窒素量(バイオマス量×窒素含量)はKHAO NOKが高くなる。この傾向は無栄養でも同様であったため、KHAO NOKの最終的な窒素量の多さは胚乳の窒素量の差ではないかと考え、品種間差を調査する。経時的な胚乳からの窒素転流を見据えて、近赤外分光センサーを用いた経時的な窒素定量を行う。RILsの胚乳窒素量についても余力があれば調査する。 直接計測できない形質の表現型分類法の確立として、深層学習を利用した画像分類による表現型調査を進めている。日本晴×KHAO NOKのRILsについては、今年度中に解析できる形質が限られているため、近赤外分光センサーを用いる形質調査法を拡充することで、深層学習による分類が有効な形質を選んで本計画の成功例を見出す。
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