研究課題/領域番号 |
21K05927
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
|
研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
岡本 まり子 麻布大学, 獣医学部, 講師 (30415111)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | イヌ肥満細胞腫 / KIT非依存性 / 肥満細胞腫マウスモデル / 膜型エストロゲン受容体 / GPER / ナイアシン / ニコチン酸 / ニコチンアミド / ビタミンB3 / 抗腫瘍 / 細胞死誘導 / Gタンパク質結合受容体 |
研究開始時の研究の概要 |
既存の抗癌剤の多くは耐性や副作用が問題となる。これはヒトのみならずイヌの癌治療の場合も同様である。特に高齢犬の場合外科手術の負担などを考慮すると薬剤投与に頼らなければいけない場合も多くより耐性や副作用の少ない治療薬が求められる。研究代表者のこれまでの先行研究において、1日の摂取基準量よりもはるかに少ないビタミンB3の投与がイヌ腫瘍細胞の細胞死を誘導することが見出された。これまでにもビタミンB3の抗腫瘍効果は報告されていたがGPR109Aのみが着目されていた。本研究でGPR109AのみだけではなくGPERに着目することでビタミンB3の抗腫瘍作用機序の新たな一面を見出すことを目指す。
|
研究実績の概要 |
膜型エストロゲン受容体GPERの、KITを標的としない新たなイヌ肥満細胞腫の治療薬としての可能性を探るために、イヌ肥満細胞腫マウスモデルを作製し研究中である。肥満細胞腫細胞株をマウスに移植しマウスに肥満細胞腫を形成させた。そこにGPERアゴニストであるG-1あるいはニコチンアミドを連続投与し抗腫瘍効果について調べた。G-1を投与した群では腫瘍の大きさの縮小が認められたものの統計解析の結果有意差は得られなかった。一方、ニコチンアミドを投与した群においても腫瘍の大きさの減少が認められ、統計解析も結果でも有意差が認められた。G-1、ニコチンアミドともに早期の投与が抗腫瘍に必要であることが一連の結果より示唆された。現在も再現性の確認のため実験継続中である。 in vitroにおける肥満細胞腫への効果を調べるために、ナイアシン(ニコチン酸・ニコチンアミド)をマウスあるいはイヌの肥満細胞腫株に投与したところ、ニコチン酸、ニコチンアミドどちらも、マウス肥満細胞腫株およびイヌ肥満細胞腫株に対して細胞増殖の抑制を示した。効果についてはニコチンアミドに比べるとニコチン酸のほうがより低い濃度で細胞増殖抑制作用を示した。また、ニコチンアミド処理により肥満細胞腫株に細胞増殖抑制のみではなく、細胞死誘導を促進すること、細胞死の形態がアポトーシスであることを明らかにした。現在もさらに確認の実験を行っている。また、これらの効果がGPERを介して肥満細胞腫細胞に細胞死を誘導することを検討するために、ゲノム編集法によるGPER遺伝子欠損マウス肥満細胞腫細胞株を作製し、これらのクローンではGPER遺伝子に欠失およびアミノ酸の読み枠のフレームシフトが起きていることを確認した。現在樹立した欠失株の解析をを進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in vivoにおいてイヌ肥満細胞腫マウスモデルを用いたニコチン酸のイヌ肥満細胞腫治療薬としての可能性の検討については抗腫瘍効果が示唆する結果を得た。in vitroにおいてもニコチン酸のマウス肥満細胞腫株およびイヌ肥満細胞腫株に対する抗腫瘍効果を示唆する結果を得た。ニコチン酸が肥満細胞腫に対して細胞死誘導活性を発揮することを明らかにすることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
イヌ肥満細胞腫マウスモデルにおける実験結果より、早期のニコチンアミド投与が早期の投与が抗腫瘍に必要であることが示唆されたため、ニコチンアミド投与早期の段階での腫瘍内環境の免疫学的解析を行う予定である。また、肥満細胞腫株を使った解析において、ニコチンアミドによる細胞死誘導機序がG-1で活性化したGPERシグナルによるアポトーシス誘導機序と同一であるかどうか調べていく。
|