研究課題/領域番号 |
21K05638
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39060:生物資源保全学関連
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
三宅 裕志 北里大学, 海洋生命科学部, 教授 (00373465)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | タイワンホウキガニ / ゾエア / メガロパ / 幼生分散 / 生活史 / 幼生 / 熱水音 / 繁殖 / 熱水噴出域 |
研究開始時の研究の概要 |
熱水鉱床の資源開発は、その反面、特殊な生態系の破壊に繋がり、環境配慮が必要である。しかし、その生態系に関する情報は限定的である。これまで、日本周辺での熱水生物について、黒潮による幼生分散の仮説がたてられてきた。 本研究では、黒潮流路に生息地が存在し、サンプリングや飼育が容易な熱水性甲殻類のタイワンホウキガニを研究対象とした。本種の各生息地における遺伝子フローをあきらかにするとともに、幼生の分布、成長、行動を明らかにする。このことにより、熱水性生物の幼生がどのように熱水域への着底に至るのか、なぜ熱水域に生息しなければならないのかを考察し、特殊な生態系を保全しながら、海底資源開発する提言を示す。
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研究実績の概要 |
台湾の亀山島において、8月にダビングによるサンプリングをおこなったが、採集されるものはほとんどオスで、メスは16%程度であり、抱卵個体は採集できなかった。また、一昼夜、生息場所にライトトラップを仕掛け、幼生の採集を試みたところ、ホウキガニの幼生が数多く採集できた。亀山島では昨年度3月においては抱卵個体が採集できており、8月は産卵シーズンではないという情報があるが、実際はかなりの幼生が採集されたため、新しい知見が得られた。 10月に広島大学の豊潮丸で、薩摩硫黄島および昭和硫黄島でのサンプリングを行った。薩摩硫黄島では、熱水による変色域において、ダイビングで採集を試みたが、噴気がなく、変色は陸上からの熱水の供給であることがわかり、海底からの熱水、噴気がないところにはホウキガニは生息していないことが明らかになった。昭和硫黄島において、着底間もない稚ガニが採集され、新規加入が確認された。また、亀山島に比べて、個体群の大きさがかなり小さいと思われていたが、ある場所において、かなり高密度に生息していることがあきらかになった。 以上のサンプリングで得られた成体を繁殖させてゾエアを得た。幼生は1 Lガラスビーカーに滅菌処理海水(11℃、16℃、21℃、26℃、31℃)を満たし、アルテミアを給餌して飼育した。幼生は21℃、26℃の飼育で第1ゾエアから第6ゾエア、メガロパが観察できた。これらのサンプルから、全てのステージにおける形態的特徴を明らかにした。幼生の浮遊期間は40~93日で、黒潮の流速を考慮すると最大6532 kmの分散が可能であり、既知の各生息地まで十分に到達できる期間であった。またメガロパ期は42日間で、稚ガニの鋏脚の先端にはメガロパには確認できなかった剛毛が生えていた。このことから遊泳力のあるメガロパ期に熱水噴出域へ誘引され、着底し稚ガニへと変態すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナによる航海の制限が解かれ、ようやく南西諸島での調査を行うことができ、高密度に生息している場所を発見できた。また、生息地における幼生の採集方法が確立でき、稚ガニの確認もできた。さらには、第1ゾエアからメガロパ、稚ガニまで飼育に成功し、生活環を明らかにでき、幼生の形態的変化を明らかに出来た。また、熱水音に引きつけられる幼生の時期がメガロパである可能性が考えられた。環境DNA解析にもちいるタイワンホウキガニ用のプライマーを以前に設計していたが、さらに精度の高いプライマーを設計した。 来年度の昭和硫黄島への航海も確保や台湾での調査も予定されている。 タイワンホウキガニの原記載地である台湾の亀山島においても、調査が出来るようになり、採集した生物の輸送方法も確立できている。 サウンドとラップに関しては、設計がうまくいかず製作までには至らなかった
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今後の研究の推進方策 |
飼育個体を繁殖させ、幼生を得て、メガロパまでの飼育方法がある程度確立された。第1ゾエアからメガロパ、稚ガニに至る形態変化については、早急に論文化を行う。 来年度の昭和硫黄島への航海も確保や台湾での調査も予定されているため、今後は、各段階の幼生の音への反応を見る実験を行う。また、野外において、ライトトラップで幼生を採集し、音への反応を見る実験を行う。さらに、設置するサウンドトラップを作成し、野外調査に用いる。環境DNAを用いた、ホウキガニの分布調査も鹿児島、北海道など、各地の海底温泉地において実施したい
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