研究実績の概要 |
家畜において体外胚作製技術や移植技術等は改善されてきているが,胚移植後の妊娠率・受胎率は50%以下と未だ低い.本研究の目的は,『ブタにおける胚着床・妊娠維持因子を明らかにし,その知見をもとに高い妊娠率・多くの出産数に寄与する繁殖技術の開発に応用する』である. 本年度は,ブタより取扱が簡便でゲノム編集評価が容易であるマウスを用いて,胚着床関連遺伝子のゲノム編集マウスの作製を試みた.胚着床関連遺伝子として知られている遺伝子Xをゲノム編集する目的遺伝子として,マウス受精卵でのゲノム編集および個体の作製を行った.はじめに遺伝子Xの複数のエクソンを挟むように2種類のgRNAを設計した.次にgRNAとCas9タンパク質との複合体を作製し,体外受精によって作出したマウス前核期胚にエレクトロポレーション(ポアリングパルス:電圧; 40 V, パルス長; 3.5 msec, パルス数; 4, 間隔; 50 msec, 極性; + , トランスファーパルス: 電圧; 7 V, パルス長; 50 msec, パルス数; 5,間隔; 50 msec, 極性; +/-)を行うことでgRNA+Cas9複合体を導入した.2細胞期まで培養後,24個の胚を1匹の偽妊娠雌の卵管に胚移植し,個体の作出を行った.その結果,4匹の産子が得られ,そのうちゲノム編集が確認された個体は1匹であった.得られたゲノム編集個体を野生型マウスと掛け合わせ,ゲノム編集が次世代へと遺伝するか検討している.以上のことから,ゲノム編集技術を用いて胚着床関連因子遺伝子を標的とした遺伝子欠損マウスを作製することに成功した.
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