研究課題/領域番号 |
21K05759
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
五十嵐 弘道 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 付加価値情報創生部門(地球情報科学技術センター), グループリーダー (10578157)
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研究分担者 |
阿部 泰人 北海道大学, 水産科学研究院, 助教 (40627246)
齊藤 誠一 北海道大学, 北極域研究センター, 研究員 (70250503)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | カツオ / 隠れマルコフモデル / ハビタットモデル / 漁場推定 / AIS |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、カツオ漁船のAISデータを活用して操業状態を推定し漁場位置を推定する仕 組みを構築し、そのデータを即時的に導入するハビタットモデルを構築して漁場推定精度を 向上させることを目的とする。漁場形成環境の急激な変化に即応できる新しい仕組みを導入 したハビタットモデルを用いて高精度の漁場推定を実現することにより、気候変動に伴う漁 場形成機構の変化を定量的に把握するとともに、漁場探索を効率化して漁船の燃油消費を抑 え漁業経営の安定化につながる技術の実利用化を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、日本のカツオ漁船を対象として、AIS(Automatic Identification System:船舶自動識別装置)から得られる漁船の位置データを活用して操業状態を推定し漁場位置を推定する仕組みを構築し、そのデータを即時的に導入するハビタットモデルを構築して漁場推定精度を向上させることを目的としているが、実施2年目となるR4年度は、AISから得られる日本のカツオ漁船の位置データとデータ同化プロダクトとして得られる3次元の海洋環境データとの統合解析によりハビタットモデルを構築してカツオ漁場の推定を行い、その推定精度について評価を行った。 まず、昨年度に構築したAISから漁場位置を自動抽出するHMM(Hidden Markov model:隠れマルコフモデル)により得られた、日本のカツオ漁船(釣り・全海域)のうちの20隻分の2015-2017年の3年間における推定漁場位置データを作成した。さらにこのデータと気象研究所が作成した日本沿岸海洋再解析データセットMOVE/MRI.COM-JPNとの統合解析を行うことでカツオのハビタットモデルを開発し、得られた漁場推定結果と実際の漁場位置を比較することで精度検証を行った。得らえた結果として、モデル性能を示すAUC(Area Under Curve)の値が0.846を得ることができモデルの推定精度の有効性を示した。またカツオ分布の推定状況から、春季の「上りガツオ漁」から夏季に三陸沖で漁場が形成されたのち秋季に「戻りガツオ漁」として漁場域が南下していく様子が捉えられており、カツオ漁場変動の季節変化が良く捉えられていることに加えて、亜熱帯域の漁場形成も表現されていることが確認できた。1年間を通じたカツオ漁場形成を表現できるハビタットモデルが構築できたことで、リアルタイムデータによるモデル更新のベースとなる仕組みが整備できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定通り、AISによる日本のカツオ漁船の推定漁場位置データと日本沿岸海洋再解析データセットMOVE/MRI.COM-JPNとの統合解析を行うことでカツオのハビタットモデルを開発するとともに、良好な推定精度を確保することができた。1年間を通じたカツオ漁場形成の季節変化及び年々変動を表現できるハビタットモデルが構築できたことで、切れ目なく日々のカツオ漁場の推定を行う仕組みが整備できた。1年間トータルのモデル性能としてAUC=0.846が得られているが、季節ごとの推定精度のバラつき等などのハビタットモデルの「癖」についてはさらに検証が必要である。どのような状況でモデルの推定精度が悪くなるのかをまず把握し、さらにその精度を向上するためにリアルタイムデータの導入がどの程度の効果をもたらすのか、について今後さらに検証を行い、情報を整理することが必要となる。これを実施することで、最終目的である、リアルタイムデータの導入による効果の特定が可能となり、効果的なリアルタイムデータの投入についての手法の確立が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度中に、カツオ漁場の推定を行うためのハビタットモデル開発を完了することができた。1年間を通じたカツオ漁場形成の季節変化及び年々変動を表現できるハビタットモデルが構築できたことで、切れ目なく日々のカツオ漁場の推定を行うことができるため、リアルタイムデータによる逐次更新実験を切れ目なく実施することができる仕組みが整備できた。これを踏まえて本研究実施最終年度であるR5年度は、研究計画通り、作成したカツオのハビタットモデルをベースとして、対象海域において特異な海洋環境を示した顕著年に対して疑似リアルタイム漁場推定実験を実施する。顕著年以前の過去データに加えて、漁場推定の対象となる期間の直近の1カ月における漁場位置データを「疑似リアルタイムデータ」として追加しハビタットモデルを再構築することで、漁場推定精度がどの程度向上するかを検証する。当初予定通り、まずは顕著年以外の過去データを用いて作成したハビタットモデルの漁場推定結果に対する漁場位置の変化をハビタットモデルの感度として定量化することで気候変動に伴う影響を評価するとともに、逐次追加するデータの重みを自動的に調整する機能を導入することで効率的にハビタットモデルの推定精度を向上させる仕組みを整備する。これらすべての準備が整った段階で、リアルタイムデータによるモデル更新システムを適用することで疑似リアルタイム漁場推定実験を行い、ハビタットモデル更新機能の導入による漁場推定精度への効果を検証して、本研究で開発したシステムの実利用での有効性を評価する。
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