研究課題/領域番号 |
21K05909
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42010:動物生産科学関連
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
江草 愛 日本獣医生命科学大学, 応用生命科学部, 准教授 (90521972)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | カルノシン / ノックアウトマウス / 運動 / 脂質代謝 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、骨格筋と大脳・嗅球に特異的に存在するカルノシンの生理的役割について、運動時のエネルギー代謝の面から明らかにすることを目的とする。脊椎動物の骨格筋に多く含まれるカルノシンは抗疲労効果や認知機能改善効果が報告されており、機能性表示食品にも登録されている。しかし、生体における役割については未だ不明な点が多い。そこで、カルノシンを高生産する骨格筋細胞、あるいはカルノシンを全く産生できない遺伝子欠損マウスを用いて、エネルギー物質であるATPを産生する補助的因子としてのカルノシンの働きを明らかにすることを目的とした。これにより、カルノシンが存在することで持久的な運動が可能になる理由を解明する。
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研究実績の概要 |
骨格筋中に存在するカルノシンの持久運動への影響を調べるため、筋管に分化させたC2C12細胞とカルノシン合成酵素遺伝子欠損マウスを用いて、ATP代謝や関連する遺伝子について調べた。 細胞については、通常培養状態でのカルノシンおよびその類縁体のアンセリンの産生量が非常に少ないため(3.2 nmol/g protein)であるため、合成酵素遺伝子を強制的に発現させて(2 mmol/g protein)生体存在する量に近い形のものを用いた。また、その対照には、合成酵素の活性部位であるExon10を欠損させたプラスミドを導入した。 細胞用電気刺激装置を用いて、パルス幅0.4 ms,周波数1.0 Hz,刺激強度10 Vで刺激を3時間与えたところ、運動直後の細胞中のATP量はカルノシン合成酵素を導入した強制発現細胞の方で、有意に高い結果となった。 カルノシン強制発現細胞でATP産生量が高くなった理由を調べるため、細胞中のNADとNADH量を測定したところ、ATP産生に関わるNADHの細胞内濃度が高くなっていた。また、A乳酸ならびにピルビン酸量の測定を行ったところ、乳酸量とピルビン酸共に強制発現細胞で1割程多くなっていた。一方、mRNAの発現量を測定したところ、脂質輸送体であるFABP3の発現量がカルノシン強制発現細胞で増加していた。これによりカルノシンによる脂質代謝への影響も強く示唆された。カルノシンとFABP3との関係については、現在検討を進めている。 以上の結果から、カルノシンが解糖系ならびに脂質の代謝促進を介して、ATP産生を増大させていると推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和4年度は、筋管細胞に分化させたC2C12細胞を使い、野生型の遺伝子を入れた場合とKO型の遺伝子を入れた場合で、電気刺激を与えた場合の酸化的リン酸化に関わるATPとADPについて測定キットを用いて比較することを計画していた。 こちらについては、概ね予定通りに進捗している。 また、カルノシン合成酵素遺伝子欠損マウスを用いた実験では、流水式強制遊泳による高強度運動負荷の後、速やかに摘出した筋肉を使って、酸化的リン酸化に関わる物質(ATPやADP、クレアチンとクレアチンリン酸)を測定すること、また、採材した筋肉からFABP3および脂質β酸化に関わる酵素群の変動を遺伝子レベルとタンパク質レベルで比較を行うことを目標としていた。 こちらは、目標とするマウス(自家繁殖)の数や週齢が揃わなかったこともあり、開始が少し遅れた。また、運動条件の設定も手間取り、予備試験に時間が取られた。従って、サンプリングまでは終了したものの、分析がまだ追い付いていない項目があるため、やや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は最終年度であるため、令和4年度でやり残したノックアウトマウスの筋肉を使った解析と、新たに立ち上げる低酸素状態でのC2C12細胞の運動負荷について実施する。 低酸素状態の評価は既に確立しており、また運動負荷実験も恒常的に実施しているため、問題ないと考えている。従って、計画に則って実施すれば、期初の目標は全て達成できると見込んでいる。
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