研究課題
基盤研究(C)
サシバエは吸血性の畜産害虫である。吸血には強い痛みをともなうため、肉用牛・乳用牛ともに多大なストレスを受け、生産性への悪影響が報告されている。さらに、サシバエは牛伝染性リンパ腫ウイルスをはじめ、多くの家畜病原体の媒介者でもあることから、有効な防除法の確立は喫緊の課題である。こうした中、申請者は国内で初めてサシバエの天敵寄生蜂を発見した。この寄生蜂の持続的な活用を目標に、本研究では、下記3点の調査結果を総合しサシバエの保全的生物的防除の基盤を整備する。①全国各地での寄生蜂の種構成の解明、②寄生蜂の発生消長の解明、③サシバエと主要寄生蜂の地理的遺伝構造の解明
サシバエ(ハエ目:イエバエ科)は、家畜の安寧阻害や病原体の媒介をする畜産害虫として知られている。現状の防除法は、農場の構造や飼養規模によっては十分に機能しておらず、早急な対策構築が求められている。そうした中、申請者はサシバエの天敵寄生蜂キャメロンコガネコバチ(ハチ目:コガネコバチ科)を国内で初めて発見し、その有効利用を検討している。本研究では、①国内の寄生蜂相の解明・②重点調査地における発生消長の解明・③サシバエと主要寄生蜂の地理的遺伝構造の解明をとおし、保全的生物的防除の基盤を整備することを目的としている。①に関して、本年度は、北海道、栃木県、岡山県、福岡県、鹿児島県、沖縄県において、堆肥を掘り起こしサシバエ蛹を探索した。すべての地点でサシバエ蛹が採集できた。室内飼育の結果、いずれの調査地においてもキャメロンコガネコバチが採集された。②に関して、重点調査地の福岡では、サシバエの蛹が採集されたのは7月の調査からであり、その密度は9.2蛹/堆肥1Lであった。8月には蛹密度は0.8蛹/堆肥1Lまで低下した。予備的な室内試験では、高温条件でサシバエ幼虫期の生存率が低下することが分かっていることから、盛夏の密度減少は高温障害によるものと考えられる。10月には、蛹密度は再び上昇し、4.7蛹/堆肥1Lとなった。寄生は継続的にみられ、寄生率は平均して2.2%であった。③に関して、各地でキャメロンコガネコバチは採集されたが捕獲数が少なかった。そのため、次年度に追加調査をし十分な個体数が集まってから解析を行うこととした。なお、サシバエは各地で解析に十分な個体数を確保できている。
2: おおむね順調に進展している
全国各地の広い範囲においてサンプル収集が進んでいる。サシバエの解析用個体は必要数は確保されている。キャメロンコガネコバチの個体を追加し、一括して解析を実施する。
「① 国内のサシバエ寄生蜂相の解明」および「② 重点調査地における発生消長の解明」については、計画通り調査を重ね研究をすすめる。「③サシバエと主要寄生蜂の地理的集団構造の解明」について、キャメロンコガネコバチの追加採集を行う。
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