研究課題/領域番号 |
21K05944
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
佐藤 真伍 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (60708593)
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研究分担者 |
丸山 総一 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (30181829)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | Bartonella quintana / サル / 吸血性節足動物 / 細菌叢 / cgMLST / Puchtella属 / Coxiella属 / Rickettsia属 / core genome MLST |
研究開始時の研究の概要 |
Bartonella quintana(バルトネラ・クインターナ)は,コロモジラミによりヒト間で伝播される細菌で,塹壕熱の原因菌である。近年になると,ヒトだけでなく,Macaca属のサルもB. quintanaの病原巣であることが明らかになり,サルを感染源とした新たなバルトネラ症の発生が危惧される。本研究では,サルにおけるB. quintanaの生態解明に向けて,サル間でB. quintanaを伝播している吸血性節足動物とその細菌叢を解明するとともに,本菌の全ゲノム配列情報を活用した新たなゲノム解析手法を考案し,“サルとB. quintanaの共進化の歴史”を紐解いていく。
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研究実績の概要 |
Bartonella quintana(バルトネラ・クインターナ)は塹壕熱の起因菌で,シラミによって伝播される。人は本菌種の唯一の自然宿主であると考えられてきたが,我々の研究によって,Macaca属サルもB. quintanaの宿主であることが近年明らかとなった。しかしながら,Macaca属サルに本菌種を伝播している吸血性節足動物(ベクター)は未だ解明されていない。また,B. quintanaの遺伝的多様性の評価にはMulti-Locus Sequence Typing(MLST)法が専ら用いられているが,ゲノム解析能力の低さが課題の1つとなっているため,新たなゲノムタイピング法の開発が望まれている。 2023年度の本研究では,2022年度の研究成果を各種学術学会にて発表した。すなわち,野生ニホンザルから採取したサルジラミの細菌叢を次世代シーケンサーを駆使して解明したとともに,サルジラミがB. quintanaをニホンザルに伝播しているベクターである可能性を提唱した。また,B. quintanaと同属のBartonella henselae(猫ひっかき病の原因菌)を媒介しているネコノミについても細菌叢解析を実施し,得られた研究成果を発表した。 B. quintanaの全ゲノム配列に基づいたCore genome Multi-Locus Sequence Typing(cgMLST)法の開発を試みた。従来型のMLST法では,ニホンザル由来株は単一のSequence typeに型別され,遺伝的多様性を十分に評価できなかったものの,開発したcgMLST法ではニホンザル由来株はサルの捕獲地ごとに系統分類された。この成績から,各地域のニホンザル集団内においてB. quintanaは宿主のサルとともに進化している可能性が推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度には,ニホンザルにB. quintanaを媒介しているベクターはサルジラミである可能性を学術学会にて研究報告することができた。また,比較対象として用いたネコノミの細菌叢も解明し,学術学会にて研究報告した。 B. quintanaを系統分類する方法として,MLST法やMulti-Spacer Typing法, Pulsed-Field Gel Electrophoresis法などがこれまで考案されてきた。これらのうち,利便性の高さからMLST法がB. quintanaの遺伝的多様性の評価に最も頻繁に用いられてきた。本菌種のゲノムサイズは約1.58Mbで,約1,200個の遺伝子をコードしているが,MLST法に使用されるB. quintanaの遺伝子数は僅か9つで,その全塩基長は4,200bp程度である。このような特性から,本法はB. quintanaのゲノム性状を十分に反映したゲノムタイピング方法とは言い難い。実際にMLST法を用いてニホンザル由来株を解析すると,全ての株が単一のSequence typeに型別されるため,ニホンザル集団内における本菌の遺伝的多様性を正確に評価できていない可能性が考えられる。2023年度に考案したcgMLST法は,ニホンザルの生息地ごとにB. quintanaを系統分類することが可能であることから,考案したcgMLST法は極めて有用な新規のゲノムタイピング法であると思われる。 これらの実績から,本年度の研究はおおむね順調している進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に学会報告した研究成果を学術論文として発表することを目標とする。すなわち,サルジラミの細菌叢解析の結果から本吸血性節足動物がB. quintanaをニホンザルに媒介している可能性を論じることとする。また,Bartonella菌を媒介するその他の吸血性節足動物(コウモリノミ,タヌキナガノミ,シカシラミバエなど)についても同様に解析し,様々な吸血性節足動物の細菌叢を網羅的に解明することも目指す。 同年度に考案したB. quintanaのcgMLST法をさらにブラッシュアップし,その研究成果を学術学会ならびに学術雑誌にて発表することを目指す。すなわち,全国各地のニホンザルから分離されたB. quintana株の全ゲノム配列を次世代シーケンサーを用いてさらに解析し,考案したcgMLST法を用いてサルの生息地ごとに本菌種が系統分類されることを確認する。続いて,同一の配列データセットを用いてMLST法とcgMLST法の結果を比較することによって,cgMLST法が本菌種の新たなゲノムタイピング法として有用であることを立証する。
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