研究課題/領域番号 |
21K05972
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42030:動物生命科学関連
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
与語 圭一郎 静岡大学, 農学部, 准教授 (60362844)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 精子 / 鞭毛 / マウス / タンパク質間相互作用 / 中心微小管 / ASHドメイン / がん / 繊毛 / 細胞増殖 |
研究開始時の研究の概要 |
肺がんは日本人において死亡数が最も多いがんである(2019年)。近年その原因遺伝子について解明が進んでいるが,まだ半数程度は原因がわかっていない。DLEC1は肺がんや食道がんで発現が低下している遺伝子として発見された遺伝子で,DLEC1をがん細胞に発現させるとその増殖が抑制されることから「がん抑制遺伝子」として働くことが推測されているがその増殖抑制メカニズムは不明である。本研究ではDLEC1がどのようにがん細胞の増殖を抑制するのかを調べるとともに,個体レベルでDLEC1の欠損が肺がんの発生にどのような影響を及ぼすのかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
DLEC1は、精子の鞭毛形成に必須な分子であり、タンパク質間相互作用に関わるASHドメインを10個持つことからアダプター分子として機能することが推測されている。昨年までの解析で本申請者はDLEC1に結合する分子としてENO4やHOATZを見出すとともにDLEC1側の結合ドメインを明らかにした。しかしながら、この結合の生理的な役割については不明のままである。そこで本年度は、下記の2項目について研究した。 1)ENO4の細胞内局在とDLEC1との結合が機能に与える影響 ENO4は2-ホスホグリセリン酸をホスホエノールピルビン酸に変換するEnolaseファミリーに属する分子であるが活性の有無については未解明であった。そこで293細胞で発現させたENO4の活性を比色分析法で調べたところENO1とは異なり、活性が検出されなかった。また、DLEC1と共発現させても、その活性に変化はなかった。次にENO4の精子における細胞内局在を調べるため、精子の免疫染色を行った。その結果、鞭毛に局在することがわかった。以上よりENO4は鞭毛において構造タンパク質として機能している可能性が考えられた。 2)DLEC1の内在性結合タンパク質同定に向けた予備研究並びに変異体による機能レスキュー実験 DLEC1の内在性分子同定に向け、近位依存性ビオチン化酵素(AirID)をDLEC1に連結したトランスジェニックマウスの作成を計画している。本年は細胞レベルで予備検討を行い、結合分子が効率よくビオチン化される条件を明らかにした。また、DLEC1-KOマウスにHOATZやENO4と結合しないDLEC1変異体を発現させ、鞭毛形成異常がレスキューできるのかどうかを調べるため、トランスジェニックマウスの作成に取りかかった。解析に必要な4つのラインのうち、現在まで2系統のマウスの作成を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に、DLEC1の鞭毛形成における分子機能に焦点を当てた研究にシフトし、新規相互作用分子の同定や結合部位の同定を行った。本年度は、その成果に基づいて結合分子の機能解析や細胞内局在の解析などを行った。細胞内局在についての解析は抗体の良し悪しに結果が左右される。市販の抗体は解析に使用できるものではなかったが、自作した抗体によって解析が可能となった。また、これまで不明であったENO4の活性についても明らかにすることができ、ENO4のKOもDLEC1と同様に鞭毛形成不全となるが、それは酵素活性の消失が原因でないことを示唆するものであり、興味深い知見が得られたものと考えている。 DLEC1の変異体によるレスキュー実験を行うにあたり、今回野生型1系統、変異体3系統合計4系統のトランスジェニックマウスの作出を試みた。今のところ残念ながら2系統しか作出できていないが、マウスを作出し、系統を樹立する実験は時間がかかってしまうのは致し方ないところである。今後、実験を加速したい。一方、近位依存性ビオチン化酵素AirIDを融合したDLEC1を用いた実験では、Air IDを融合させる位置やビオチン化の条件が重要であることを見出した。これらの知見は、今後DLEC1ーAirIDトランスジェニックマウスによる内在性DLEC1結合分子の同定に大変役立つものであり、予備研究ながらも重要なデータを収集することができたと考えている。 以上より、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、残る2系統のトランスジェニックマウスを作成する。また、作成したトランスジェニックマウスの精子について、形態学的に解析するほか、産生精子数、精子運動能、受精能について調べる。また交配実験により、生殖能力を明らかにする。また、DLEC1変異体においては実際に結合分子と相互作用していないことも確認する。これらの解析によりDLEC1とENO4あるいはHOATZとの結合が精子の鞭毛形成・精子分化にどのような役割を果たすのか明らかにする。 また、さらなるDLEC1の相互作用分子の同定に向け、DLEC 1-AirIDトランスジェニックマウスの作出に取り掛かる。無事作成できたら、精子内でビオチン化している分子をストレプトアビジンビーズで回収後、質量分析により同定する。
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