研究課題/領域番号 |
21K05629
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39060:生物資源保全学関連
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
近藤 大輔 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (90708364)
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研究分担者 |
川合 佑典 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (10709546)
北山 知代 特定非営利活動法人エバーラスティング・ネイチャー, 保全生態研究グループ, 研究員 (00934275)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | ウミガメ / 嗅覚器 / 鼻腔 / 組織学 / 形態学 / 嗅覚 / 組織形態学 / 行動学 / フェロモン |
研究開始時の研究の概要 |
近年、ウミガメ類の生態における嗅覚の重要性が認識され、その全容の解明が望まれている。本研究では、研究代表者が発見したウミガメ鼻腔内の3種類の嗅覚上皮について、組織化学的に染め分けるマーカーを探索し、各マーカーに陽性を示す脳中枢領域の容積を算出することで、それぞれの上皮への依存程度を評価する。同時に、性質が明らかな嗅覚受容体(約40種類)について、各上皮における発現量をRT-qPCR法で定量する。以上より、ウミガメ類が各種匂い物質をどの程度受容しているのかを明らかにする。またアオウミガメの行動における同種の匂いの影響を解析し、ウミガメ類の生態における嗅覚コミュニケーションの重要性を証明する。
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研究実績の概要 |
本研究では、絶滅の危惧に瀕するアオウミガメにおいて、嗅覚器に関する基礎知見を集積することで嗅覚が生態にどのような役割を果たしているのかを追究することを目的としている。令和4年度までに、幼若個体および成体の嗅覚器の詳細を明らかにし、解剖学分野の国際英文誌に発表してきた。また関連研究として、交尾後のウミガメの卵管内において、精子が貯蔵される部位の同定を行い、国際英文誌へ報告している。 令和5年度は、ウミガメが匂い物質によるコミュニケーションを取っている可能性を追究するため、カメ類の臭腺であるラスク腺のサンプリング及び組織解析を行った。まだ十分なサンプル数の解析は出来ていないが、雌雄ともに性成熟の前後で、分泌腺房の組織構造が大きく変化している知見が得られた。この結果はラスク腺からの分泌物が性成熟後に変化していることを示し、生態において何らかの用途で使用している可能性がある。引き続き、サンプル数を増やし、この知見を確実なものにする必要がある。 加えて、海洋への二次適応という視点からウミガメの嗅覚を考察するため、同様に海洋へ二次適応したアザラシについて、その嗅覚系を解析した。哺乳類ではフェロモン受容のための鋤鼻器という構造が鼻部に存在するが、アザラシでは消失し、その部位が分泌構造に変化していることを明らかにした。このような分泌構造はウミガメの生態にもみられる一方で、淡水生・陸生のカメには存在しない。本知見は、二次的な海生動物種に陸生動物種の知見が外挿できないことを再認識させるものであり、国際英文誌へ修正稿を投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は嗅覚器の電子顕微鏡評価を予定していたが、サンプルを調達できなかったため、この解析評価は進めることができなかった。その一方で、匂いの「出し手」であるラスク腺のサンプリングと組織解析を進め、成長に伴う分泌腺の変化を発見した。 加えて、ウミガメと同様に海洋へ二次適応したアザラシでは、嗅覚器の特徴が陸生の食肉類と大きく異なっていることを発見した。 以上より、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、令和5年度に得られたラスク腺の知見を充実させるために、令和6年度まで延長を申請し承認していただいている。 令和6年度はラスク腺のサンプリングおよび組織解析をさらに進め、現在得られている知見を確かなものとした上で、国際英文誌への発表を予定する。また現在投稿中のアザラシに関する原稿について、さらなる修正のための追加実験を予定している。
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