研究課題
基盤研究(C)
種子伝染性ウイルスは、感染する植物種によって種子伝染率が大きく異なる点が挙げられる。これまでの解析から、その原因が、胚における各植物種が持つウイルス防御機構であるRNAサイレンシングとウイルスの持つRNAサイレンシングを抑制する能力との“せめぎ合い” がもたらす結果であると推察された。そこで、RNAサイレンシングに関与する植物遺伝子の発現を抑制および停止させた形質転換植物を用いて、ウイルスの種子伝染率や胚感染の変化を解析することにより、植物ウイルスの種子伝染を阻害する防御機構の一つがRNAサイレンシングであることを証明する。
ラズベリー黄化ウイルス(RBDV)感染Nicotiana benthamiana (Nb)に、健全Nb由来の花粉を授粉しても、胚へのウイルス感染は検出されず、種子伝染しなかった。そこで、RNAサイレンシングにより、ウイルスが胚へ感染できず、種子伝染しないと仮説を立て、ダイサー様タンパク質2と4、RNA依存RNAポリメラーゼ6の機能を喪失させたNb変異体を用いて、RBDVの種子伝染を解析した。その結果、これらのNb変異体においても、胚にウイルス感染は検出されず、種子伝染しなかった。このことから、RNAサイレンシングはRBDVの種子伝染阻害に不可欠ではないと示唆された。
植物ウイルスの中でも種子伝染性ウイルスは、国際的な種子流通量の増加から、世界中に拡散される危険性が極めて高い。種子伝染性ウイルスの多くは、発芽前の植物体である種子中の胚に感染することで次世代の植物へと伝染するため、乾熱処理による消毒効果は期待できない。しかも、種子伝染性ウイルスに対する植物の防御機構や抵抗性遺伝子は分かっておらず、その防除は困難を極める。申請者の解析から、胚におけるウイルス感染阻害作用にRNAサイレンシングが不可欠ではないことが示された。今後、未知の胚へのウイルス感染抑制メカニズムの解明が期待される。
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https://www.elsevierblogs.com/virology/how-viruses-hitch-a-ride-on-pollen-to-infect-plants/
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