研究課題/領域番号 |
21K05813
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41020:農業社会構造関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
大仲 克俊 岡山大学, 環境生命科学学域, 准教授 (80757378)
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研究分担者 |
納口 るり子 筑波大学, 生命環境系, 名誉教授 (00323246)
軍司 聖詞 福知山公立大学, 地域経営学部, 准教授 (40546751)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 一般企業の農業参入 / 食品企業 / 農業構造 / 産地 / 農地集積 / 地方自治体 / 企業誘致 / 農業団体 / 農地制度改正 / 企業の農地所有 / 食品小売業 / GAP / 規制改革会議 / 国家戦略特区 / 外国人労働力 / 国際労働力移動 / 企業の農業参入 / 雇用労働力 / 農地制度 |
研究開始時の研究の概要 |
企業の農業参入は増加し続けており,農地所有に対する農地制度改正の議論も行われている.企業の農業参入の制度開始から2010年代前半までの農業参入企業は地域農業構造の他の担い手と同じ様な存在に留まっていたが,農業経営の経験蓄積と規模拡大が進む中で,独自の農業生産体系の構築を目指す事例も見られ,限定された地域では農業参入企業による産地や地域農業構造の再編の可能性が示唆される.本研究では農業参入企業への実態調査を通じて,地域内で規模拡大と農地集積を進める農業参入企業の生産力構造を解明する.そして,我が国の地域農業構造における農業参入企業の役割を示し,農地制度・農業政策の在り方について検討する.
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研究実績の概要 |
令和4年度の実施した研究では、長野県・岐阜県・大分県・新潟県・愛知県・岡山県における農業参入企業への実態調査を行うことで、農業参入企業の農業生産力構造の解明と、産地及び地域農業構造再編の可能性について検証を行った。研究代表者である大仲は、長野県・大分県・愛知県における農業参入企業の調査を実施した。当該調査では、長野県の調査では和菓子などの菓子製造企業の農業参入について調査を実施しており、農業参入の目的や農業経営の形成過程の調査を行った。加えて、大分県を中心に、農業参入企業の参入地域の自治体に対する調査を行った。自治体への調査では、農業参入企業を通じて新たな農産物産地の形成が進展していること、そして農業参入企業の誘致を目的に、特定地域内における農地集積を通じた農地提供が自治体の政策として実施されていることが確認できた。また、その誘致策を通じて、生産が縮小した農産物の産地生産力の強化だけではなく、当該地域の生産物の加工工場の誘致に成功していた。加えて、新潟県・愛知県・岡山県の調査では、酒造会社の農業参入企業の経営に対する調査を行い、原料調達だけではなく、酒造好適米の生産を通じた製品の差別化や輸出といった新たな取組に繋げていることを確認した。当該調査結果は、令和5年度に発表予定である。 また、研究分担者の納口は、長野県・岐阜県の菓子製造業の農業参入企業の調査を実施しており、大仲と共に長野県の農業参入企業の大分県農場の調査を実施している。これらの研究結果は今後、日本農業経営学会等で報告する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和4年度までの研究の進捗状況であるが、当該年度に限定すれば研究活動は十分に進んだと言える。しかし、令和3年度のコロナ禍での研究遅れを取り戻すまでに至っていない。 しかし、令和4年度では、全国各地の農業参入地域での調査が軌道に乗ったと言える。当初予定していた地域だけではなく、当初予定していた地域ではない、大分県での多様な農業参入の進展の事実の確認と、当該地域における地方自治体の農業参入の推進施策の取組み、そして企業主体での新たな産地形成の確認は、本研究課題の研究目的の解明において貴重な知見をもたらすものであった。市町村段階において、農業参入企業が一定規模以上で特産農作物の生産を行うことで、産地の形成が促進されている実態を確認するとともに、当該事例は食品企業によるものであるが、食品企業が自社利用を目的に、自社の拠点と異なる地域で新たな産地形成に寄与する規模で農業経営の取組みは、企業発の産地形成及び農業生産構造の変化の可能性を示唆するものであると言える。 令和4年度の調査では、対面での調査及び現地訪問が可能になったのが大きく、特に農地集積を市町村段階の自治体で取組み、地域の合意形成を図ってきた事例の調査では、対面及び現地訪問での調査から得られる情報量はオンライン調査に比べて大きいものであった。現地の圃場の特質は農場が設置されている地域の地形などの自然条件や農業集落の社会条件、農地への自動車などによるアクセスの状況については、現地調査だからこそ得られる情報であった。今後は、予備調査や意見交換等をオンラインで実施し、オンラインで得た情報を踏まえた上での対面・現地訪問での調査を実施していくことになると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針では、令和4年度に実施した調査結果の取りまとめを行う予定である。特に食品業の農業参入企業の事例を蓄積しつつあり、当該業界の農業参入企業の農業経営の展開により、新たな産地形成の進展や農地集積を通じた地域農業構造の変化の解明は、今後の企業の農業参入による地域農業へのインパクトについて明らかにすることができる。 また、現在の研究でも、これらの農業参入企業の農業参入においては、過去の研究成果でも見られたように、市町村や県による誘致政策-特に地域内での農地集積等の調整による-の効果も大きいことが確認することができている。一般企業の農業参入における市町村や都道府県等の地方自治体の役割は既に指摘されてきたが、近年の地域農業の担い手の更なる急速な減少は、結果的に農地の実需者である農業参入企業の農業参入を容易とするだけではなく、参入時の農地集積や好条件の圃場確保といった、より良い条件での農業参入を可能とする可能性がある。 加えて、地域の農業者の減少は、JA等の産地の農産物を集積してきた農業団体にとっても大きな課題であり、その様な状況下において農業参入企業は産地維持において重要な役割を果たす存在となっている。また、農作物の販路を持つ食品業の農業参入企業にとっても地域農業の特徴や営農指導などの技術面の支援ができるJAの役割は大きく、JAを通じた地域農業者との連携も期待できる存在である。 上記の様に農業参入企業の農業参入の進展において、地域農業構造や産地へのインパクトを検証していく中で、自治体やJAの役割に再度注目しておく必要がある。そのた、令和5年度の調査では、農業参入企業と地域の関係についてより深掘り調査を行う予定である。 そして、これらの調査結果をまとめていき、学会発表や研究論文、学術書に研究成果をまとめていく予定である。
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