研究課題/領域番号 |
21K05712
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40020:木質科学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中島 大輔 九州大学, 農学研究院, 特任助教 (70645978)
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研究分担者 |
吉村 友里 九州大学, 理学研究院, 助教 (10734262)
大貫 宏一郎 近畿大学, 産業理工学部, 教授 (50378668)
藤本 登留 九州大学, 農学研究院, 准教授 (80238617)
清水 邦義 九州大学, 農学研究院, 准教授 (20346836)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | スギ材 / 香り分子 / ガスクロマトグラフィー質量分析装計(GC-MS) / セスキテルペン / 事象関連電位 (ERP) / 後頭部陰性成分 / 視覚変化 / 気づき / 香り成分/香り分子 / ミスマッチ陰性電位 (MMN) / P300 (P3b) / 自律神経系 / スギ木質居住空間 / 脳波・事象関連電位 / 匂い分子 / 注意力・記憶力 / リスク行動 |
研究開始時の研究の概要 |
スギからの匂い分子そのものが、日常生活における注意・記憶を脳機能レベルで直接亢進させ、日常生活での高リスク行動を回避させる効果があることを明らかにする。まず、スギ材の香り分子濃度と記憶・注意力関連脳波の関係性を明らかにする。また、スギ材環境中における注意・記憶力の変化を標準化された心理テストバッテリーで測定する。さらに、スギ居住空間内でのリスク行動の変容を認知行動課題により明らかにする。上記により、スギ木質居住空間中の一定濃度の香り分子が、日常生活の注意・記憶を促進し、リスク行動を回避させることを、脳科学・生理心理学・天然物有機化学・木質科学・行動科学による学際的な研究組織体制で解明する。
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研究実績の概要 |
スギ内装材の香りが脳機能に及ぼす影響を明らかにするために、スギ無垢材と、木目調のビニールクロスを内装材とした生活可能な小屋内で、実験参加者に視覚弁別課題を行わせながら、初期視覚野の事象関連電位(ERP)第1陽性成分(P1)、随意的注意によって惹起される第3陽性成分(P3b)、頻度の低い視覚刺激に対する後頭部陰性成分を測定し、同時に両小屋内の香り揮発性成分をガスクロマトグラフィー質量分析計で測定した。その結果、揮発性セスキテルペン類の濃度は、スギ内装材で有意に高かった。P1、P3bのいずれも、内装材の香りの影響を受けなかったが、樹脂内装材と比較して,スギ材小屋では後頭部中部の280-300msの時間窓で,低頻度刺激に対して有意に大きな後頭部陰性が観察された。これらのことから、揮発性セスキテルペンの濃度が高まることで、視覚刺激の変化に対するヒトの「気づき」に対する脳反応が促進されることが示唆され、注意や記憶への脳機能亢進の呼び水となることを明らかにした。スギ内装材をさまざまな居住、教育、支援環境に活用することによる脳機能亢進の可能性について九州大学よりプレスリリースを行ない、インターネットメディアに広く掲載された。本研究結果は、Journal of Wood Science誌に2022年3月30日に掲載された。 さらに、内装材からの香り濃度がどの程度存在すれば脳機能の亢進が起こるかを明らかにするために、実験室内のスギ内装材面積を変えることで、セスキテルペン類濃度を0-599 μg/m3の範囲で変化させつつ、ヒトの脳機能に与える影響を比較検討した。その結果、セスキテルペン濃度が200 μg/3以上のとき、課題後安静時θ波振幅が有意に増大し脳内鎮静度が上昇することがわかり、セスキテルペン類の濃度に依存した脳機能変化をさらに明らかにしつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スギ材から揮発するセスキテルペン類による濃度依存的な心理生理機能亢進作用が明らかになりつつあり、特にセスキテルペン類が視覚的変化への気づきの脳反応を亢進することを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
セスキテルペン類の濃度変化による、心理的、行動的な評価を行う必要がある。また、各セスキテルペン成分濃度の影響を多変量解析や相関解析を行うことで、どのセスキテルペン類の影響により、脳の気づきの反応が強くなるかを明確にする必要がある。
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