研究課題/領域番号 |
21K05727
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山口 明彦 九州大学, 農学研究院, 助教 (10332842)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | スフェロイド / 下垂体 / ゴナドトロピン / アロマターゼ / 幹細胞 / トラフグ / 3次元培養 / 生理活性物質 |
研究開始時の研究の概要 |
中・大型魚種(トラフグ・ニホンウナギ・クロマグロ・チョウザメ等)では初回成熟開始までの期間が長く早期成熟誘導の技術開発が望まれている。初回成熟時には生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)を代表とする様々な生理活性物質が下垂体でゴナドトロピン(GTH)の分泌を促進し卵成熟の誘導が起きる。多種の生理活性物質を生体投与し成熟・産卵効果を検出する方法は、多大な労力が必要で確率性も低い。本研究ではトラフグ下垂体細胞のスフェロイド(細胞塊)培養を利用したin vitroスクリーニングによりGTHの分泌を促進する生理活性物質の探索を行うことで、様々な魚種に応用可能なスクリーニング技術の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
魚類の下垂体から放出される生殖腺刺激ホルモン(GTH:ゴナドトロピン)には濾胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)があり、それぞれ性成熟をコントロールすることが知られている。哺乳動物培養細胞などを利用した重要資源魚種(クロマグロ、ニホンウナギ、トラフグ、サバ等)の組換えホルモンも作られ一部は成熟や産卵促進に利用されてはいるものの、高コストや低活性のため全ての魚種に適応できる汎用性のある技術はまだ開発されていない。GTH ホルモンはヘテロダイマーサブユニットから構成され、さらに糖鎖修飾がその活性に重要な役割を果たしている。組換えホルモンでは最適な修飾が行わないことが低活性の原因とされている。私達はこのような問題を克服するために魚類下垂体からスフェロイドを作製しその種固有のホルモンを in vitro で合成・分泌させるシステムの開発を目指している。2022年度は前年度から引き続きトラフグ下垂体スフェロイドの特徴について調査を行った。初回成熟を迎える2 齢(雌)の周年トラフグ血清を添加した培地でスフェロイド培養を行いEdU(5-エチニル-2'-デオキシウリジン)を用いて細胞増殖を検出する3D細胞増殖アッセイ法を確立した。その結果下垂体ホルモン細胞の増殖は初回成熟開始時期(9 月~12 月頃)に高い活性を示した。細胞増殖活性が一番高い時期は秋(10月)であり、一方産卵期(5月)での細胞増殖活性は低かった。これらの結果は下垂体ホルモン細胞の増殖は産卵半年前の秋に行われることを意味する。スフェロイド実験はin vivoの下垂体状況を再現できるため、様々な魚種への成熟・産卵促進物質の探索が期待できる。また魚類血清中にはスフェロイドを効率的に構築する細胞凝集促進因子が含まれており、プレート上ではROCK 阻害剤なしでスフェロイドの構築ができることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1) トラフグ下垂体スフェロイドの作製法の改良: 前年度までのROCK阻害剤を加えた攪拌培養法でスフェロイドを作製する方法から、直径500 umサイズのスフェロイドプレートを用いた方法へ変更することでハンドリングや解析が容易になった。またROCK阻害剤非存在下で、トラフグ血清を加えることで細胞凝集は促進した。一方代替血清では細胞増殖率は高く細胞凝集に遅延が見られた。プレート培養法では無血清培地で細胞数を増やした後に血清を加え凝縮させ均一なスフェロイドを作製する方法が最善であった。この方法で作製した均一なスフェロイドであれば 煩雑な操作なく共焦点レーザー顕微鏡で細胞増殖検出試薬(EdU)を用い 陽性細胞を漏らすことなく計測できた。 (2) スフェロイドアッセイを用いた下垂体ホルモン細胞増殖時期の特定: 初回成熟を迎えた年齢(2歳)の周年の各月のトラフグ血清存在下で 48 時間 EdU を含む培地でスフェロイドの培養を行い、ラベリングされた核を CY3-azide を用いた Click Chemistry で検出し増殖の指標とした。レーザー共焦点顕微鏡で撮影した3D画像を projection map することで2D 画像に落とし Image J を用いて解析後 EdU 陽性細胞核数をカウントしたところ、無血清培地は血清(2.5%)添加区と比べ 3-10 倍有意に高い値を示した。この結果はトラフグ血清中には細胞増殖阻害活性があることを示す。各月の血清の増殖活性を比較すると、細胞増殖活性が一番高い時期は秋(10月)であり産卵期(5月)では低かった。この結果から下垂体ホルモン細胞は産卵半年前の秋に最も増殖すると予想され、スフェロイドアッセイがin vivoの生理状態を再現したと考えられる。スフェロイドからのホルモンの分泌アッセイ系がまだ確立しておらず今後の課題となる。
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今後の研究の推進方策 |
(I):本研究課題の最終目標は(1)スフェロイド培養系の確立 (2) スフェロイド内での(i)ホルモン細胞増殖・(ii)ホルモン(GTH)合成・(iii)GTH分泌のアッセイ系の確立 (3) 生理活性化合物質ライブラリーを用いたGTHホルモン合成・分泌系の多検体スクリーニング法の開発の3段階からなる。今年度までに(1).スフェロイドの構築方法、(2)-(i, ii)は完了したので、2023年度は(2-iii)分泌活性測定のアッセイ系を確立するに着手する。トラフグLH受容体をCHO細胞に発現させデユアルルシフェラーゼレポータージーンアッセイでスフェロイドからのLH分泌活性を評価する方針である。 (II):現時点で下垂体スフェロイドの数ヵ月間の維持が可能になり、ホルモン細胞の長期間ストックに成功している。魚類での下垂体ホルモン産生細胞の幹細胞あるいは前駆細胞はいまだ明らかでない。もし同定することができればホルモン細胞を限定したより効率的なスフェロイドアッセイ系が確立できる。現在までにアロマターゼ発現細胞は下垂体全領域に散在しLH細胞の前駆細胞であることが確認され下垂体幹細胞の候補である(Yamaguchi et al., (2022) Cell Tissue Res.289, 259-287) 。今後FACSによりスフェロイドから酵素解離した分離細胞を分取しアロマターゼ発現細胞単独のスフェロイドを構築して細胞分化能(ホルモン産生)を解析する方針である。
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