研究課題/領域番号 |
21K05789
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40040:水圏生命科学関連
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
楠本 邦子 (竹本邦子) 関西医科大学, 医学部, 准教授 (80281509)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | シジミ / 殻皮 / FeのK吸収端XAFS / EXAFS / 顕微ラマン分光法 / 鉄カテコール錯体 / 共鳴ラマン分光法 / 生体色素 / XAFS |
研究開始時の研究の概要 |
シジミの貝殻の色は一般に黒色であるが,稀に黄色の貝殻を持つシジミがいる。貝殻は外套膜上皮からの代謝物で形成され,貝殻の色と生育環境には相関があると推察される。本研究では,シジミの貝殻の色を決める因子を見つけ出し色が決定されるメカニズムを明らかにすることを目的とする。主に琵琶湖に生息するシジミの貝殻の最表層である殻皮に含まれる色素について,X線吸収微細構造解析で構造推定を行い,貝殻の色の由来を明らかにする。その結果からシジミの貝殻の色が決まるメカニズムを解明し,良質なシジミが成長できる底質環境を明らかにする。
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研究実績の概要 |
淡水域や汽水域に生息するシジミの殻の色は,一般に黒色であると認識されているが,黄色や赤茶色など多様である。貝殻は,外套膜上皮からの代謝物により形成されるので,殻の色と生育環境には強い相関があると推察される。しかし,シジミの殻の色の由来や生息場所との関連について科学的な調査や研究がなされたことはなかった。本研究では,シジミの殻の色を決める因子を見つけ出し,色が決定されるメカニズムを明らかにすることを目指している。 シジミの殻の色は,殻の表層にある殻皮と呼ばれる薄い有機膜の色で決まる。2021年度,黒色化の原因物質が殻皮に含まれる鉄-カテコール錯体であることを明らかにした。2022年度は,色と鉄-カテコール錯体の関連を明らかにするための実験を行った。 鉄-カテコール錯体には,モノ体,ビス体,トリス体が存在し,色がそれぞれ異なる。黒色を帯びた殻皮に含まれる鉄-カテコール錯体が何体かを明らかにするため,鉄のK吸収端の広域X線吸収微細構造(EXAFS)解析を行った。その結果,鉄-カテコール錯体はビス体とトリス体からなり,主にトリス体であることが分かった。ビス体とトリス体の可視光の吸収はそれぞれ576 nmと483 nm が最も強いことが知られている。殻皮の基材は黄色を,トリス体は紫色を帯びた色を呈することから,殻皮は可視光域の光を吸収し黒色を帯びた色を示すと考えられる。モノ体,ビス体,トリス体の形成は,pHや酸素濃度と深く関連することから,シジミの生息環境が殻皮の色を決めると考えられる。 異なる色の殻皮について顕微ラマン分光法を実施した。淡水域および汽水域に生息するシジミを対象とし,面内および断面方向について顕微ラマン分光法を実施した。電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)による鉄の定量分析も同時に実施した。 淡水産シジミの結果の一部は,論文と国内学会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り,琵琶湖産のシジミと汽水域で生息するシジミ(島根県産と鳥取県産)について,顕微ラマン分光法とEXASF解析を行い,鉄-カテコール錯体と色の関連を調べることができた。予定していた,殻皮の基材となるカテコール様物質を同定は実施できなかったが,基材の色の確認および,分析のための予備的実験は実施することができた。また,追加で,鉄の定量実験を実施することができたので,当初の目的をほぼ達成できたと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度実施した顕微ラマン分光法とEPMAによる実験結果の解析を完了する。シジミの殻の色と鉄-カテコール錯体の関連をまとめ,形成メカニズムを提案し,環境が整えば実証実験を行う。
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