研究課題/領域番号 |
21K05897
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42010:動物生産科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
櫛引 史郎 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, 再雇用職員 (30355218)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 泌乳牛 / 木材クラフトパルプ / 粗飼料 / ルーメンアシドーシス / 乳牛 / pHセンサー |
研究開始時の研究の概要 |
乳牛の一生で最も飼料変化が大きい時期である周産期および離乳移行期における粗飼料の一部代替として、高エネルギー・高繊維含量素材である木材クラフトパルプ(KP)の有効性を検証する。粗飼料は、乳牛用飼料の“要”であるが、成分や品質には季節や年による変動が生じやすく、嗜好性のばらつきも大きい。本研究は、KPの成分特性と品質に着目し、周産期における健全性と乳生産の両立、離乳移行期における安定的な発育の実証を目的とする。また、乳生産性や発育のみならずルーメンアシドーシスや胃液エンドトキシン(LPS)による炎症カスケードの発生リスクも明らかにする。
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研究実績の概要 |
【材料と方法】泌乳中後期乳牛を用いて動物試験を行った。ホルスタイン種経産牛8頭を用いた。分娩後に給与する混合飼料(TMR)におけるイタリアングラスサイレージの乾物比5%(17%→12%)、ならびにオーツヘイ乾草の乾物比5%(10%→5%)の合計10%をKPに置き換えて、2週間の飼養試験を実施した。KP混和TMRは毎日14:00に調製し、1日3回に分けて不断給餌した。試験開始時(0w)と終了時(3w)の13:00に血液と胃液を採取し、血漿中生化学成分と胃液中の揮発性脂肪酸(VFA)、アンモニア態窒素、およびエンドトキシン濃度について定量した。また、採取胃液を嫌気条件下で4時間の人工培養を行い、メタンおよび二酸化炭素の産生割合を調べた。 【結果】試験牛の乾物採食量(DMI)は、KP混和TMR給与期間において有意に増加し、日乳量も約5%増加した。胃液中の総VFA濃度は、KP混和による影響は認められなかったが、酢酸割合の低下ならびにプロピオン酸割合の増加が認められ、それぞれ統計的に有意な変化であった。人工培養によるメタン産生割合は、KP混和TMR給与による変化は認められなかったが、KP代替えTMRによってDMIが増加したためDMI当たりのメタン産生割合は減少した(p<0.05)。また、供試牛8頭中4頭は顕著なメタン産生割合の低下が認められた。メタン産生が低下した4頭と低下が認められない4頭では、細菌叢バランスの違いが認められた。 【結論】泌乳中高期における粗飼料の一部代替としてのKPの給与は、DMIと乳量の増加をもたらし、DMI当たりのメタン産生を抑制する可能性が示された。また、メタン産生低下への影響には個体差が認められ、細菌叢バランスの変化が関係していると推察された。これらの結果から、KPは粗飼料の代替え飼料として、乳牛のルーメン発酵と生産性の維持に有効であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
木材クラフトパルプ(KP)の粗飼料代替え試験について、周産期ならびに泌乳中後期における実証試験が計画通り実施できた。また、仮説とほぼ合致した成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
購入粗飼料の価格高騰もあり、安定した価格のKPへの注目度が増している。従って、購入粗飼料のKPへの一部代替え試験を長期にわたって実施する。同時に、メタン産生への影響も評価する。
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