研究課題/領域番号 |
21K05691
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40010:森林科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
花岡 創 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所 林木育種センター, 主任研究員 等 (40598728)
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研究分担者 |
田邊 純 千葉大学, 教育学部, 助教 (40800636)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | アカエゾマツ / 根元曲がり / 幹曲がり / 材質 / 初期成長 / 応力波伝播速度 |
研究開始時の研究の概要 |
根元曲がりや幹曲がりは、積雪地域の林業においてしばしば材価に影響する深刻な問題の一つである。これらの曲がりについて、発生メカニズムや曲がりへの抵抗性に遺伝的な差があることが明らかとなってきた一方で、その差を生み出すメカニズムについては不明な部分が多い。本課題では、曲がりへの抵抗性に関して遺伝的な違いがわかっているクローン及びそれらの子供群(家系)を対象に、抵抗性発現に関する2つの仮説:1)力学的材質指標と2) 曲がりの回避あるいは回復につながる成長特性の影響を評価し、特定の形質から根元曲がりや幹曲がりへの抵抗性を予測するモデルを構築することを目的とする。
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研究実績の概要 |
2022年度には、前年度に調査した検定林と同じ家系が植栽された地域差検定林1箇所で調査を実施した。根本曲がりや幹曲がりへの抵抗性が高い、または低いことが既知の14家系、合計168個体を対象として、材質形質(ヤング率の指標となる応力波伝播速度と材密度の指標となるピロディン陥入量)を測定した。また、同検定林で実施された樹高の定期調査データをとりまとめ、初期成長性を評価した。これらの調査結果をまとめ、根元曲がりや幹曲がりへの抵抗性が高いことが既知の系統は、材質形質に優れる(ヤング率が高く、材密度が高い)か、あるいは、成長に優れるというどちらかの特徴を有する傾向があり、この傾向は前年度の調査結果と同様であった。これらの結果は、本課題申請時に立てた2つの仮説:材質に優れることで雪圧等による曲がりが生じにくい、あるいは、成長に優れることで早期に曲がりやすい状態を脱するとともに、曲がりを生じても回復しやすい、を支持する結果であった。 根本曲がりや幹曲がりへの抵抗性が高い、または低い家系の親クローンを用いた材質の詳細な検証については、その他の対象クローンを含め精英樹24クローン84個体から成長錘を用いてコアサンプルを採取した。前年度までに採取したクローンを含めると、供試クローン数は62クローンとなった。2022年度は、採取したコアサンプルの容積密度および年輪幅を、髄から5年輪おきに測定した。得られたデータより、容積密度の半径方向変動について、二次関数を仮定したときの非線形混合効果モデルによるパラメータ推定を行ない、容積密度の半径方向変動パターンのクローン間変異において、切片の項が平均容積密度と相関があること、および容積密度に及ぼす年輪幅の項の影響を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
検定林における調査とクローンを対象とした詳細な材質調査の両方について、当初の計画通りの進行状況であり、また、複数試験地の調査を通して、研究開始時に立てた仮説を支持する結果も得られ始めているなど、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度には、これまでに実施した2つの検定林での調査結果を合わせて統計解析を実施することで、根元曲がりや幹曲がりの抵抗性が異なる家系の間にある形質の差を明らかにする。また、道東地域にある検定林1ヶ所において、2023年に入ってからの降雪により、大幅な幹曲がりの根本原因となり得る冠雪害が多数発生した検定林が出た。本検定林で調査を進めることにより、冠雪害が生じやすい個体及び系統の特徴を明らかとすることを目指す。さらに、根元曲がりや幹曲がりへの抵抗性が高い、または低いクローンの詳細な材質形質の測定についても、容積密度やミクロフィブリル傾角の差についてとりまとめ、材質形質の差を生む要因について明らかにする。 上記の結果をとりまとめ、根元曲がりや幹曲がりへの抵抗性メカニズムについて考察するとともに、その能力を予測するモデルの構築を目指す。
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