研究課題/領域番号 |
21K05834
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41030:地域環境工学および農村計画学関連
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
弓削 こずえ 佐賀大学, 農学部, 教授 (70341287)
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研究分担者 |
阿南 光政 佐賀大学, 農学部, 准教授 (80782359)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 土壌水分 / 蒸発散 / CFD / 畑地灌漑 / 農業用水 / 水分ストレス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,作物の水ストレス制御に関する熟練農業者の経験知を解明し,作物の水分需要を精緻に補うオンデマンド型の灌漑手法を確立することを目的とする.まず,熟練農業者が灌漑のタイミングと量を決定する際に指標としている複雑な水消費環境を解明する手法を構築する.さらに,熟練農業者の水分供給の判断の一要因である作物の水ストレス状態を非破壊かつ連続で評価するため,作物の道管内で発生するキャビテーションを用いて水ストレス状態を可視化する.水消費環境および作物の水ストレス状態をデータセットとし,深層学習を用いて熟練農業者の灌漑スキルを再現し,オンデマンド型灌漑手法として確立する.
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研究実績の概要 |
前年度に引き続き,熟練耕作者が水分供給を行うタイミングを明らかにすることを目的として,九州内の複数のビニルハウス圃場において灌水量,気象要素,圃場内の放射収支および土壌水分状態の観測を行った.放射収支および気象要素の実測結果から,圃場内の複雑な放射環境の時間変動と空間分布を明らかにすることができた.また,従来の技術書で提案されている放射収支の予測精度の検証を行うことができた.この結果を境界条件として前年度に構築した土壌中の水分および熱輸送のシミュレーションモデルに入力し,土壌水分の動態予測を行った.土壌水分状態の計算値は実測値を概ね捉えていたが,生育終期には誤差が比較的大きくなっていた.これは,根の伸長や土壌構造の変化に伴って土壌水分特性値が変化していることが影響していると考えられた.また,作物の生育初期から終期にかけて実際の灌水量,土壌水分減少量および蒸発散量を定量化して比較した結果,熟練農業者は作物の生育期別ごとに灌水の量を精緻にコントロールしていることを明らかにすることができた.特に,生育初期段階では,根の活着を促すことなどを目的として,多くの栽培管理用水量が用いられており,既往の研究事例よりも多くの用水が用いられていることが明らかとなった.また,土壌水分変動の一要因となる風況を予測するためのモデルの構築に取り組んだ.風洞実験によってモデルの精度を検証するとともに,実際の作物圃場における適用性を確認するため,対象圃場内で三次元の風速の観測に着手した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,前年度に引き続いて複数の作物圃場において気象観測や土壌水分状態の実測を実施し,作物の生育期を通じて観測データを蓄積することができた.また,栽培期を通じた熟練農業者の水管理の特性を定量的に評価し,水ストレス制御の傾向を明らかにすることができた.さらに,前年度および今年度の観測結果を用いて,作物圃場の複雑な放射環境の特性を明らかにしたことで,前年度に構築した土壌水分動態予測モデルの境界条件を改善することができた. 土壌水分動態予測の精度に影響を及ぼす風況についても,予測モデルの構築はおおむね順調に進んでいる.今後は風洞内で予測モデルの検証を行うのみならず,実際の圃場に適用できるような精度の向上を目指している.
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降も対象圃場において,用水量,気象要素,放射収支および土壌水分状態の観測を継続してデータの蓄積を図る.作物圃場の複雑な放射環境を解明し,熟練農業者の水管理との関係解明に取り組む.また,2か年の調査結果より,作物の生育期別ごとに熟練農業者の水ストレス制御の傾向を明らかにすることができたが,今後は灌水イベント発生時の気象条件や土壌水分環境を分析し,水ストレスの制御実態をより精緻に解明することを目指す. また,土壌水分動態予測モデルの精度向上にも引き続き取り組む予定にしている.今後は,根の伸長や土壌構造の変化が保水性や透水性などの土壌水分特性に及ぼす影響を明らかにするため,土壌物理試験を実施する.この結果を土壌水分動態予測モデルに反映させて作物の生育期を通じた土壌水分状態の予測精度の向上に努める.また,土壌水分変動の一要因となる風況を予測するためのモデルを完成させることを目指し,対象圃場における風況の実測値の蓄積に努める.
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