研究課題/領域番号 |
21K05958
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
井田 隆徳 宮崎大学, フロンティア科学総合研究センター, 准教授 (00381088)
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研究分担者 |
丸山 圭介 宮崎大学, 農学部, 准教授 (20612386)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 生理活性ペプチド / オーファンGPCR / モデル生物 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、申請者がモデル生物で発見した、また新たに発見する生理活性ペプチドを用い、ホ乳類をはじめ様々な動物種における新規生理活性ペプチドの発見と摂食行動・エネルギー代謝調節機構を解明することである。摂食行動は生物にとって生死に直結する現象である。そのため、ヒトや家畜の摂食行動・代謝調節をコントロールするのみならず、モデル生物で摂食を制御する分子機構が詳細に記述されることで、ヒトや家畜に感染する寄生虫や農作物を食い荒らす害虫を根絶するための薬品開発に寄与する可能性がある。
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研究実績の概要 |
摂食行動やエネルギー代謝は、巧妙な生理機構により調節されている。その調節機構に生理活性ペプチドは特に重要な役割を担っている。しかし、多数の生理活性ペプチドが未同定であることや、高等生物の生体構造が複雑であることから、未だその全貌は判明していない。我々は、シンプルな生体構造をもつモデル生物でCCHamide、dRYamide、trissin、LURY-1、CeTKなど10種類以上の新規生理活性ペプチドを発見するとともにその機能を明らかにしてきた。本研究では① モデル生物であるショウジョウバエや線虫において、新規生理活性ペプチドの探索・同定を進める。また生理活性ペプチドはモデル生物との相同性が高い。そのため、② ホ乳類をはじめ様々な動物種での新規生理活性ペプチドの同定に結びつけ、摂食行動やエネルギー代謝における役割を明確にする。以上より、ヒトや家畜の摂食および成長の制御につながる新しい生理機構を解明する。まず、昨年度見出した、受容体発現細胞にある条件を加え、新たな活性を検出する方法について、オーファン受容体GPR39は亜鉛イオン添加時のみ、ニワトリ脳のゲル濾過画分で活性が検出できることを発見した。現在、その活性画分から生理活性ペプチドを単離、精製している。また、線虫、ショウジョウバエホ乳類まで広く保存されている接着性GPCRについて、特に線虫をターゲットにして、その新規生理活性ペプチドを探索することを始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題において、オーファン受容体TKR-1に対し、線虫新規生理活性ペプチドCeTK-1、CeTK-2、CeTK-3を発見した。CeTKとその受容体であるTKR-1はその構造などから哺乳類サブスタンスPなどのタキキニン に類似する生理活性ペプチドと考えられた。CeTKの発現部位かなり限局した神経細胞に発現しており、それぞれの神経細胞の役割を参考にし、機能解析を行うとともに、ホ乳類への応用を展開中である。また、ホ乳類オーファン受容体であるGPR39はアッセイ培地に亜鉛イオンを添加した時のみ、細胞内カルシウム上昇活性を検出することができることを発見した。ペプチド抽出材料として、動物愛護の観点から、マウス、ラットの大量利用は控えるべきである。我々は、食鳥処理場にて大量に入手可能なニワトリの脳を用いて研究を進めている。現在、GPR39に対すてニワトリ脳のゲル濾過画分、分子量約3,000〜4,000から有望な活性を検出し、様々なクロマトグラフィーで展開し、GPR39に対する新規生理活性ペプチドの単離、同定を試みている。並行して、線虫、ショウジョウバエホ乳類まで広く保存されており、そのほとんどのものがオーファン受容体である接着性GPCRについて探索を始めた。生体をそのまま利用できる線虫をターゲットにして、LAT-1、LAT-2、FMI-1などの接着性GPCRに対する新規生理活性ペプチドの探索を始めた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、様々な種において新規生理活性ペプチドの発見、またオーファン受容体のdeorphanizeを目指していく。モデル生物を用いるとともに、ホ乳類においても、今回のGPR39のように亜鉛イオンを添加するなど、その受容体に必要な補助因子の探索も行う。発見した生理活性ペプチド、それに対する受容体の情報をもとに、摂食調節機構の解明を中心として応用研究も進めていく。このような方法を用い、我々がこれまで積み上げてきた生理活性ペプチドの抽出、精製、単離、同定技術を駆使し、脊椎動物、最終的にはホ乳類において、新規生理活性ペプチドの発見、応用につなげていきたい。また、この技術を一人でも多くの若手研究者に継承してくべく、共同研究や学会発表などを積極的に行う。最近、オーファン受容体に対するリガンド探索として、多くの研究者から依頼を受けている。その中には、生理活性ペプチドに限らず、脂肪酸やステロイド、血液中の様々な因子などによってオーファン受容体が活性化されないか検索依頼が増えている。我々の有しているオーファン受容体発現細胞を最大限利用して、受容体―リガンドの組み合わせを発見し、生理機能の解明、創薬への応用、科学の発展に貢献していきたい。
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