研究課題/領域番号 |
21K05971
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42030:動物生命科学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
山中 仁木 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 准教授 (30533921)
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研究分担者 |
池 郁生 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 特別嘱託研究員 (40183157)
増山 律子 立命館大学, 食マネジメント学部, 教授 (60297596)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ヘリコバクター属菌 / 大腸粘膜 / 肝臓炎症 / サイトカイン / 腸内細菌叢 / ハイブリドーマ / IgA / 抗体 / 肝臓 / 炎症性サイトカイン / 腸粘膜IgA / 腸粘膜恒常性 / ゲノム解析 |
研究開始時の研究の概要 |
粘膜IgAによる細菌の定着維持制御機構の詳細の多くは不明である。我々が分離した病原性の異なるヘリコバクター属菌を用いて、感染マウスにおける生体反応および腸内細菌叢構成について比較検討する。また、用いるヘリコバクター属菌の全ゲノム解析を行い、病原性や抗原性の相違について比較検討する。更に、感染マウスの腸粘膜リンパ球を用いてIgA産生ハイブリドーマを作製し、単クローンIgAを利用した認識抗原を解析し、腸内常在細菌制御機能の有無や誘導因子を明らかにする。これらの結果から「低病原性ヘリコバクター属菌により誘導される粘膜IgAは、常在細菌の定着維持制御に働く」との仮説を検証する。
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研究実績の概要 |
免疫正常(BALB/c)マウスにおいてH. japonicus (Hj)分離菌の持続感染により、大腸粘膜組織において弱い炎症像は認められるものの、サイトカイン発現等については非感染群と有意差は認められず、肝臓など消化管外組織での検出はされなかった。しかし、非感染群との比較で腸内細菌叢のαおよびβ多様性に有意差を認め、Hj感染により感染初期において粘液や抗菌ペプチド発現に変化を起こし、その後腸内細菌叢の変調(dysbiosis)を誘導する可能性が明らかとなった。 H. mastomyrinus (Hm)分離菌感染では、盲腸および結腸粘膜組織において炎症像を認め、肝臓においても菌が検出され炎症像を認めた。各種サイトカイン(炎症性、Th1、Th2、Treg)の発現については、結腸では非感染群と比較して有意に上昇していたが、盲腸粘膜においては非感染群と比較して抑制傾向にあった。このことから、Hmの粘膜組織深部への侵襲は盲腸あるいは結腸粘膜のいずれかの経路が考えられ、現在粘膜組織における粘液成分MUC2や各種抗菌ペプチド発現について解析を進めている。更に、粘膜組織の侵入経路として細胞間接着因子への影響も考えられ、併せて解析を進めている。Hm感染マウスの腸内細菌叢の多様性解析では非感染群との有意差は認められなかったことから、HjおよびHm感染により誘導されるIgAによる腸内細菌制御についても異なることが予想された。 そこで現在、非感染群のパイエル板および腸間膜リンパ節から分離下リンパ球を用いてハイブリドーマを作成し、複数のクローンを得ることができた。HjあるいはHm感染マウスのリンパ球とのハイブリドーマ作製も現在進めている。 HjおよびHm分離菌のゲノム解析について、ドラフトシークエンス解析は両分離菌共に終了し、現在アノテーション作業等について進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Hm分離菌のゲノム解析については、菌ゲノム調整のための培養条件設定に時間を要し、当初計画より遅れ、2023年度にドラフトシークエンス解析は終了し、現在アノテーション作業等詳細な解析を行っている。 また、IgAハイブリドーマ作製については、当初計画より半年以上後ろ倒しとずれ込み、2023年度では非感染マウスのハイブリドーマクローンを複数得ることに成功し、現在HjおよびHm感染マウスの消化管リンパ球を用いてハイブリドーマ作製について進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
Hmの粘膜組織侵襲のメカニズムの解明のため、Hm感染BALB/cマウスにおける盲腸および結腸粘膜の粘液および各種抗菌ペプチド発現解析、および感染による細胞間接着因子の発現解析を研究分担者と協力して進めている。 ドラフトシークエンス解析がひと通り終了したHjおよびHm分離菌の解析結果を用いて、HjとHmと異なる因子、特にHjとは異なりHmで認められた組織深部への侵襲関連因子について絞り込みを行う。 HjおよびHm感染マウスの消化管リンパ球とのIgA分泌ハイブリドーマの作製を進め、それらが産生するIgAの認識抗原について解析を進め、HjあるいはHm感染により誘導されるIgAの役割の相違について明らかにする。
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