研究課題/領域番号 |
21K05545
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39020:作物生産科学関連
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
伊澤 かんな (佐藤かんな) 東京農業大学, 生命科学部, 准教授 (40456603)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | イネ科植物 / 細胞壁 / BAHDアシルトランスフェラーゼ / ケイヒ酸エステル / イネ / ソルガム / BAHD / イネ科 |
研究開始時の研究の概要 |
細胞壁がもたらす植物の形態や物理的強度特性の決定は、イネ科作物の収量確保だけでなく、家畜飼料やバイオマスとしての茎葉部利用に向けたイネ科作物育種に重要な形質の1つである。しかし、細胞壁構築と植物の形成との関連は未だ明らかにされていない点も多い。本研究では、イネ科作物の形成や成育と細胞壁構築との関連を解明するために、イネ科細胞壁に特有の成分であり、細胞壁成分間の架橋を行うフェルラ酸およびp-クマル酸エステルの植物形成における機能を明らかにする。具体的には、イネおよびソルガムの茎でのフェルラ酸およびp-クマル酸エステルの蓄積変化と、植物の形態や成育、物理的強度形成との関連を解明する。
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研究実績の概要 |
本研究では、イネ科植物に特有の細胞壁成分であるケイヒ酸エステルの蓄積が、イネ科植物の形態や強度維持にどのように関与しているのかを明らかにすることを目的とした。特に、フェルラ酸およびp-クマル酸エステルの合成に関わるとされているBAHD遺伝子が、イネやソルガムの生育や強度に及ぼす影響を明らかにする。イネおよびソルガムのゲノム上には、ケイヒ酸エステル合成に関わると考えられる5グループに属する12の遺伝子が見出されている。そのうち節間での発現が高い遺伝子に着目し、ゲノム編集による遺伝子欠損個体またはRNAiによる遺伝子発現抑制個体を作製した。 イネ節間では12遺伝子すべてが発現していた。そこで、各グループ内の複数の遺伝子で相同性が高い配列を標的としたゲノム編集個体の作製を試みた。その結果、グループ4と5に属する遺伝子に変異を有するゲノム編集個体の作製に成功した。グループ4については変異ホモ個体の種子を、グループ5についてはヘテロ個体を確保することができた。グループ5についてはRNAiによる発現抑制個体の作製も行った。葉身および葉鞘を用いた発現解析の結果、グループ5に属する3遺伝子のうち1つの遺伝子で発現量が減少している可能性があることを明らかにした。これらの発現抑制個体ではフェルラ酸、p-クマル酸エステル共に葉身と葉鞘で減少傾向にあることを明らかにした。 ソルガムではグループ4に属する遺伝子をターゲットとしたRNAiによる発現抑制個体の解析を行った。ソルガムのグループ4に属する2遺伝子のうち節間で発現している1遺伝子の発現量をRT-PCRにより比較したところ、葉では発現抑制が認められたが節間での遺伝子発現量は野生型と同程度であった。ケイヒ酸エステル含有量にも顕著な差が認められなかったが、節間の細胞壁画分の酵素糖化効率は野生型よりも有意に増加している系統があることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はケイヒ酸エステル合成に関わると考えられているBAHD遺伝子の発現抑制個体もしくはゲノム編集個体の作製、及び、作製した解析材料を用いた細胞壁成分特性の解析を実施した。一部のBAHD遺伝子グループにおいて、目的遺伝子が発現抑制もしくは変異した個体を獲得することができた。また、ケイヒ酸エステル含有量や細胞壁の酵素糖化効率の分析から、発現量もしくは遺伝子変異により細胞壁成分に影響が出ている可能性を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
イネのグループ4および5に属する遺伝子については本年度ゲノム編集による遺伝子変異系統を得ることができた。今後はこれらをホモ変異で持つ個体を生育させ、ケイヒ酸エステル含有量を中心とした細胞壁成分組成および成分分布の解析、酵素糖化効率への影響などを明らかにしていく。また、植物体の生育や強度への影響も明らかにし、細胞壁形成と植物の成長量との関連も明らかにしたいと考えている。 ソルガムについては、節間における遺伝子発現抑制量と細胞壁画分の酵素糖化効率の上昇との関連を詳細に明らかにする。また、p-クマル酸やフェルラ酸エステル含有量は野生型と同程度であったが、リグニン含有量や細胞壁成分間の架橋を行う2量体フェルラ酸など、ケイヒ酸エステルを軸に蓄積する細胞壁成分の蓄積量への影響も明らかにしていきたいと考えている。上記の解析を通して、BAHD遺伝子による細胞壁制御と植物体形成への影響との関連を解明していく。
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