研究課題/領域番号 |
21K05869
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41050:環境農学関連
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
我妻 忠雄 山形大学, 農学部, 客員教授 (70007079)
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研究分担者 |
且原 真木 岡山大学, 資源植物科学研究所, 教授 (00211847)
俵谷 圭太郎 山形大学, 農学部, 教授 (70179919)
田原 恒 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70445740)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | アポプラスト / 過酸化水素 / フェントン反応 / 高塩・乾燥環境耐性 / フェリハイドライト / 脱窒 / 一酸化二窒素ガス / 硝酸ラジカル / 過酸化水素高分泌性植物 / 樹木フェノリックスー鉄錯体 / 根圏フェントン反応 / 農地・環境の修復 / 根圏有機環境の改変 |
研究開始時の研究の概要 |
農地環境を取り巻く水・土壌系には、残留農薬や各種有害有機化学物質が存在し、食糧生産のネックである。我妻らは、根細胞壁に高濃度過酸化水素を有するキク科植物は、このH2O2と土壌溶液中Fe2+とのフェントン反応で発生するラジカル類で、強い温室効果メタン、Fe3+ 錯体投与で、石油系炭化水素や除草剤アトラジンを除去・分解できることを、世界で初めて見出した。Fe3+と錯形成可能なフェノール性物質を高濃度に含む未利用樹木資源の有効・付加価値化のため有効・安全な錯体新資材(A)を創製する。また、より優れた高分泌植物(B)を特定する。(A)(B)併用の新手法で農業環境を修復する。
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研究実績の概要 |
(1)アポプラストH2O2に特異的蛍光を発するBES-H2O2で染色する世界初の試みを行った。その結果、BES-H2O2は高感度でキュウリ<<<マリーゴルド<ベニバナであり、広範囲濃度に対応できることも明らかとなった。なお、キク科植物根アポプラストに吸着させた汚染有機物の代替物であるMethylene blueがFenton反応で消去され、アポプラストH2O2のFenton反応への有効性が証明された。(2)pH 8.3でH2O2濃度が約30%低下し、O2とH2Oとに分解されると考えられた。高濃度NaClには何らの影響も認められなかった。以上から、キク科植物は、根からH2O2を放出し、高塩・乾燥環境下でのO2不足に対抗するという新規な耐性機構が予想された。(3)Vial土壌にイナワラと新規に合成したFe資材を添加し、嫌気条件でIncubationを行った。鉄資材は、結晶性に乏しいFe3+-oxideで比表面積・反応性の大きい2-line ferrihydriteとXRD同定された。土壌溶液中の溶存Fe濃度は痕跡で鉄還元菌の窒素固定反応が関与せず、R区(Soil+イナワラ)でNO3-微減少・CO2無発生・NH4+著増のStage 1または2のHydrolysisまたはAcidogenesis段階にあったと判断された。一方、R+F区(Soil+イナワラ+Fe)ではNO3-著減・CO2発生著増・NH4+微増であり、Pseudo-Fenton反応によるものと考えられた。・OHはNO3-と反応しNO3ラジカルとなり、各種有機物にNitro基などとして取り込まれることが気体化学分野で多数報告されている。以上から、有機物と鉄資材の投入は、脱窒の阻止・温室効果ガスN2OやCH4の発生阻止・土壌有機態窒素の富化をもたらす可能性が推察された。これは新規な情報であり、今後の進展が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
植物根のアポプラスト中のH2O2濃度を半定量的に蛍光染色できる手法を、世界で初めて確立した。キク科植物根から大量のH2O2が放出され、これはキク科植物の進化・発生が高塩・乾燥環境であったことに対応しており、アルカリ性土壌環境で不足するO2やH2Oを補給するという新規な耐性機構を予測させた。比表面積・高反応性の非結晶性Fe3+酸化物フェリハイドライトを合成し、この鉄資材とイナワラをVial土壌に投与した。嫌気湛水初期の溶存Fe濃度が痕跡な時点では、イナワラのみの投与区に比較して、NO3-が著しく低く、CO2発生が著しく高く、鉄還元菌による窒素固定反応は関与せず、土壌微生物起源H2O2とフェリハイドライト表面構造Fe3+とのPseudo-Fenton反応の結果であると推定された。気体化学分野では、NO3-はFenton反応で生成される・OHによってNO3ラジカルに変化し、その後、Nitro基などの形で有機物に取り込まれることが多数報告されている。以上より、有機質とフェリハイドライトなどの鉄資材の投与によって、脱窒によるN2O発生や窒素肥料のロスを抑制し、土壌有機態窒素を富化できる可能性が新規に予想された。我々は以前に、嫌気湛水後期に大量に発生するCH4を・OHが消去することを明らかにしているので、今回の結果と併せ考えると、上記の同時投与は、温室効果ガスの発生抑制に大きく貢献できる可能性も新規に示すものであり、本研究は、計画以上に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
より大量のH2O2を放出するキク科植物を探索すること、湛水下に栽培されるイネ品種の中から、より大量のH2O2を放出する品種を見出すこと、より高性能のFe資材を創製すること、NO3-やNH4+と・OHとの反応、有機物中のN組成の変化に関する研究をさらに進展させることなどを、メンバー総力体制で目指したい。
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