研究課題
基盤研究(C)
近年の気候変動に伴い日本各地の山地流域で土石流の発生が頻発し、人命をはじめ多大な被害を生じている。効果的・効率的に土石流災害対策を推進するには、土石流危険流域を的確に抽出することが急務である。本研究では、機械学習を用いて土石流の発生ポテンシャルが高い山地流域を抽出する手法を構築する。機械学習では、沖積錐(土石流扇状地)を手がかりに、その後背の山地流域における地形・地質因子を教師データとして分析する。これにより土石流の発生に寄与する後背山地流域の地形・地質条件およびそれらの寄与の度合いを定量的に明らかにする。さらに災害履歴により検証することで、有効性の高い手法を確立する。
前年度に引き続き、地質の物性が大きく異なる2つの地域(新第三紀堆積岩類地域と古第三紀付加体地域)を対象にして、決定木分析や現地調査を通して、地質の違いによる沖積錐の形成プロセスを検討した。今年度は、前年度調査した水系に隣接する同一地質の水系に調査範囲を拡張した。決定木分析の結果、地質によらず沖積錐形成に寄与する地形因子は共通しているものの、地形因子の閾値はそれぞれの地質により異なることがわかった。さらに、現地調査結果から、沖積錐形成の地形因子の閾値の違いは、岩石強度が異なることに伴う、地形形成プロセスの違いや土砂移動プロセスの違いが影響していることが推測された。さらに、決定木分析により沖積錐が形成されうる(形成されない)流域を推定し、実際に土石流がどの程度の確率で発生したかを検証した。検証対象としたのは、2003年に土石流が頻発した北海道日高地方厚別川水系(新第三紀堆積岩類地域)である。具体的には、この水系に隣接する同一地質の水系の決定木分析の結果に基づき、沖積錐が形成されうる(形成されない)流域を推定し、2003年豪雨直後の空中写真や現地調査に基づく土石流痕跡などをもとに、実際の土石流の発生状況の検証を行った。その結果、沖積錐が形成されうると推定された流域では沖積錐が形成されないと推定された流域よりも土石流の発生率が全体的に高い傾向にあり、決定木分析により沖積錐が形成されうると推定された流域は実際に土石流が発生しやすい傾向にあることがわかった。
2: おおむね順調に進展している
決定木分析や現地調査から、地質の違いによる沖積錐形成に寄与する地形因子やその閾値を明らかにし、地質の違いによる沖積錐の形成プロセスを検討することができた。さらに、決定木分析により沖積錐が形成されうる(形成されない)流域を推定し、実際に土石流がどの程度の確率で発生したかを、2003年に土石流が頻発した北海道日高地方厚別川水系を対象にして、検証することができた。検証により、決定木分析により沖積錐が形成されうると推定された流域は実際に土石流が発生しやすい傾向にあることがわかった。以上により、河川の浸食や人工改変により沖積錐が見られない流域においても、潜在的な土石流発生ポテンシャルを評価できた。これらの結果については、学会発表で成果を公表した。
土石流の発生リスクの高い流域を決定木分析からさらに高い確度で抽出するためには、沖積錐が形成されないと推定されたにも関わらず、実際には土石流が発生した流域の要因を明らかにする必要がある。この検討を通して、決定木分析を用いた、後背山地流域の地形・地質条件に基づく土石流危険流域の抽出手法の確立を行う。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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