研究課題/領域番号 |
21K05750
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
松浦 弘行 東海大学, 海洋学部, 准教授 (50459484)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 駿河湾 / 中深層 / カイアシ類 / 深層採集 / 低次生産 / 深層性カイアシ類 / 生活史 / 深海生態系 |
研究開始時の研究の概要 |
駿河湾は湾奥~湾央部の表層で沿岸表層水に影響された豊富な低次生産を示すが、その下部に深度1000 m の深層生態系が存在する特異的な海域である。しかし、表層の低次生産と深層への物質輸送について議論されたものは少なく、表層における変化が深層生態系の個体群や種多様性に及ぼす影響は未知である。そこで本研究は駿河湾の表層から中深層に分布する浮遊性カイアシ類各種の生活史、時空間的な変化といった生態学的な動態を明らかにすることで、表層と深層における低次生産の連動性を評価、検討する。
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研究実績の概要 |
令和4年度は、前年度に引き続き駿河湾の湾奥(水深約1000 m)における深度別動物プランクトン採集を行い、5月から翌年3月に毎月1回の観測をほぼ継続して実施できた(4,9,1月は荒天により中止)。閉鎖式多層曳きプランクトンネット(MTDネット)の曳網方法を改善し、深度0-200 mの表層採集(50 m間隔で5層)、深度300-700 mの深層採集(100 m間隔で5層)を行い、深度0-700 mから深度別に試料を採集できた。各採集の最浅部と最深部のネットに装着した深度計の記録から、概ね想定した深度で動物プランクトンを採集できていることが確認できた。 今年度は、駿河湾表層に優占するCalanus sinicusについて成長段階別に鉛直分布と季節変化を調べた。一次消費者のカラヌス科のC. sinicusは沿岸から陸棚域に多い種であり、春季ブルーム時に成長し、表層水温が高い夏季にはコぺポティッド5期(CV)が、水温の低い深度へ移動し、体内に油球を蓄積して休眠することが示唆されている。一方で海底水深が深い沖合外洋域にも本種は分布しており、中深層にCVが出現することが知られているが、200 m以深の個体数や油球の季節的な変化を扱った研究はほとんどないため、本種の鉛直分布と油球の量について5-11月の試料を分析した。その結果、表層には各成長段階が分布していたが、中深層には5月の時点ですでにCVが分布し、そのほとんどが油球を保有する個体であり、11月までCVは出現し続けた。これらのことから、駿河湾において本種のCVは、表層の水温が上昇する前に陸棚域よりも深い深度へと移動しており、広大な中深層を利用して、越夏していることが考えられた。現在、12月以降の試料についてC. sinicusの解析を継続しており、またその他の中深層性カイアシ類についても成長段階別の解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の実施状況を受けて変更した研究計画通りに、今年度は表層の生産性の高い湾奥において動物プランクトン試料を毎月採集することができた。また、湾奥よりも沿岸の影響が少なく、基礎生産量の変動が乏しいと思われる駿河湾の中央(水深約1600 m)においても比較対象のために調査を実施し、季節性を考慮して6月、12月、3月に同様の採集をすることができた。初年度に新型コロナウイルスの影響で継続的に調査できなかった分の遅れを取り戻してきている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は調査を実施できなかった5月以前に春季ブルームが発生しており、表層の基礎生産に対応した形でカイアシ類の個体群の変化を評価するにはデータが不十分であった。表層の基礎生産をモニタリングできるように調査と試料の解析は継続し、季節的な変化を評価するためにも、1年間以上のデータの蓄積を試みる。
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