研究課題/領域番号 |
21K05622
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39050:昆虫科学関連
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
山本 大介 自治医科大学, 医学部, 准教授 (90597189)
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研究分担者 |
加藤 大智 自治医科大学, 医学部, 教授 (00346579)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 吸血昆虫 / 性分化 / 唾液腺 / 遺伝子組換え蚊 / ハマダラカ / サシチョウバエ / 害虫防除 |
研究開始時の研究の概要 |
吸血昆虫はマラリアをはじめとした多くの感染症を媒介する。蚊やサシチョウバエなどの雌のみが吸血を行う種では、吸血やそれに伴う病原体媒介に関わる機構が性と密接な関係にあると推測される。本研究では、雌特異的に吸血を行う蚊及びサシチョウバエの中腸で発現している遺伝子のうち、性分化遺伝子(性差を誘導する遺伝子)の影響を受ける遺伝子について、血液消化、病原体媒介、生殖における機能を明らかにする。本研究の成果は、吸血昆虫の吸血や病原体媒介能力を誘導する分子機構の解明に加えて、害虫防除や感染症制御の新しい戦略開発の基盤になると期待される。
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研究実績の概要 |
前年度までの解析でハマダラカDSXMに唾液腺の発達抑制(雌化)機能があることが示唆されたため、その検証を目的としてトランスポゾンベクターによる遺伝子導入法でハマダラカの雌唾液腺特異的にDSXMの雄型産物を強制発現する遺伝子組換え系統を樹立した。この系統の雌成虫では唾液腺が矮小化していた。既知の唾液遺伝子(aapp, apy, D7r1, D7L2)に関してRT-qPCR法により発現量を解析したところ、発現量の低下が見られた。また、唾液タンパク質の保有量についても概ね減少が見られ、一部の分子においては欠失が見られた。以上の結果はDSXMに唾液腺の発達抑制機能があることを裏付けるものである。また、これらは蚊で組織特異的に性特異的DSXアイソフォームの発現を制御することで、特定の組織でのみ性の撹乱が可能なことを示すものである。 この系統に関してマウスを介した吸血量を調べたところ、吸血量には野生型系統と比べて差は見られなかった。一方、この蚊に対するネズミマラリア原虫を用いた吸血感染実験を行った結果、中腸のオオシスト数が野生型系統と比べて有意に低下した。この結果は、ハマダラカの唾液に中腸内でのマラリア原虫と宿主間での相互作用に関与する分子が含まれていることを示唆している。これは我々の以前の報告(Yamamoto et al., 2016)で提唱した説を裏付けるものである。 サシチョウバエ(P. papatasi)におけるlarval RNAiによる成虫でのdsx遺伝子機能阻害解析を行なった。dsRNA注入個体の表現型について羽化後の形態を確認した。生殖器、吸血に重要な口器についてコントロール個体との差異は観察されなかった。この結果については現在の方法での遺伝子発現の抑制効果(コントロールと比較して約50%の発現減少)が十分ではなかったことが考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遺伝子組換え系統を作成するための顕微注入装置が故障・修理不可となり、代替機器の購入に時間を要した。これにより作製予定だった系統の一部が作製ができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
作成済みの遺伝子組換えハマダラカ用ベクターについて、系統の樹立を進める。また、CRISPR/Cas9ノックインによるdsx遺伝子導入についても試みる。 ハマダラカに導入したDSXFあるいはDSXMのタンパク質レベルでの発現を確認するため、抗DSX抗体の作製あるいはタグペプチド付きDSXタンパク質を発現する遺伝子導入を行う。 サシチョウバエのdsx遺伝子機能解析に関しては、今後はdsRNAを終齢幼虫に対して時間をおいて複数回注入する、また注入前後の低温麻酔の時間を延長し注入液の漏出を低減させること等により遺伝子発現阻害効率をより高める検討を行う。また成虫へのCRISPR/Cas9による遺伝子ノックアウトについて検討する。
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