研究課題/領域番号 |
21K05804
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41010:食料農業経済関連
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研究機関 | 日本女子大学 (2022) 愛知工業大学 (2021) |
研究代表者 |
小林 富雄 日本女子大学, 家政学部, 教授 (60592805)
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研究分担者 |
種市 豊 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (40640826)
木村 年晶 京都橘大学, 健康科学部, 助教C (40780359)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 食品ロス / 需給の質的調整 / フードバンク / 先住民族 / 物価高 / コロナ禍 / SDGs / 食の偏在 / 食品寄付 |
研究開始時の研究の概要 |
2019年に食品ロス削減推進法が成立し、国内流通の食品ロス削減の取り組みは本格化した。またCOVID-19対策による突発的な需給変動に対して、食品ロス削減を謳ったアウトレット販売や外食産業のテイクアウト対応、さらにはフードバンク利用などが進んだ。 本研究では、食品流通における需給調整の在り方について、食品ロスマネジメントにおける「質的調整」という側面から再検討する。その結果、これらの新しい食品流通における需給調整のあり方が定式化され、食品ロス削減だけでなく、経営効率化、自然災害へのレジリエンス(強靭性)構築、貧困問題解決などを実現する持続的な食品流通システムを記述する包括的な理論が示される。
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研究実績の概要 |
令和4年度の研究実績は、質的調整のうちコロナ禍による影響が大きかった第一領域(販路変更、販路開拓による調整)を令和5年度に実施することとし、第二領域(福祉チャネルの創造)に重点を置いて調査と理論化を進めた。特に令和2年度に実施した第二領域にかかわる国内アンケートの分析を進め、一定の知見を得たものの、最終的な結論に至るまではもうしばらく時間がかかる見通しである。 次に、ニュージーランドのフードバンクKIWI HarvestとThe Save Trustでは参与観察を行い、特に宗教(協会)と地域社会の違い、移民やマオリ等先住民族との格差の質的相違など、日本では取り上げられることの少ない課題について、質的調整の背後にある本質的なソーシャルキャピタル等の基盤の相違を体感したことは、何にも代えがたい研究上の知的経験となった。 マレーシアのフードバンクの調査においては、政府(Ministry of Domestic Trade and Cost of Living)へのアポイントに成功し、「国立」フードバンクの実態も調査することができた。国による設立は、コロナとは直接関係なかったようだが、結果的にコロナ禍において非常に重要な役割を果たしたことを確認できた。本研究において平時と有事の区分をすべきだが、今後の課題として需要な示唆を得た。その他のマレーシアフードバンクには、医療施設や薬の処方などを行うユニークな団体もみられ、ニュージーランド同様に、ムスリムやオラン・アスリ等先住民族との格差問題など大変有意義な知見が得られた。 また、第一領域としてオーストラリアで過剰食品を格安で売る、いわゆる「食品ロスショップ」が大盛況である現場を垣間見た。現地の顧客にもヒアリングし、日本以上に物価高が深刻なオーストラリアの取り組みは有効であるように感じた。今後の検証に繋げたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度、ようやく海外調査を実施できたが、コロナ禍の影響をすべて払拭できたとは言えず、特に第一領域と日本の寄付行動の定量分析と国際比較についてはいまだその遅れは取り戻せていない。そのほかにも、所属大学の異動、自宅の引っ越しなどによる生活基盤の確立など、公私にわたり様々な困難があったため研究の進捗に負の影響をもたらした。 一方で国際研究としては、2~3月にニュージーランドのワイカト大学Division of Managementへの短期留学を通じてOu Wang准教授との共同研究を進めることができた。また8月にはスウェーデンのLinnaeus UniversityからSoniya Billore准教授を受け入れ、共同研究の計画策定したことから、海外の第二領域の調査だけは当初の予定を取り戻すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
ようやくコロナ禍による飲食店の営業制限がなくなったため、今後は第一領域の食べ残しの持ち帰りについての研究に着手する。 一方で、物価高によるフードバンクの対応や食品ロスショップなどの質的調整の手法について新たな課題が出てきていることから、平時の需給調整の調査を優先しながらも、可能な範囲で有事の需給調整にも目を配り、調査・分析を進める計画である。 また、第二領域の食品寄付のイメージモチベーションに関する定量分析を進め、その結果を踏まえ、令和3年度に実施したアメリカ調査(N=730)との比較分析を行う。国際比較はWaikato大学と行う。国内調査(N=1146)の分析は後半にさしかかっており、両国とも国際比較をするため十分なサンプル数が得られている。可能な限り早急に分析、論文化を進めたい。 最後に、これまで得られたデータを整理するため、食品ロス削減に関する文献等による国際調査(アメリカ、イギリス、フランス、オーストラリア、ドイツ)も引き続き実施する。法整備、税制優遇、普及啓発、助成金、技術開発/スタートアップの観点から各国の多様性を確認したうえで、次年度は賞味期限と需給調整の関係性も国際的な調査を実施する。
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