研究課題
基盤研究(C)
「内生サプレッサー」については、健全なエンドウ葉から免疫抑制作用をもつ物質として初めて分離されて以来、その後オオムギやシロイヌナズナなどでも確認されているが、それらの構造は長い間不明であった。申請者は 2019 年、シロイヌナズナ由来の物質の構造解析に成功し、その1つが名古屋大学・松林教授らが発見した窒素要求シグナル伝達に関与する CEP ペプチドであることを明らかにした。本課題はこれを受けて、CEP ペプチドを介した植物免疫の制御機構の全容とその生物学的意義について実証し、植物の「成長」と「防御」という表裏一体の自然現象の根幹に迫るものである。
植物は自身の免疫を負に調節する因子(内生サプレッサー)を備えている。これまでに、シロイヌナズナからの精製を進め、その1つが CEP5 ペプチドであることを明らかにした。実際、化学合成した CEP5 ペプチドで処理した植物体では MAMP 誘導性の ROS 生成やカロース生成は抑制され、本来感染しない不適応型菌による感染が成立する。本研究課題では、シロイヌナズナの CEP ペプチドのうち、グループⅠ(CEP1-12)およびグループⅡ(CEP13-15)から CEP1、3、5、グループⅡから CEP14 を合成し、これらの免疫や成長に対する作用の冗長性と特異性について示した。
傷害や感染時に植物体内で生成される内生エリシターについての研究例は多数あるが、植物免疫を抑制する内生サプレッサーの作用機構を明らかにしようとする研究は世界的にも少ない。このような状況の中、CEP5 ペプチドが、植物の免疫と成長を調節しうることから、それらのトレードオフを調節する有力な鍵分子であると考えられた。この研究の延長上には植物の「成長」と「防御」の人為的制御もあり、その仕組みを利用した作物生産が現実となれば食料生産に大きなインパクトを与え、波及効果は計り知れない。
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