研究課題/領域番号 |
21K05533
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39010:遺伝育種科学関連
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
栂根 一夫 基礎生物学研究所, IBBPセンター, 助教 (50343744)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | イネ / 大粒化 / トランスポゾン / 顕性変異 / RNA結合タンパク質 / 大粒 / 優性 / 顕性 |
研究開始時の研究の概要 |
イネ内在性で活発なDNAトランスポゾンnDart1を利用して新規のイネ突然変異体を選抜している。顕性(優性)で種子が大粒化するLgg変異体の原因遺伝子はRNA結合タンパク質であった。Lgg変異体の種子は細胞の大きさを変えず細胞の数が増えていた。Lgg変異はの発現の抑制だったので、LGGの発現を弱く上昇させた形質転換体を作出すると小粒化した。LGG遺伝子と同じRNA結合タンパク質グループは翻訳抑制が報告されていることから、LGGは翻訳抑制によって種子の細胞数を制御しており、他方で標的となるmRNAは細胞分裂を促進していると想定できる。細胞分裂の制御で種子の大きさを変える遺伝子の働きを解明する。
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研究実績の概要 |
イネ内在性で活発に転移するDNAトランスポゾンnDart1を利用して新規のイネ突然変異体を選抜している。顕性(優性)で種子が大粒化するLgg変異体の原因遺伝子はRNA結合ドメインを持つタンパク質であった。Lgg変異は粒の縦が主として伸長し横幅は野生型とほぼ変わらず、そのヘテロ個体は中間型を示した。顕性であるにも係わらずLgg変異はその原因遺伝子の発現の低下であることから、その機能は抑制に作用するものであると予想された。Lgg変異は、nDartのLGG遺伝子への第1イントロンへの挿入だけでなく、遺伝子内部にもデリーションも生じていた。このデリーションは、トランスポゾンnDart内からLgg遺伝子の第1イントロンの途中まで生じておりおよそ400bpほどであった。このデリーションが起きた原因は、nDartの挿入によって新たに生じた2ヶ所の相同配列が組換えることでおきたと考えられる。変異による塩基配列の変化は、タンパク質をコードする領域外であったので、タンパク質発現の可能性を調べるためにRace法を行いLgg遺伝子の転写開始点を調べた。その結果、遺伝子の転写開始点が野生型に比べて上流に変化していた。この変化によりタンパク質への翻訳に必要なファーストメチオニンのコドンが新たに生じ使用するコドンのフレームがずれており、正常なタンパク質の翻訳は起きていないと考えられた。LGGの発現量を強く上昇させた個体は再生しなかったので、内在性プロモーターによって誘導させてコピー数を増やすことで発現を弱く上昇させた形質転換体を作出すると小粒化した。小粒化した形質転換体の種子の細胞のサイズと数を確認したところ、細胞のサイズは変わらず数が減少していることを確認できたので、Lgg変異による大粒化とともにLGG遺伝子は細胞数に関与している事が判明した。LGG遺伝子をGFPと融合した形質転換体を作成したところ、核の中に蓄積することを観察できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していたLGGの細胞内の局在については順調に進行した。また、LGGと協調して発現する遺伝子を明らかにするために幼穗期のおよそ1mmの幼穗からRNAを抽出して集めた。幼穗は種子が形成される前の穂であるが、十分量のRNAを抽出するために多数の幼穗を準備する必要があり、イネの成長条件を合わせるために当初の予定より時間がかかったが遂行することができた。LGGタンパク質と反応する抗体を作成するために、大腸菌で発現を試みたが、発現したタンパク質がアグリゲーションしたり、大腸菌の生育を抑制した問題が生じたが解決できる目処を立てることができた。今後の研究の推進方策については、後述のプロジェクトAおよびBを柱として進める。
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今後の研究の推進方策 |
プロジェクトA1 イネ個体内でのLGGタンパク質の動態の解析・LGG抗体を作成しタンパク質の量を組織別に明らかにする。またGUS遺伝子をLGGのコーディング領域に遺伝子ターゲティングによってKnock-inした形質転換植物を作出する。 A2 細胞内でのLGGの局在の解析・LGGのN末又はC末にGFPを融合した形質転換カルスを作成し、核への局在を示す予備的な結果を得た。一方で再生してきた植物では細胞内の小器官への蓄積の可能性も示唆されたので、細胞内で機能する場所を明らかにする。 A3 LGGパラログ遺伝子の機能解明・イネゲノムにはLGG遺伝子のパラログが1コピー存在しているので、機能の冗長性が考えられる。ゲノム編集において欠損変異体を作出したが、シングルの変異では大粒化などの影響は観察されなかったので、LGGとの2重変異体を作出して表現型の変化を調べる。 プロジェクトB1 LGGの標的mRNAをin vitroで探索・大腸菌において発現させたLGGタンパク質と相互作用する核酸を選抜する。合成した短いランダムな核酸配列とLGGタンパク質を相互作用させ同定するHT-SETEX法を用いる。 B2 LGGの標的mRNAをin vivoでヒスチジン融合LGGタンパク質を発現させたイネから結合したRNAを同定する方法とLGG抗体を用いて免疫沈降させて標的RNAを探索・同定するRIP方法を検討し、得られたRNA配列をRNA-seqで配列を同定する。 B3 LGGの標的mRNAの同定・B1とB2から得られた結果を比較検討し、候補のmRNAをLGGタンパクとの結合をゲルシフトアッセイで評価する。候補遺伝子とGFPの融合したコンストラクトをイネに導入し、GFP抗体を用いて翻訳抑制について評価を行う。
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