研究課題/領域番号 |
21K05752
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
牧口 祐也 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (00584153)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 代替繁殖戦略 / サケ科魚類 / サクラマス / 精子 / 精子運動 / 体腔液 / 回避行動 / 精子競争 / 人工孵化 |
研究開始時の研究の概要 |
サクラマスの雄は河川から海へ降る降海型と、一生を河川で生息する残留型の2つのタイプが存在する。人工孵化では降海型の精子のみを使うのに対して、自然産卵では降海型および残留型の雄が雌の放卵と同時に放精を行うことがある。これまでに人工受精実験を行い、降海型の精子を使った場合より2つのタイプの精子を混ぜた場合で受精を行った方が、稚魚の肥満度が高くなった。この結果から「雌がタイプの異なる複数雄と産卵することで質の高い精子を選抜し、稚魚の性質が変化する」という仮説を立てた。
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研究実績の概要 |
北海道に生息するサクラマス(Oncorhynchus masou)は、残留型と降海型の二つの生活史を持つ。幼少期に多くの餌を摂取し、縄張りを獲得できる優位な個体は残留型となり、縄張り争いに敗れ、河川内で十分な餌を獲得できなかった劣位の個体は降海型となる。残留型は体が小さく、全身にパーマークがある一方、降海型は身体が大きく全身が銀白色で、産卵期には濃いピンク色の模様が現れる。繁殖期には、降海型が河川へ遡上し、同型でペアになり産卵する。その際、残留型の雄はスニーキング行動をとり、降海型のペアの産卵に割り込んで放精するが、タイミングの点で受精に不利である。 先行研究から、雌の体腔液が精子運動性能を向上させること、繁殖時に雌が残留型のにおいに誘引されることが明らかになっている。しかし、降海型と残留型の体腔液が誘引する精子数の違いは不明であった。本研究では、この点に着目し、精子計数チャンバー(DRM-600-Cell-VU)を用いた実験を行った。 2022年8月から9月にかけて、北海道斜里さけます孵化場において、サクラマス雌、降海型雄、残留型雄を各1尾ずつ、12グループ用意した。体腔液濃度0%、10%、70%の環境下で、トランズウェルプレートを用いて精子の誘引量を計測した。採取したサンプルはホルマリン溶液で希釈・固定し、倒立顕微鏡で撮影後、Pythonを用いて作成したソフトウェアで精子数を計数した。 実験の結果、体腔液濃度による降海型と残留型の精子誘引量に有意差は見られなかった。このことから、体腔液の化学的成分による精子誘導の可能性は低い可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、当初降海型と残留型の雄の精子数の違いに着目し、受精成功に関する研究を行っていた。しかし、先行研究から雌の体腔液が精子運動性能を向上させることや、繁殖時に雌が残留型のにおいに誘引される可能性が明らかになったため、体腔液濃度の違いによる精子誘引量の差異について新たな仮説を立て、実験を行った。その結果、体腔液濃度による降海型と残留型の精子誘引量に有意差は見られず、体腔液の化学的成分による精子誘導の可能性は低いことが示唆された。これらの新たな発見により、研究の方向性が明確になったため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、降海型と残留型の精子誘引量に体腔液濃度による有意差が見られないことが明らかになった。今後、残留型の精子速度や精子濃度の優位性については、測定方法の確立と自動化が課題である。現在の測定方法では、測定者による個体差が生じる可能性があるため、画像解析等を用いた自動化システムの構築を検討している。これにより、測定の精度と再現性を向上させ、残留型の生存戦略についてより深い理解を得ることを目指す。これらの研究を推進することで、サクラマスの繁殖戦略の全容解明に近づくことができると期待される。
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