研究課題/領域番号 |
21K05833
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41030:地域環境工学および農村計画学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
平松 和昭 九州大学, 農学研究院, 学術特任教員 (10199094)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 統合流域管理 / 水理モデル / 水文モデル / 衛星気象データセット / 分布型モデル / 人工知能技術 / 機械学習技術 / 衛星リモートセンシング |
研究開始時の研究の概要 |
窒素・リンを対象に,東南アジアの農業流域圏における陸海域統合-流域圏管理モデルを構築する.4グループの研究組織を構成し,先ず陸域を対象に,面源負荷グループとGIS流域解析グループは連携してGIS援用-流域負荷流出モデルを構築する.両グループの成果を負荷源入力として,閉鎖性湖沼グループと閉鎖性海域グループは3次元水理学-生態系モデルを開発する.最後に,両モデルを統合した陸海域統合-流域圏管理モデルを用い,各種の負荷削減策の実施等の水質保全対策に対するシナリオ分析を行い,水質総量規制を含む流域圏水環境改善に向けた最適ロードマップを提言する.
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研究実績の概要 |
東南アジアの新興国・発展途上国では,経済発展に伴う都市化・混住化の進行で,農村地域や閉鎖性水域での有機汚濁が急速に拡がっている.日本が1970年代以降,経験してきた農業・農村地域での有機汚濁を,新興国・発展途上国では,近年,より深刻な水環境の悪化を伴って急速に経験しつつある.高い農業生産性を維持しつつ,陸域から排出される窒素・リンの負荷を削減するとともに,閉鎖性水域の水環境保全を図ることが喫緊の課題となっている. 流域圏における水環境は,陸域上流から下流の閉鎖性内湾に至る流域圏の物質フロー系によって形成されるため,流域圏の水環境保全のためには,陸域と海域を個別に考えるのでは無く,連続的に捉え,陸海域流域圏全体の水循環系と物質循環系を統合的に俯瞰する,いわゆる陸海域統合-流域圏水環境管理が極めて重要である. 本課題では,以上の問題意識を背景に,ベトナムの研究機関との強固なネットワークに基づき,4グループの研究組織を構成し,先ず陸域を対象に,面源負荷グループとGIS流域解析グループは連携してGIS援用-流域モデルの構築を進めた.両グループの成果を負荷源入力として,閉鎖性湖沼グループと閉鎖性海域グループは水理学-生態系モデルの開発を進めた.その際,東南アジア流域圏で不可避のデータ寡少性を補完するため,人工知能技術(AI)や機械学習技術,衛星リモートセンシング技術の援用を目指した. また,本課題では,東南アジア新興諸国のようなデータが寡少な地域でも適用可能で,将来的な地域開発や気候変動に対する流出量の長期的変化を予測可能な流出モデルの開発を目的に,分布型降雨流出モデルを既に開発している.このモデルを実流域に適用して,効率的かつ高精度で解析を行うためのモデル要件についても検討を行う必要がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題では,東南アジア新興諸国のようなデータが寡少な地域でも適用可能で,将来的な地域開発や気候変動に対する流出量の長期的変化を予測可能な流出モデルの開発を目的に,分布型降雨流出モデルを既に開発している.このモデルを実流域に適用する場合,効率的かつ高精度での降雨流出解析を行うためには,適切なメッシュサイズを選択する必要がある.そこで,7種類のメッシュサイズで本モデルを構築して,それぞれの降雨流出特性を地形特性などとの関連で検討した.まず,解析対象のCan Don流域の流域データならびに降雨流出モデルへの入力データを作成した.検討の結果,計算時間も短く,1年間の流量波形,ピーク流量,総流量も適切に表現可能である4500 mメッシュがCan Don流域では最適との結論となった. また,ベトナム流域圏での過栄養化水域におけるアオコの発生メカニズムの定量的解析に向けて,連続観測により得られたin vivo Chl-aの離散Wavelet解析を行った.時系列データのWavelet成分間の相互相関係数に注目することで,Chl-aの気象要因(水温,日射量,風速)に対する応答性を定量的に評価できた.気象データを用いたAIによるアオコの発生予測を考える際,高い応答性を示した約12時間周期と約24時間周期の変動成分に着目することで,精度向上が期待できることが示された. さらに,ベトナム流域圏での適用を視座に,有明海を対象に人工知能技術を援用した新たな赤潮発生予測モデルの開発を目指し,階層型ニューラルネットワークモデルの構造および学習データの選定方法について検証を行うことで最適なモデル開発を試みた.その結果,単一のモデルで,赤潮の発生日・終息日を藻類綱別,沿岸4県別に予測することは困難であったが,それぞれ個別のモデルを構築することで,精度の高い赤潮の事前発生予測が可能であることが示された.
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度に引き続き,ベトナムの研究機関との強固なネットワークに基づき,4グループの研究組織を構成し,データ寡少性の克服と陸海域統合-流域圏管理モデルの開発に関する共同研究を進める. 面源負荷グループでは,土地利用形態の違いによる面源排出負荷・自然浄化機能の定量化,バイオマス資源の再利用による面源負荷の低減策の検討を行う.農村地域では山林や農地などの面源負荷,畜産などの点源負荷の実態把握とその定量化が重要となる.これらはデータ寡少性の影響を強く受けるため定量化が難しい.そのため,原単位法や係数法を基本とした方法と併せて,衛星リモートセンシングと人工知能技術,機械学習技術を積極的に導入する. GIS広域解析グループでは,面源負荷グループが開発した排出負荷・自然浄化機能・バイオマス再利用サブモデルを活用し,GIS援用-分布型流域モデルを構築する.衛星リモセンで推定した土地利用に基づく,できる限り簡易な分布型モデルの開発を進める. 閉鎖性水域グループでは,九州北部やベトナム北部・南部の閉鎖性内湾や,同流域内の主要な閉鎖性湖沼・貯水池を対象に水理学-生態系モデルを構築し,GIS流域解析グループから受領した流入負荷量を入力として,数値シミュレーションを実施する.モデル開発に際しては,データ寡少性に対応するため,状態変数をできる限り減らした生態系モデルの開発を行うとともに,衛星リモートセンシングと人工知能技術,機械学習技術を積極的に導入する. 以上に基づき,陸海域を統合した流域圏管理モデルを構築し,各種の負荷削減の実施等の水質保全対策に対するシナリオ分析を行い,水質総量規制を含む,流域圏水環境の改善に向けた最適なロードマップを提言する.高い農業生産性を維持しつつ,流域圏を俯瞰した視座から水環境の保全を図ることが東南アジア流域圏では喫緊の課題となっており,本課題の学術的な意義は大きい.
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