研究課題/領域番号 |
21K05747
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
澤田 英樹 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 連携研究員 (80629791)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 浮遊幼生 / 無脊椎動物 / 微地形 / ナマコ / ミトコンドリアDNA / 地形 / 着底 |
研究開始時の研究の概要 |
海産無脊椎動物は移動能力の乏しい底生種が多く、個体群の形成維持には発生初期の浮遊幼生期の移動が影響する。水産重要種を含む底生動物の分布は海底の地形的要因の影響を大きく受けるが、本研究では小さなスケールで形成される浮遊幼生の空間分布と地形的要因の関係に着目した。申請者が長期にわたり蓄積した時空間的な広域スケールのデータを基盤とし、野外調査によって空間分布と環境要因との関連を精査する。本研究は、水産重要種の移流拡散に関する数値モデルの基盤となり、天然採苗法の改良や生育場の造成管理と放流適地の選定等に進展をもたらすことが期待される。
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研究実績の概要 |
海産無脊椎動物は移動能力の乏しい底生種が多く、発生初期に浮遊幼生期をもつ種の場合はこの時期の空間的な移動が個体群の形成維持に大きく影響するが、細かいスケールでの個体密度の分布の違いを本研究課題で特定することを目指す。研究実施3年目として、本年度は浮遊幼生と藻場(養殖筏や港湾部構造物)および微細地形との関係について調べた。 これまでの調査結果をもとに京都府舞鶴湾の浮遊幼生密度の最盛期である5月中旬から6月上旬において、港湾部構造物により流れや波当たり(波高)環境の異なる数点において動物プランクトンを採集し、計数+ソーティングした。同一地点において調査を繰り返したところ、数十m程度の近距離にもかかわらず港湾部構造物による遮蔽度の高い地点においてナマコ類の浮遊幼生密度が高い傾向がみられた。遮蔽された区域がマナマコの産卵場所になっているために浮遊幼生密度が高くなったこともこの傾向に寄与しているかもしれないが、発生後のマナマコ浮遊幼生の浮遊期間の長さを考えると十分に幼生が拡散している可能性が高いことから、藻場も含めた海中構造物による微細地形の影響によって浮遊幼生が滞留している可能性があることを示唆していると思われる。微細地形の影響について、本年度も環境データとして舞鶴湾および周辺の海域の海岸線を対象に波浪の強い場所の定量的指標として吹走距離(fetch)を地理情報システム(GIS)と統計ソフトRを用いて計算した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2年前の所属変更の影響のため、計画していた調査対象とする環境のうち、今年度についても藻場を養殖筏や港湾部の微地形に変更することとした。 しかし、藻場(養殖筏や港湾構造物)または波浪が稚ナマコに与える影響の検討のため、稚ナマコの入ったケージ等を中期的に設置できる調査場所を選定・確保することができなかった。また、波浪が二枚貝幼生密度に与える影響についての調査実験についても、野外で定量性を担保しつつ安全に実施できる場所の選定が難しく、実施することができなかった。 一方で、微細地形が与える浮遊幼生密度への影響に関しては新しい調査地点を得、順調に調査を実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
波浪が二枚貝浮遊幼生に与える影響について、波高が高い環境ということは危険であることから、調査場所の選定に気を付けて試みる。もし調査できない場合、1年目の報告書で言及したが、波高が浮遊幼生密度に与える影響について、過去の浮遊幼生データを風速や水走距離の観点からの再解析することをもって代替とする。 波浪と藻場(養殖筏や港湾部構造物)が与える稚ナマコへの影響について、本年度も調査場所の選定努力を続ける。 微細地形と浮遊幼生密度の関係について、前年度の結果をもとに同地点においてデータ数を増やして検討する。1年目の報告書で言及したが、舞鶴湾の全ての海岸線に沿った沿岸部を対象とした地形と生物分布の調査を既に実施できているため、本データの解析に利用できる。前年度に引き続き、舞鶴湾の全ての海岸線に沿った地形と生物分布の結果とGISで計算された情報をまとめて総合的に解析を行う。上記調査で得られた浮遊幼生サンプルについては本年度も種同定作業を適宜進める。
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