研究課題/領域番号 |
21K05644
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39060:生物資源保全学関連
|
研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
國府方 吾郎 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (40300686)
|
研究分担者 |
伊東 拓朗 東北大学, 学術資源研究公開センター, 助教 (10827132)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 荒野林 / 琉球列島 / 絶滅危惧植物 |
研究開始時の研究の概要 |
「荒野林」とは、酸性・貧栄養の土壌に成立する熱帯林の一型で、東南アジアを中心に存在する。 日本の琉球列島にも荒野林が点在するが、その殺伐とした景観から不毛の地と認識されやすい。しかし、実際にはその荒野林の特殊環境に適応進化した多様な植物種が生育している。一方、近年の開発によって多くの荒野林が消滅し、そこに生きる多くの植物種が絶滅の危機に瀕している。
本研究では、琉球列島の荒野林に産する植物種の保全を目的として以下を実施する。 ①標本・文献調査と現地調査による情報の比較に基づく、構成植物種の分布と生育状況の評価 ②形態・分子データを用いた分類実体解明に基づく、未知の希少植物種の探索
|
研究実績の概要 |
荒野林に特産し、琉球列島の固有植物と考えられていたケスナヅル(絶滅危惧II類)について、標本を用いた形態比較と DNA 解析を行ったところ、台湾と中国にもケスナヅルが分布することが確認された。また、日本と中国のケスナヅルが内陸の林に出現することに対し、台湾のケスナヅルは海岸砂浜に出現するといった生育環境の違いが確認された。更に、標本調査の結果からインドネシアにもケスナヅルが分布している可能性が高いことが示唆された。 ケスナヅルと海岸砂浜に産する別変種のスナヅルの間の雑種が琉球列島と台湾に存在していることと、この雑種の存在がケスナヅルとスナヅルの分類に混乱をもたらしていることが明らかとなった。また、その雑種は日台ともにケスナヅルを母方とすること、生育環境と形態が日台で異なることが示され、琉球列島で交雑した後で台湾に分布拡大した可能性が高いことが示唆された。 琉球列島の渡嘉敷島(慶良間諸島)において、新たな荒野林を発見し、そこにイトスナヅル(絶滅危惧IA類)、オオマツバシバ(絶滅危惧IB類)など荒野林特産種が自生してることが確認された。渡嘉敷島のイトスナヅルの集団は琉球列島で最大であり、オオマツバシバの集団も極めて良好な状態で残っていることがわかり、今後の保全対策を目的として関係機関と情報共有した。現在、この2種について渡嘉敷島の集団と他島の集団との系統関係を DNA 解析によって調べているところである。また、荒野林と非荒野林の両方に産するギーマ、アデク、ヤブニッケイを採集し、両林の間の遺伝的分化の程度を調べているところである。 前年度に確認された土地開発が危惧される荒野林について、その現状を該当する市町村立の関連機関に情報提供するとともに、沖縄島の残された荒野林の保全を強化する必要があることを提言した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度、特に上半期は、新型コロナウィルス拡散防止のため地方自治体による渡島制限のため、伊是名島など小島嶼部での現地調査およびサンプル収集ができなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度に発見された渡嘉敷島の荒野林を新たな対象地域に加えて本研究を進める。 2022年度に実施できなかった伊是名島の荒野林における現地調査およびサンプル収集を実施する。 2022年度に判明したケスナヅルの国外産との系統関係をDNA データを用いて解析する。そのサンプルは国外の共同研究者から郵送などで提供してもらう。 また、これまでケスナヅルと扱われてきた集団の雑種性の検証を行い、絶滅危惧種としてのケスナヅル、希少性の高い雑種の両方の保全対策を検討する。
|