研究課題/領域番号 |
21K05945
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
堀 達也 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (80277665)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 犬精液 / 低温保存 / 精子細胞膜 / 精子先体膜 / ミトコンドリア膜電位 / 犬 / 凍結精液 / 人工授精 / 精液希釈液 / 精子運動性 / 妊娠 / 融解液 |
研究開始時の研究の概要 |
犬精子は耐凍性が低いという理由から、他の動物に比較して凍結精液作成技術が十分に確立されていない。現在、盲導犬の繁殖において海外から輸入した凍結精液を用いた硬性鏡を用いた経頸管子宮内人工授精が行われているが、外科的な子宮内人工授精に比較して受胎率がやや低い。すなわち、高い受胎率を得ることが可能な、国内外で対応可能な犬の凍結精液技術を確立するための発展的な研究、具体的には新しい凍結希釈液の開発、融解液の開発などの研究が必要とされている。これらの研究を行い、将来的に遺伝的に価値の高い犬の凍結精液バンクを設立し、系統的に優秀な精液を世界的レベルで保存・管理していきたいと考えている。
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研究実績の概要 |
以前、長期低温保存精液を用いた犬の人工授精において、8日以上保存した精液では十分な精子数と精子運動性を維持していたにも関わらず受胎しないことが明らかとなり、犬精子の受精能力の低下を引き起こす機能的な障害の1つとして考えられるDNA断片化率の検査を行ったが明らかな異常は認められなかった。そこで今回は、長期低温保存精液が受精能力の低下を引き起こしている原因を明らかにすることを目的とし、フローサイトメトリーを用いた精子の細胞膜、先体膜およびミトコンドリア膜電位についての解析を行った。 精液希釈液として卵黄トリス・フルクトース・クエン酸液を用い、長期低温保存を行った。精液採取実施日を0日目とし、3、6、9、12、15日目に精子運動性解析装置(SMAS)による精子活力の測定と、フローサイトメトリーを用いた精子の細胞膜、先体膜およびミトコンドリア膜電位の解析を行った。精子細胞膜の評価には、核酸染色であるSYBR-14/PI二重染色、先体膜の評価には、先体の糖鎖を認識して結合するPNA-FITC/PI二重染色、ミトコンドリア膜電位の評価には、膜電位に依存した蓄積を呈するJC-1染色を用いた。 その結果、精子活力、正常細胞膜、正常先体膜および高ミトコンドリア膜電位を有する精子の割合はいずれも時間経過とともに減少したが、受精能の喪失が示唆される低温保存6日目と9日目の間に受精能に影響がでると考えられる差は認められなかった。ただし、9日目以降では、正常細胞膜を有する精子の割合は精子活力と比べ低い傾向にあった。精子細胞膜の機能は、精子との受精に必要である。そのため、この損傷が低温保存における受胎率低下の原因の1つである可能性が示唆された。 以上の結果から、精子活力よりも細胞膜損傷のほうが低温保存精子の受精能を評価する指標になることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
凍結精液を非外科的に人工授精を行うための硬性鏡の購入が遅くなり、現在、実験を開始している。結果が出るまでに少し時間がかかるため、計画している実験に少し遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究として、犬凍結精液の融解液の開発に関する実験として、ミトコンドリア機能を改善するミオイノシトールと、精子の運動性を向上するためのカフェインを添加した時の凍結融解後の精液性状の変化についての研究を実施している。この結果をもとに、独自の融解液の作成を検討している。また、同時に犬凍結精液を用いた経頸管内子宮内人工授精を計画している。この時に用いる凍結精液は、通常のものと融解液を使用したものとで比較を行うこととし、融解液の使用が受胎率にどのように影響を与えるかどうかについて検討する。
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