研究課題/領域番号 |
21K05620
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39050:昆虫科学関連
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
野下 浩二 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (40423008)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | カメムシ / フェロモン / 餌探索シグナル / 不活性化 / ヘキサナール |
研究開始時の研究の概要 |
昆虫は外界から入ってくる物質を触角で情報として感知する.特定の物質が情報として機能するためには,その物質が受容体と結合し,信号として認識される必要があるが,受容され役目を終えた物質が適切に不活性化される,すなわち「嗅覚のオンとオフを制御する仕組み」を昆虫は兼ね備えているはずである.本研究では,ヘキサナールをフェロモンや餌探索シグナルとして利用するカメムシ類を材料に,十分に理解されていない情報化学物質の不活性化を生化学ならびに行動学的な視点から検証する.昆虫の化学受容について基礎・応用両面での新展開を目指す.
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研究実績の概要 |
昆虫の多くは,外界から情報として入ってくる特定の匂い物質 (情報化学物質) を受容し,好適な餌や配偶者を探し出す.このような情報化学物質の探索は,同種間の昆虫ならびに昆虫と植物など異種間の生物間相互作用を理解する上で役立つ.昆虫が外界から適切に情報を得るためには,情報化学物質の受容と合わせて,いったん受容した情報をリセットし,次に来る新しい情報に備える必要があると考えられる.しかしながら,受容され役目を終えた情報化学物質が不活性化される仕組みはあまり研究されていない. 申請者は,カメムシの行動を制御する情報化学物質の研究を進めてきた.その過程で,カメムシ触覚内に存在するアルデヒド酸化酵素が情報化学物質の不活性化に関わると予想している.例えば,クサギカメムシは植物由来のヘキサナールを餌探索の手掛かりとする.クサギカメムシの触覚内に,ヘキサナールを酸化しうる活性を見出し,この酵素が外部から入ってくる情報化学物質の不活性化を担うと予想している.カメムシ触覚内に存在するヘキサナール酸化酵素の働きや構造を明らかにすることと,ヘキサナールの酸化物であるヘキサン酸へのカメムシの反応を調べることから,カメムシ触覚における情報化学物質の不活性化メカニズムの解明を試みることを計画した. 2022年度は,ヘキサナールに反応するクサギカメムシがヘキサン酸にどのように反応するかを調べた.ヘキサナールに対してクサギカメムシは口吻を伸展し,餌を食べようと試みるが,ヘキサン酸に対してはそのような行動は観察されなかった.したがって,触覚内でヘキサナールが酵素によりヘキサン酸に酸化されることで,餌探索シグナルが情報を持たない物質へと変換されると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヘキサナールを警報フェロモンとするオオツマキカメムシと,植物由来のヘキサナールを餌探索行動の手掛かりにするクサギカメムシの2種をモデルとして研究を計画した.クサギカメムシの触覚内にヘキサナールを酸化する酵素活性があることはわかっていたが,その役割が不明のままであった.今回,ヘキサナールの酸化物であるヘキサン酸に対するカメムシが何かしらの行動を示さないことがわかったため,カメムシの行動面からヘキサナールの酸化が情報化学物質の不活性化を担うことを示唆する証拠を得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
クサギカメムシならびにオオツマキヘリカメムシの触覚を材料に,ヘキサナールを酸化する酵素を精製し,その諸性質ならびに一次構造情報を明らかにする.
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