研究課題/領域番号 |
21K05606
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39040:植物保護科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
川口 章 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 西日本農業研究センター, 上級研究員 (80520486)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | トマトかいよう病 / SEIRモデル / 感染拡大シミュレーション / SIRモデル / 基本再生産指数 |
研究開始時の研究の概要 |
植物に発生する病害は全て微生物(糸状菌・細菌・ウイルス等)による感染症であり、人間の疫学モデルを応用することは可能だが、植物病害における感染症拡大シミュレーションモデルの研究事例は非常に少なく、具体的な病害防除対策立案に繋げる研究には至っていない。本研究では、感染症拡大シミュレーションモデルの具体例として、世界中で発生している細菌性難防除病害であるトマトかいよう病における感染拡大シミュレーションモデルを構築する。本病の感染確率や防除技術の効果をモデルに当てはめることで、植物の健全株、感染未発病株、発病株の推移の変動を可視化するモデルを構築し、防除対策立案に使える新しいモデルを提案する。
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研究実績の概要 |
トマトかいよう病はトマトの安定生産を脅かす難防除病害であるが、圃場ごとに発病開始から感染の拡大,感染の終息の時期は異なるため、一律の防除対策が圃場ごとに適合せず、生産者は防除対策に苦慮している。昨年度までに既存の疫学モデルを活用して,栽培規模の異なる圃場ごとに発病の推移をシミュレーションできるモデルのSIRモデルを開発した。しかしながら潜在感染株のパラメータがなかったため、現場で適用できるレベルのモデルとしては課題を残した。そこで、トマトへの病原細菌の接種試験等を行い、潜在感染の期間が10日であることを明らかにした。そのパラメータを用い、SIRモデルに潜在感染株のカテゴリーを加えたSEIRモデルへの当てはめを行った結果、SEIRモデルにも適合した。さらにそこから、文献調査および考察を続けた結果、一次伝染からの感染確率のパラメータと、一次伝染および二次伝染に対して行う防除対策の効果を示すパラメータを組み合わせるという発想に辿り着き、新しい感染拡大予測モデルであるPHLIDモデルを開発した。このモデルを用いることで、複数の伝染経路を持つ植物病害の感染拡大シミュレーションを行うことが可能になった。さらに本モデルにより、一次伝染を抑制するための土壌消毒の効果と、二次伝染を抑制するための剪定ハサミの消毒効果の、それぞれの単独の防除効果と、組み合わせた場合の防除効果をシミュレーションできるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでの研究計画では、SIRモデルを構築したのち、パラメータの調整を行いつつ、実際の発生現場における発病レベルにフィットするようなモデルへの改良を加えていく予定であったが、文献調査および考察を続けた結果として新しい着想を得たことで、SEIRモデルをベースとし、且つ一次伝染源のパラメータと、防除効果のパラメータを加え、感染拡大だけでなく防除効果も推定できる新しいモデルを研究2年目で構築することができた。
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今後の研究の推進方策 |
新しいモデルの開発を先に進めたことにより、現地生産者の圃場への調査の旅費や消耗品購入の執行が予定より少なかった。本年度はすでに様式F-13-2のとおり海外における研究滞在等に伴う科学研究費助成事業補助事業期間延長承認申請書を提出しており、10月21日から研究を再開する予定である。今後は現場の発病データをフィッティングさせて、防除効果の推定についてモデルの検証を行う予定である。
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