研究課題/領域番号 |
21K05732
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
谷口 亮人 近畿大学, 農学部, 講師 (10548837)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 養殖漁場 / 有機物 / ブロモデオキシウリジン / 細菌鍵種 / 分解 |
研究開始時の研究の概要 |
養殖漁場の水質浄化は細菌が担っている。細菌が駆動する物質循環が乱れると水質が悪化するが、その鍵を握る細菌種は未だ分かっていない。先行研究の手法では、物質循環や水質浄化に直接関係している細菌種だけを解析できないからである。本研究では、「養殖漁場における有機物の分解・利用に直接寄与している細菌種を特定する」ことを目指す。活発に増殖している細菌のみを検出・解析することができるブロモデオキシウリジン法を用いる。ヒトの病気と同様に、環境の病気(水質悪化)の予防・治療を可能にする知見を得る。将来的な食料問題の解決や海洋環境・資源の保全に資するために、持続可能な養殖活動を推進するものとなる。
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研究実績の概要 |
養殖漁場における物質循環の鍵を握っている細菌種を特定することが、水質浄化を理解するために重要となる。本研究では、養殖漁場における有機物の分解・利用に直接寄与している細菌種を特定することを目的としている。令和4年度は、養殖漁場に定期調査データの解析に加えて、養殖漁場を特徴づける養殖魚の餌料に応答する細菌活性と16Sアンプリコン解析による種組成解析、さらに単離を試みた。その結果、1) 養殖漁場の有機物量は非養殖漁場よりもわずかにだけ多いこと、2) 餌餌料有機物に対して想像を超える速さで細菌が応答していること、3) 特定の細菌種が貢献していることを明らかにした。恒常的に養殖しているにもかかわらず有機物量がわずかにだけしか多くないことの理由として、予想を上回る速さで細菌が応答しているためであることを突き止めた。その鍵を握る細菌種としては、有機物分解前半ではBacteroidota門に属するFlavobacteriaceae科やCryomorphaceae科の細菌、後半ではPlanctomycetota門Pirellulaceae科の細菌を特定した。全体を通しては、Alphaproteobacteria綱Rhodobacteraceae科の細菌が優占していた。Bacteroidota門の細菌は難分解性有機物を分解する細菌として報告されることが多いが、易分解性有機物にも嗜好性のあるグループがいることを示唆している。また、負荷された有機物がすばやく分解されていることも興味深く、細菌のもつ応答力の高さを示唆する。前年度に引き続き、それに寄与する可能性のある鍵細菌種候補株の単離も行い、Flavobacteriaceae科やRhodobacteraceae科の細菌など合計52株を得ることができている。今後、得られた細菌株を用いた室内有機物分解実験によって、各細菌群の有機物分解能を推定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は、養殖漁場の定期調査のデータ解析を実施した結果、細菌の有機物分解に対するスピードの速さ等が推測された。その分解速度の速さとそれに伴う急激な細菌数の増加はこれまでに予想をはるかに上回るものであったため、大きな成果の一つと言える。当初は季節動態を解析する予定であったが、その目を見張る分解スピードが明らかとなったため、次年度の室内実験の条件設定を決定するためにも、室内有機物分解実験に比重を置いた。その内容の一部は日本水産学会春季大会にて報告した。なお、当初計画していた16Sアンプリコン解析と細菌鍵種の単離の試みに加えて、細菌活性をも測定することができたことは水質浄化能を推定する上で特筆すべきことである。以上のことから、現在前の達成度を「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度では、野外定期調査での蓄積している試料の季節変動解析を実施する。令和3年度および令和4年度に単離した細菌鍵種候補株の有機物分解能を室内実験で明らかにすることを大きな目標とする。各細菌鍵種候補株の有機物分解能を野外定期調査で検出される各細菌種にあてはめ、水質浄化能を推測することとする。植物プランクトンの影響も無視できないものであるが、本研究では養殖活動による有機物負荷に重点を置いた計画を考えている。これは、今年度の実験により予想をはるかに上回る餌由来有機物の分解速度ならびに細菌応答が確認されたためで、これは養殖漁場を特徴づけるものであると考えられるからで、研究計画当初には予想できなかったものである。
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