研究課題/領域番号 |
21K05718
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40020:木質科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
楠本 倫久 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (80537168)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | β-フェランドレン / トドマツ / 紫外線 / 酸化 / 化学的防御 / 樹皮精油 / テルペン / 紫外線酸化 / トドマツ病原菌 |
研究開始時の研究の概要 |
針葉樹は、傷害を受けるとそこに樹脂(ヤニ)を滲出させ、傷口を塞ぐことで病原菌類の侵入を防いでいることが知られている。樹脂に含まれる精油成分は、この“かさぶた様”の防御に用いられるロジン成分を傷口へと運ぶ溶媒の役割を担っていると考えられているが、その詳細な役割は未解明である。 そこで本研究では、環境条件(熱、紫外線、酸素)による精油成分の酸化が病原菌類に対する抗菌性に与える影響を明らかにすることを目的とし、“針葉樹は自然環境を利用して効率的に防御物質を生成している”という仮説について、トドマツ樹皮から得られた精油とトドマツに罹患する病原菌類を用いたモデル実験から検証する。
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研究実績の概要 |
本研究では、針葉樹樹脂に広く含まれる特定の化学構造を有するモノテルペン炭化水素が、環境条件(熱、紫外線、酸素)によって素早く酸化物へと変化する現象に着目し、これらの酸化物が病原菌類に与える影響についてトドマツ樹皮を用いたモデル実験から明らかにする。全期間を通じた主たる研究内容は、1.精油成分の酸化反応に関わる環境条件の解明、2.精油成分の反応挙動の解明と酸化生成物の同定、3.トドマツ病原菌類に対する酸化精油の活性評価の3点であり、本年度は上記2について主に検討した。 初年度に抽出したβ-フェランドレンを豊富に含む精油と内部照射方式の紫外線酸化方法を用いて、精油成分の反応挙動の解明と酸化生成物の同定を目標に実験を行った。まず、①処理条件の違いによる精油含有成分の経時的変化について、UCリアクター(低温反応装置)による3段階の温度制御(-20、0、20℃)の下で3波長(325、365、405nm)のLEDランプを用いた紫外線処理実験を行った。その結果、紫外線波長と処理温度によって含有成分の挙動は大きく異なること、β-フェランドレンの主な酸化生成物であるクリプトンの含有量は20℃、405nmで4時間処理した際に最大値を示すことを明らかにした。なお、クリプトンの変換収率はその際に15%であった。続いて、②主な酸化生成物の定量・定性分析について、上記処理後のクリプトンを初めとした主な酸化生成物の同定およびGC-MS分析による定量分析を行った結果、クリプトン、ユーカマロール、クミンアルデヒド等がβ-フェランドレン由来の特徴的な酸化生成物であること、α-ピネンとβ-ピネン由来の生成物も一定量含まれることを明らかにした。これら酸化生成物の総含有量は精油の約10%であり、多くの成分に高い抗菌・防虫能が報告されていることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
試料調達、実験等については順調に進んでいる。なお、前年度に計画していたPy-GCを用いた酸化重合物の分析については、現状の実験方法では想定していた状態の精油重合物が生じないことが明確となったため実施を取りやめた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、研究内容3.トドマツ病原菌類に対する酸化精油の活性評価に関する内容を検討しており、①トドマツ病原菌類に対する活性試験、②環境条件による精油の酸化が化学的防御に果たす役割の考察の2点を実施予定である。 具体的には、本年度までに確立した紫外線処理方法で酸化させた精油を用いて、トドマツ病原菌3種に対する抗菌活性試験を行い、精油の成分変化が病原菌類に与える影響について明らかにする。その上で、環境条件の影響がトドマツの化学的防御に果たす役割についてこれまで得られた結果を総括する。
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