研究課題/領域番号 |
21K05955
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
越野 裕子 (後藤裕子) 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任准教授 (80436518)
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研究分担者 |
大野 耕一 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任研究員 (90294660)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 猫伝染性腹膜炎ウイルス / 組織球 / 抗体依存性感染増強 / 猫腸コロナウイルス |
研究開始時の研究の概要 |
猫伝染性腹膜炎 (FIP) は、猫コロナウイルス (FCoV) の感染によって引き起こされる、猫において最も重要な致死性感染性疾患の一つである。しかしFCoVに感染した猫の多くはFIPを発症せず、無症候あるいは軽度消化器症状を呈するキャリアーとなる。キャリアー猫から分離されたFCoVであるFECVと、致死性のFIPを発症した猫から分離されるFCoVであるFIPVの決定的な違いは未だに明らかではない。 本申請では両者の違いについて検証を行うため、まずは自然感染症例からのウイルス分離を試み、そのウイルス性状をin vitroで明らかにするとともに、宿主の臨床情報との関連を検討するものとする。
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研究実績の概要 |
猫伝染性腹膜炎 (FIP) は、猫コロナウイルス (FCoV) の感染によって引き起こされる、猫において最も重要な致死性感染性疾患の一つである 。しかしFCoVに感染した猫の多くはFIPを発症せず、無症候あるいは軽度消化器症状を呈するキャリアーとなる。キャリアー猫から分離されたFCoVであるFECVと、致死性のFIPを発症した猫から分離されるFCoVであるFIPVの決定的な違いは未だに明らかではない。 本申請では両者の違いについて検証を行うため、まずは自然感染症例からのウイルス分離を試み、そのウイルス性状をin vitroで明らかにするとともに、宿主の臨床情報との関連を検討するものとする。 1. 猫コロナウイルス感染症例からの検体収集:東京大学附属動物医療センターに来院した症例より、病変部針吸引生検サンプルや胸腹水などを用いたウイルスRNAの検出、病原性と関連すると考えられているSタンパク質遺伝子の変異検出を行った。検査結果、病変部サンプルとともに血液サンプル、および臨床情報の収集を継続して いる。 2. 猫の腸組織および組織球由来細胞株に対する猫コロナウイルス感染実験:猫腸コロナウイルスは腸組織で、猫伝染性腹膜炎ウイルスはマクロファージで増殖すると考えられている。猫でこれらの細胞に由来する細胞株はほとんどないが、最近樹立された腸由来および組織球由来の細胞株を用い、fcwf-4細胞株に順化したFCoVウイルス株である79-1146の感染を試みている。猫組織球由来細胞株に関しては感染が成立することをリアルタイムRTーPCRで確認し、現在、免疫細胞化学による検出を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に確立したリアルタイムRTーPCRによるFCoV RNA検出およびSタンパク質遺伝子変異の検出系を用いて、引き続き臨床検体の収集を行っている。FIPが強く疑われるにも関わらずウイルスRNAが検出されない例が多く認められることが確認される結果となっている。また、serotype IIの猫コロナウイルスがFIPの原因となっていると考えられる例にも遭遇し、既報の結果を裏付けるものであった。引き続き多くの症例サンプルを収集することで新規の知見を得たいと考えている。 また、猫組織球由来細胞株に79-1146株を接種したところ、感染が成立することがRT-PCRにより確認された。fcwf-4と異なり、組織球由来細胞株は感染した場合にも大きな細胞障害性を示さなかった。細胞の特性によるものか、感染細胞率によるものか検討する必要があると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
79-1146株FCoVと細胞株を用いたin vitro感染実験: 猫の組織球由来細胞株に関して、接種ウイルス量・感染時間などの条件を変えて再検証するとともに、ウイルス感染時の細胞に引き起こされる変化に関して検討することを次年度の目標とする。感染細胞率に関しても免疫細胞科学を用いて検討する。猫の腸由来細胞株に関しても同様の研究を行うものとする。 臨床検体と細胞株を用いたin vitro感染実験: 上記の細胞株に対し、臨床検体を用いたFCoV感染実験に取り組む予定である。 臨床検体の収集: 前年度の検体収集より、東京大学附属動物医療センターに来院するFIP症例は非典型的な症状を示す場合が多いことが明らかとなった。胸腹水が貯留する典型的なFIP症例の方が多くの感染性ウイルス粒子を得られる可能性があるため、東京大学以外の施設にも協力を仰ぎ、さらに多くの検体を収集する予定である。
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