研究課題/領域番号 |
21K05696
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40010:森林科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
関 伸一 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (50343801)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 琉球列島 / 鳥類 / 渡り / 沖縄島 / アカヒゲ / アカヒゲ種群 / 森林性鳥類 |
研究開始時の研究の概要 |
鳥類の渡り行動は生活史全般に関わる複雑なシステムである一方で、生存と繁殖に深く関係する形質でもあるために近縁集団間でさえ柔軟に進化する。沖縄島など琉球列島中部の森林に生息する固有鳥類では、周辺地域の渡りをする近縁集団と異なって留鳥として生息する集団が少なくない。琉球列島周辺地域に固有のアカヒゲ種群の場合、北部には渡りをする集団が多いが、沖縄島の集団のみが全く渡りをせず、鳥類としては狭い分布域の中で渡り行動が進化した例として知られる。このアカヒゲ種群をモデルケースとして、渡らない生活史の進化と遺伝的、形態的な分化が相乗的にもたらす集団の地域固有性について多面的に検証する。
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研究実績の概要 |
小型鳥類の渡らない生活史の進化が遺伝的・形態的分化と相乗的にもたらす地域固有性について多面的に検証するため、巣箱と自動記録装置を用いた繁殖経過の記録システムによる生活史形質の記録と、遺伝的集団構造解析のための汎用マイクロサテライトマーカーの使用について検討した。 アカヒゲ種群の生活史の地域変異についてデータを得るために作成した小型で巣箱に内蔵して後付けできる簡易自動記録装置70台を沖縄島に約3ヶ月間設置した結果、おおむね計画通りに稼働して巣箱における繁殖経過を連続的に記録することができた。21巣でアカヒゲ種群(ホントウアカヒゲ)による巣材運びなど繁殖行動が記録され、18巣で産卵を確認、11巣では造巣から巣立ちに至る経過がすべて記録されて、繁殖経過の自動記録装置を用いたシステムは生活史形質の記録に有効であることが示された。一方で、巣箱内の多湿な環境での運用では機器の誤作動が多く発生し、安定した記録を得る上で改良すべき点も明らかになった。アカヒゲ種群以外ではヤマガラ、シジュウカラの繁殖行動も複数の巣箱で記録され、多様な巣箱利用種への応用の可能性が示唆された。 また、アカヒゲ種群に適用可能なマイクロサテライトマーカーを前年度に引き続き鳥類の汎用マーカーから探索した。そのうち14遺伝子座について沖縄島からトカラ列島までの主要な4集団を含んだ試料でPCR反応による増幅が良好で多型性が認められ、対立遺伝子が明瞭に識別されることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
繁殖情報を収集するための巣箱や簡易自動記録システムはおおむね計画どおりに作動し、野外での調査データが得られ始めている。集団間の遺伝的分化を明らかにするための遺伝子マーカーの特定もおおむね計画どおりに進み、試料の分析を開始している。ただし、今年度も離島での野外調査は十分には行えなかったが、次年度以降に補完可能と判断したため、おおむね順調な進展とした。
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今後の研究の推進方策 |
巣箱および自動記録装置の野外運用により繁殖情報の収集を継続する。前年度までに特定した遺伝子マーカーを用いて、各地域で収集した試料を分析して遺伝的な集団構造を検討する。試料は野外での捕獲調査と既存標本から得たものを用いる。 これまでの新型コロナウイルスの感染拡大の影響により医療体制の脆弱な離島への出張をともなう野外調査は遅れ気味ではあるが、本課題は当初から自動記録装置を作成して使用するの計画であり、実施時期の再配分により研究期間内には計画していた内容は完了できると考えている。試料収集は本課題の目的とする成果を上げられる範囲で対象地域を一部見直す予定である。
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