研究課題/領域番号 |
21K05754
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
高井 則之 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (00350033)
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研究分担者 |
間野 伸宏 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (10339286)
柴崎 康宏 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (30750674)
桑江 朝比呂 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 港湾空港技術研究所, 領域長 (40359229)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 外来生物 / アメリカザリガニ / 食害 / 胃内容物 / エドワジエラ / コイヘルペス / DNA分析 / 安定同位体比 / 摂餌生態 / 安定同位体 / 食物網 / 印旛沼 |
研究開始時の研究の概要 |
特定外来生物のカミツキガメについては,従来,摂餌生態に関わる漁業被害が危惧されてきたが,被害の実態は未だ学術的に検証されていない.本研究では,本種の摂餌生態が内水面漁業に及ぼす影響を明らかにするため,(1) 本種による水産有用種への食害,(2) 水産有用種との食物源を巡る競争関係,及び (3) 本種によるコイヘルペスウィルス(KHV)の拡散という3つの項目から被害の実態を評価する.その上で,駆除事業の効能と今後の防除対策について検討する.
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研究実績の概要 |
カミツキガメの摂餌生態が内水面漁業に及ぼす影響を検討するため,千葉県印旛沼流域で2022年5-10月に捕獲されたカミツキガメの胃内容物分析,炭素・窒素安定同位体比分析,および消化管内の病原体検査を実施した.胃内容物のうち損壊が激しく形態観察が困難な魚類と両生類については,mtDNAの16S rRNA領域を対象に塩基配列を解析し種を同定した.病原体検査は,魚病として問題化しているEdwardsiella ictaluri(エドワジエラ・イクタルリ)とコイヘルペスウィルス(KHV)について実施した.E. ictaluriの検査は増菌培養法と特異的PCRを組み合わせて実施した.KHVの検査では,消化管内容物から全DNAを抽出して鋳型とし特異的PCRを実施した. 2022年に捕獲されたカミツキガメの胃内からは,アメリカザリガニが高い頻度で検出された.次いで出現頻度が高かったのは魚類であった.この結果は2020-2021年度の捕獲個体に関する前年度の結果と合致していた.カミツキガメとアメリカザリガニについて安定同位体比分析を実施したところ,全体的な傾向として両者は捕食-被捕食関係にあったことが示唆された.印旛沼流域の餌生物として最も重要なのはアメリカザリガニであると考えられる.病原体検査の結果,カミツキガメの消化管からはE. ictaluriが検出されたが,KHVは検出されなかった.KHVの宿主であるコイは,カミツキガメの消化管からは検出されていない.E. ictaluriは複数種の魚類を宿主とするためカミツキガメの消化管内に取り込まれやすいのに対し,コイのみを宿主とするKHVは取り込まれにくいと考えられる.今後,カミツキガメが魚病細菌E. ictaluriを広域的に拡散させている可能性について注意深く検討する必要がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胃内容物分析,炭素・窒素安定同位体比分析,及び消化管内容物の病原体検査を並行して進め,一定の成果を得ることができた.胃内容物分析の検体数は2020年度捕獲個体からの累計で267検体となり,近年の全体的な傾向が明確になった.胃内容物分析は次年度も継続し,カミツキガメの食性に関する推定結果の信頼性を高める予定である.安定同位体比分析では筋肉組織を優先して分析を進め,全体的な傾向を把握することができた.検体からは代謝回転率の速い肝臓も摘出し分析の準備処理を進めていたが,質量分析計の使用時間とキャリアーヘリウムガスの市場供給に制限があったため,肝臓の測定には至らなかった.次年度には肝臓の値を測定し,筋肉の値と比較する予定である. KHV検出試験は2021年と2022年の合計で209検体について実施したが,KHVは胃内容物と腸内容物のいずれからも検出されなかった.KHVはカミツキガメの消化管内にはほとんど存在していないものとみなし,次年度はKHVの検出試験を実施しない予定である.一方,エドワジエラ・イクタルリ感染症の原因菌として知られるE. ictaluriがカミツキガメの消化管から検出されたことから,次年度の病原体検査はE. ictaluriに絞って実施する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
胃内容物分析の検体数は2020年度捕獲個体からの累計で267検体となり,近年の全体的な傾向が明確になった.胃内容物分析は次年度も継続し,カミツキガメの食性に関する推定結果の信頼性を高める予定である.安定同位体比分析では筋肉組織を優先して分析を進め,全体的な傾向を把握することができた.次年度には肝臓の値を測定し,筋肉の値と比較する予定である.KHV検出試験は2021年と2022年の合計で209検体について実施したが,KHVは胃内容物と腸内容物のいずれからも検出されなかった.KHVはカミツキガメの消化管内にはほとんど存在していないものとみなし,次年度はKHVの検出試験を実施しない予定である.一方,エドワジエラ・イクタルリ感染症の原因菌として知られるE. ictaluriがカミツキガメの消化管から検出されたことから,次年度の病原体検査はE. ictaluriに絞って実施する予定である.
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