研究課題/領域番号 |
21K05653
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39070:ランドスケープ科学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
渡辺 貴史 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (50435468)
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研究分担者 |
馬越 孝道 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (30232888)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 温泉熱 / 温泉地 / 多角的活用 / 運営スキーム / 適性評価 / 地熱発電施設 |
研究開始時の研究の概要 |
温泉地の温泉熱は,複数用途の組み合わせによる多角的な活用ができる可能性があるものの,浴用のみに使われていることが多い。 本研究は,「温泉熱の多角的な活用による持続可能な温泉地を創成するための計画とは?」との問いに対して,温泉熱の多角的な活用の実現と持続的な運営スキームの解明と,温泉熱の多角的な活用と波及効果の発揮からみた温泉地の評価の2つの目的を設定した。 最終的には,先の目的の成果から,温泉熱の多角的な活用による持続可能な温泉地を創成するための計画策定ガイドラインを開発する。
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研究実績の概要 |
目的Ⅰの温泉熱の多角的な活用の実現と持続的な運営スキームの解明に関しては,まずは,前年度に引き続き,統計解析にもとづき,温泉熱の代表的な用途である我が国の地熱発電施設の概要と立地特性を解明した。その結果,地熱発電施設の概要と立地特性は,発電規模(小規模(2,000kW未満)と中規模以上(2,000kW以上))によって,異なっていた。さらには,先の発電事業における温泉熱の活用の特性を把握するために,小規模(大分県九重町)と中規模以上(岩手県八幡平市)の地熱発電施設が立地する地域の温泉熱の活用の実態を,文献調査及び関係者に対するインタビュー等から明らかにした。大分県九重町では,複数箇所ある地熱発電施設のうち,49kWの地熱発電施設を対象にした。発電規模が小規模となったのは,系統接続に多大な費用の発生が想定されたからである。発電に活用されない温泉熱に関しては,熱交換システムを通じて,パプリカとトマトを生産する温室の加温及び除湿に用いられている。それに対して岩手県八幡平市では,23,500 kWの地熱発電施設(松川地熱発電所)を対象にした。同発電施設では,発電後の温泉熱を含む温水を,(株)八幡平温泉開発が購入していた。購入された温水は,浴用として,ホテル,別荘,保養所,医療福祉施設に供給されている。さらに,バジル等が生産されている温室には,冬期加温用として,供給されている。 目的Ⅱの温泉熱の多角的な活用と波及効果の発揮からみた温泉地の評価については,前年度に引き続き,全国の温泉地を対象に,温泉熱の活用量を推定に必要なデータ収集及び整備を行った。温泉熱に関わるデータは,産業技術総合研究所の地質調査総合センターが公開する日本温泉・鉱泉分布図及び一覧(第2版)から取得した。さらに温泉・鉱泉の立地特性の解明に向けては,温泉・鉱泉の立地地点と国土数値情報との間で,オーバーレイ解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,後述する通り交付申請書に記載された2つの研究の目的に対して,以下の通りデータ収集及び解析方法の検討し,それぞれの目的に関して成果の導出に必要なデータが取得され,充実化が図られている。そのため本研究の「研究の目的」の達成度は,以下に説明する内容から,「おおむね順調に進展している」と判断される。 (1)第一の目的である事例分析による温泉熱の多角的な活用の実現と持続的な運営スキームの解明については,前年度の成果(地熱発電施設の概要と立地特性は発電規模により異なる)を受けて,発電規模が異なる地熱発電施設が立地する地域における文献調査及びインタビューを通じて,発電規模によって温泉熱の活用範囲と用途が異なることを明らかにした。本成果は,発電規模に応じた温泉熱の運営スキームの解明に向けた基盤的成果といえる。 (2)第二の目的である温泉熱の多角的な活用と波及効果の発揮からみた温泉地の評価については,温泉熱の活用量を推定するために必要なデータの収集範囲を5道県から日本全国に拡大した。さらに本年度は,温泉熱の活用する地域の特性に係るデータを取得し解析できる状態に整備した。次年度は,研究レビューにより構築された評価手法と収集されたデータにもとづき,成果を導出する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
目的Ⅰの温泉熱の多角的な活用の実現と持続的な運営スキームの解明については,これまでの研究成果により特定された地熱発電施設を対象に,前年度に引き続き既存資料の収集と資料不足を補完する関係主体に対するインビューを行い,多角的な活用の実態と運営実態の概要の解明を継続する。それにくわえて,先のデータからは,活用と運営の実現に関係する出来事を抽出し時系列の整理を行う。現在,想定している調査対象としては,中規模以上(2,000kW以上)の発電規模の地熱発電施設が立地する地域として,岩手県八幡平市,秋田県湯沢市,大分県玖珠郡九重町を,小規模(2,000kW未満)が立地する地域として,熊本県阿蘇郡小国町,鹿児島県指宿市,大分県別府市を予定している。地熱発電施設の運営主体に対しては,温泉熱の多角的な活用と運営実態の解明を目的に設計された調査票による,サーベイリサーチを実施する。サーベイリサーチの結果からは,地熱発電施設における温泉熱の活用と運営実態の一般的な特性を明らかにする。そして最終的には,これらの結果にもとづき,温泉発電を基軸とした温泉熱の多角的な活用の実現及び持続的な運営スキームを考察する。 目的Ⅱの温泉熱の多角的な活用と波及効果の発揮からみた温泉地の評価については,昨年度に収集した温泉,気象,立地特性に関わるデータと国内・海外の先行研究のレビューにより構築される評価手法にもとづき,温泉・鉱泉の立地特性と熱の多角的な活用の評価を行う。 なお得られた成果に関しては,引き続き,関連学会誌(ランドスケープ研究,農村計画学会誌,都市計画論文集等)に投稿する。また,本課題の成果を温泉熱の多角的な活用に関心を持つ方々に対する普及啓発に向けては,引き続き,調査協力者への成果の報告やホームページへの掲載等を通じて,積極的に取り組む予定である。
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